10W-30から5W-30へ。進化したホンダ純正エンジンオイル「ウルトラG1」、インド市場では早くも!?
- 2021/02/25
- MotorFan編集部 北 秀昭
ホンダは環境性能と高品質を追求した二輪用純正4サイクルエンジンオイル「ULTRAシリーズ」のパッケージデザインを、12年ぶりに変更して2021年2月1日(月)より発売開始。また、最新の技術力を結集してスタンダード版「ULTRA G1」を低粘度化し、ベースオイルを部分化学合成油に変更することで、さらなる高品質化を実現。ホンダの開発陣や関係者に、進化した「ULTRA G1」を始め、ULTRAシリーズの開発秘話を聞いた。
REPORT●北秀昭(KITA Hideaki)
PHOTO●渡辺昌彦(WATANABE Masahiko)
取材協力●本田技研工業株式会社
ホンダ純正エンジンオイルが進化!低粘度化&部分化学合成油を採用|ULTRA G1
ホンダは環境性能と高品質を追求したHonda二輪車用純正エンジンオイルとして人気の4サイクルエンジンオイル「ULTRAシリーズ(...
70年の歴史を持つホンダのULTRAシリーズは、ココが変わった!
ホンダのウイングマークをあしらった、ホンダ純正の二輪用純正4サイクルエンジンオイル「ULTRAシリーズ」。約70年の歴史を持つULTRAシリーズは、バイクパーツショップ等のオイルコーナーにおいて、かなりの確率でお目にかかる、お馴染みのアイテムだ。
ULTRAシリーズの歴史は古く、1958年(昭和33年)発売の初代スーパーカブ・C100の取り扱い説明書には、推奨エンジンオイルは「ULTRAシリーズ」と明記。つまり1950年代には、すでにULTRAというパッケージで販売されていたわけだ。
大まかな系譜としては、1960年に「ULTRA S」というマルチグレードが登場。1970年代には10W-30のグレードが追加。2003年にはスタンダードバージョンのULTRA G1が誕生するなど、時代やニーズに合わせてそのつど進化してきた。
今回、ULTRAシリーズはパッケージデザインを一新。“目を引く”外観に変更されている。具体的には、認知度の高い「G1」や「G2」などの商品名に加え、「STANDARD(スタンダード)」「SPORTS(スポーツ)」「RACING(レーシング)」などの対象カテゴリーを追記することで、『どのエンジンオイルを選べばいいの?』という迷いを払拭しているのがポイントだ。
また、スタンダードオイルの「ULTRA G1」は、ベースオイルを従来の鉱物油から部分化学合成油へ変更。最新の技術力を用いて、エンジン内部で発生する摩擦や摩擦熱などへの高い耐久性、エンジン回転中におけるオイルの安定性や静粛性、清浄性をより向上。
中身が変わったULTRA G1は、粘度を「10W-30」から「5W-30」に低粘度化しているのも見逃せないところ。粘度の変更で、燃費を向上させすとともに、気温が低い環境下でもスムーズなエンジン始動を実現している。
「12年間、価格据え置きで、よく頑張った」とユーザーからも絶賛された旧ULTRA G1。新しくなったULTRA G1は、鉱物油から部分化学合成油に進化しながらも、他社に負けないリーズナブルな価格設定を実現。ホンダは新パッケージになったNEW ULTRAシリーズとともに、これまで通り、“エンジンオイル売り場の顔”を目指しいく。価格は下記を参照。
10W-30から5W-30、鉱物油から部分化学合成油へと進化
リニューアルに着手したのは、他のグレードではなく、なぜG1だったのか? ホンダの小排気量車に採用された、エンジンの性能が上がったから? その答えはエンジンの性能が上がったからではなく、低炭素社会の実現を目標にしているから。
ホンダは既存のエンジンオイル開発において、低粘度化による環境燃費性能の強化を図ってきたという歴史がある。今回、G1はこれまでの10W-30から5W-30に低粘度化し、エンジンの始動性、レスポンス、燃費の向上を実現。
加えてエンジン保護性能、静粛性において10W-30同等の性能を発揮でき、他社に負けない価格で提供できる見通しがたった。これが今回のリニューアルの背景となっている。
工場出荷時はスーパースポーツモデルにも、標準オイルのULTRA G1を選択!?
中身が変わったスタンダードオイル・ULTRA G1のキャッチコピーは、「翼、目覚める。」で、「翼」はホンダのウイングマークでありホンダのチャレンジ精神の象徴を意味し、「目覚める」はエンジン始動の良さとハイレスポンスを表現。
一般的に“スタンダードオイル”と位置付けされるオイルは、コスト面からベースオイルに鉱物油を採用するのが定番。しかし新しいULTRA G1は、スタンダードオイルながら、オイルとしては1グレード品質や性能の高い、部分化学合成油を使用。他社のスタンダードオイルと同程度の価格設定としながらも、スタンダードオイルとしては極めてハイクオリティな性能を実現している。
今回、開発陣から聞けたことの一つが、ホンダの市販バイク(一般公道走行用)は、スーパーカブやモンキーなどのミニバイク、アメリカン、スーパースポーツを問わず、基本的に工場出荷時はスタンダードオイル「ULTRA G1(正確には、10W-30の旧G1)」に相当するタイプが充填されているということ。
筆者的には、「スーパースポーツには、ハイグレードなG4などが選ばれているのだろう」と想像していた。この点に関し、「ホンダでは工場出荷時、モデル別にエンジンオイルを変えることはありません。次回のエンジンオイル交換時、ユーザー様の用途やご予算によって、お好みのエンジンオイルを選んで頂ければと考えています」と回答頂いた。
一般的に新車購入時から次回オイル交換時までは、組み上がったばかりのエンジンやミッションの動きを馴染ませるため、高回転域を多用せず、低中回転域をメインにした「慣らし運転」をするのが常識。それらも考慮し、ホンダでは排気量やカテゴリーを問わず、工場出荷時にはスタンダードオイルのULTRA G1に相当するグレードをセレクトしているのだろう。
逆に言えば、スーパースポーツモデルにもスタンダードオイルのULTRA G1に相当するグレードをセレクトしていること=ホンダがいかにULTRA G1というエンジンオイルを信頼しているのか。つまり、ULTRA G1のクオリティの高さがよく分かる。
開発でもっとも苦労したのは「コストを抑えつつ、今まで以上のクオリティを出すこと」
ULTRA G1の開発コンセプトの1つが、「エンジンオイルで環境性能に貢献したい」ということ。それを実現するため、粘度を「10W-30」から「5W-30」に低粘度化するなどして、燃費の向上を実現した。
ULTRA G1は、「燃費の上昇」を目標に掲げ、2008年に開発を開始。高温側の確認テストでは、高回転型エンジンをチョイスし、エンジン単体によるベンチテストを敢行(エンジンへのダメージ、オイルの劣化、ピストンのアタリのチェック等々)。
また燃費面では、実際に代表的な車種をセレクトし、旧オイルや他社オイルと比較するなど実走テストも行われた。「新しいULTRA G1で燃費性能を高めるために」徹底したテストと改良を繰り返した。
ULTRA G1は10年以上の歳月を経て、ようやく完成、市販化。開発陣によれば、「コストは極力抑えつつ、今まで以上のクオリティを出すのに一番苦労した」という。
気温50℃を超える灼熱のインドでも、ULTRA G1は変わらないポテンシャルを発揮
ULTRA G1は日本で開発され、国内で発売中のエンジンオイルだが、実はインドで生産されるホンダ車の工場出荷時(アクティバ、ハイネス350など)にもすでに採用されている。
インドでULTRA G1が選ばれた大きなきっかけの1つが、燃費の良さ。一般的にインド人がバイク選びでもっとも重要視するのが、燃費性能。性能はもちろん、低燃費にこだわり抜いたULTRA G1は、インドのホンダ工場でいち早く使用された。
インドでの使用にあたっては、現地にて繰り返し実走テストを敢行。気温50℃を超える灼熱のインドでも、ULTRA G1は変わらないポテンシャルを発揮した。
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バイク用として開発されたULTRAシリーズは、4サイクルエンジン搭載のバイクであれば、メーカーを問わずに使用可能(レース専用車など一部を除く)。ただしメーカー問わず、すべての2サイクルエンジン搭載車には使用不可。ちなみに2サイクルエンジン用のULTRAシリーズも発売中。次回のエンジンオイル交換時には、ぜひともチェックしてみよう!
※寒い中でも、スムーズなエンジン始動を実現したULTRA G1。ホンダでは、これをイメージした動画を公式ホームページ(下記)にて配信中。
●ホンダ二輪用純正4サイクルエンジン「ULTRAシリーズ」公式WEBサイト
https://www.honda.co.jp/motor-parts/ultraoil/
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