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エンジン特性は高回転のトルク増強 新型フレームで剛性強化、バネ下重量を軽減! PCXの進化を体感【試乗レポ】

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従来の原付2種クラスよりも少し大柄な車格で、ゆったりとした走りを楽しめるプレミアムスクーター、PCXシリーズがフルモデルチェンジ。フレームや足周りを一新したほか、エンジン特性も変更。従来どおりの発進加速をキープしたまま、高回転域でのエンジン出力とトルクが大幅に高められた。(REPORT:近田 茂 PHOTO:山田俊輔)

PCX……342,360円

PCX150(ABS)…… 373,680円(395,280円)

2009年にデビューした初代PCX 。コンパクトな車格を利点としていた従来の125ccスクーターとは一線を隠し、ワンランク上のプレミアムな大人のモデルとしてアセアン諸国はもちろん国内市場でも評価は高く確かな人気を獲得した。2012年には150ccモデルが登場。2014年には125ccモデル、150ccモデルともに灯火類をフルLED化するなど第2 世代へモデルチェンジ。そして今回2018年に3 世代モデルへと大きく一新されての登場だ。
ちなみにこのモデルはベトナムで生産。価格は125ccモデルが34万2360円。PCX150は37万3680円〜。シグナスXが31万8600円、NMAXが35万1000円、マジェスティSが37万2600円、NMAX 155が37万8000円と、ライバル車と比べても、PCXがプレミアムな装備を有していることを加味すれば、かなりお得感のあるプライスである。

もうひとつPCX を語る時に欠かせないのは、前後に大径14インチホイールを採用している点にある。10インチや12インチといった取り回しの容易さを重視したホイールサイズではなく、操縦安定性と乗り心地を追求すると大径サイズを選択。PCX の場合、その大径ホイールを採用しつつも、シート下の収納スペースを犠牲としない実用デザインも特筆物なのである。

パワーユニットは駆動系を中心にさらに熟成

早速走ってみた。125ccモデル、150ccモデルともに感じたのは、全体にスムーズな印象であるということ。だが動力性能にまるで不足はなく、むしろ穏やかな乗り味が好印象。エンジンベースは基本的に共通だが給排気系のリファインで出力特性が向上。さらに駆動系の無段変速機は内部構造を一新。前後プーリーのフェイス面の大径化や角度の変更を実施。変速比のワイドレシオ化を達成した他、フリクションロスの低減にも大きく貢献した点が見逃せないところだ。

アイドルストップからの発進にストレスは無く、ほぼ一定のトルク感と加速度をキープしながらグングンと速度を増していく。旧型では変速スケジュールと出力特性の関係で、若干のトルク不足でレスポンスが鈍く感じられる領域があったが、新型では全域でストレスを感じない走りに改善され、その乗り味はよりジェントルな雰囲気だ。タンデムでも後席ライダーへの優しい配慮ができる、扱いやすさが良い。さらにPCX150 ではトルクに余裕が感じられ、伸びの良さも期待できる。高速移動も十分快適にこなせるだけのパフォーマンスだ。

足周りは前後合わせて700g軽量に

先に述べた前後14インチホイールの乗り味も今まで以上に良いと思えた。前後ホイールとタイヤで、従来モデルから700gほど軽量化された恩恵もあるのだろう、何かそれだけで優越感を覚える程に安心感がある。コーナーへの進入から旋回中、そして立ち上がりに至る迄のラインが予め予想が付き、思い通りのラインを綺麗にトレースして行ける。旋回中は車体がバンクして(傾いて)いるわけだが、その間の安定感も抜群。仮に工事中の路面の凹凸や砂利道に遭遇しても、何ら慌てることなくスンナリと通過できる安心感は大きい。実際、リヤのクッションストロークは15mm増しで3段レートのスプリングを採用。取り付け位置を後方へ移動したことでホイールトラベルも増加して大きな衝撃に対しても底突き感の少ない乗り味になっていた。

また表皮にステッチを入れたシートもデザインを一新。体格にもよるだろうが、身長170cmの記者にとっては、フロアからシートまでの高さやレッグスペースが適度で、シートに接触するのが尻だけではなく、内腿の一部もフィットして安定感のある座り心地。体圧が広く分散されてなかなか快適だった。

容量28Lのシート下スペースはフルフェイス1個を収納してもまだ余裕があるサイズ。これに加えてフロント左側のインナーボックスには500 ㏄のペットボトル等が入れられるほか、アクセサリー電源ソケットも標準で装備する。左手レバーで前後が連動するコンビブレーキ、そしてスマートキーシステムの採用等、全体的に仕上がりは上質でバランスも良い。正直、個人的にも欲しいと言う気にさせてくれるだけの魅力が感じられた。

新型・旧型ディテール比較

新型:完全に一新されたスチールパイプフレームはダブルクレードル方式を採用。確かな剛性向上を果たしている。フレーム全体で旧型比2.4kg の軽量化を果す。
旧型:スシングルのダウンチューブをメインにしたアンダーボーン方式のスチールパイプフレーム。
新型:リヤフレームもトラス構造でデザインされていかにも剛性感がある。細目のパイプワークが軽量化の決め手か。リヤショックの取り付け位置も後方にオフセット。新たに3段バネレートのコイルスプリングがマッチされた。
旧型:シンプルなデザインだが、旧型フレームの方が重い。リヤショックは旧型から2本ショックタイプだが、その取り付け位置は前方寄りであった。大きな衝撃が入った時の突き上げ感が指摘されていたと言う。
新型:メーター周辺、ヘッドランプやスクリーン等のフロントカバーを取り付けるブラケットも一新。樹脂の成形部品に変更し軽量化。
旧型:旧型のブラケットはこんな感じ。パイプやステーを溶接して組み上げられたものだ。部品製造時の手間やコストがかかることは容易に推察できる。品質精度面でも新型の方が有利と思われる。
新型:エアクリーナー容量は旧型比で1L拡大されて、吸気効率を向上。エンジンカバーにマッチした造形に一新された。
旧型:エンジンカバーとは別にレイアウトされたエアクリーナー。先端に設けられた吸気口も全く異なっている。

PCX /150ディテールチェック

125 ccモデルと150ccモデルの大きな違いはシリンダーボア(排気量)のみ。また150 はABS 付きが選択できる。
125 ccモデルと150 ccモデルそれぞれのエンジン出力特性の新旧比較。赤いラインが新型の特性を表している。大きなキャタライザー採用もパワートルクは明確に向上している。
エンジン部を真上からの俯瞰した写真。水冷エンジンのクランクは共通でストロークは共に57.9mm。ボアは125 が52.4mm、150 が57.3mmでいずれもロングストロークタイプ。中央に見えるスロットルボディは、旧型より2 mm拡大されたφ26mmを採用。
駆動系は、ドライブ/ドリブンフェイスともい新設計された。形状変更と大型化を実施。変速比の幅を拡大して発進加速性能を向上、高速まで伸びの良さも確保。さらにフリクションロスを低減した。
写真の125 ccモデルはミシュランのシティグリップを履く。旧型の90/90-14インチからワンサイズ太くなった100/80-14 を採用。
リヤタイヤもワンサイズアップ。旧型の100/90-14 から120/70-14 に変更。ホイールも新設計されて前7%、後11% の軽量化を果たしている。
ライダー右膝前方に位置するメインスイッチ。スマートキーを身につけていればスイッチノブを回すことができイグニッションをONできる。右のシーソースイッチはシート及び給油口の蓋が開けられる。
このスマートキーを携帯すればPCX のメインスイッチが操作できる。スマートキー自体をON/OFFするスイッチと、自車の位置を知らせるアンサーバックスイッチがある。
スマートキーは電波式。同システムの受信及び制御を行うユニット。シートレール右側にセットされている。
それほど深くはないが、28Lと十分な容量が確保されたラゲッジボックス。シートは前ヒンジで大きく開く。ガタつきも少なくシッカリと仕上げられていた。
写真のフルフェイスヘルメットはAraiのQUANTUM-J 。ご覧の通りキチンと納まり、後方にも余裕がある。
左側のインナーボックスは、アクセサリー用の電源ソケットが装備されていた。12V 1Aつまり最大12W まで利用できる。
給油口の蓋を開けたところ。フレーム中央シート前方に位置し、扱いやすい。ちなみにガソリンタンク容量は8L だ。
大きくて見やすいスピードメーターは反転液晶表示のデジタル式。時計はもちろん、平均燃費率の表示や各種警告灯等、スッキリとデザインされている。
ステアリングトップのハンドルバークランプ。丸い化粧パネルやクランプ締めつけボルトカバーも綺麗に一新された。
ハンドル左側のスイッチ。一番下がウインカースイッチで中央にホーンボタンをレイアウト。感覚的に使いづらいという意見も……。
右側はセルボタンとハザードスイッチ。一番上の黒いのはアイドリングストップ機能のON/OFFスイッチ。ちなみにエンジンキルスイッチは無い。
車体サイズは125 と150 両車は共通。シート高も同じ764mm 。
シート前方の上面両サイドが大胆に面取りされているので、足が出しやすく、ご覧の通り両足の踵はべったりと余裕をもって地面を捉えることができた。

■Specification■
PCX/PCX150〈ABS〉
車名・型式 ホンダ・2BJ-JF81/ホンダ・2BK-KF30
全長(mm) 1,925
全幅(mm) 745
全高(mm) 1,105
軸距(mm) 1,315
最低地上高(mm) 137
シート高(mm) 764
車両重量(kg) 130/131
乗車定員(人) 2
燃料消費率*1 (km/L) 国土交通省届出値: 定地燃費値*2 (km/h) 54.6(60)〈2名乗車時〉 52.9(60)〈2名乗車時〉 WMTCモード値(クラス)*3 50.7(クラス 1)〈1名乗車時〉 46.0(クラス 2-1)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 1.9
エンジン型式・種類 JF81E・水冷4ストロークOHC単気筒 /KF30E・水冷4ストロークOHC単気筒
総排気量(cm³) 124/149
内径×行程(mm) 52.4×57.9/57.3×57.9
圧縮比 11.0/10.6
最高出力(kW[PS]/rpm) 9.0[12]/8,500 /11[15]/8,500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 12[1.2]/5,000 /14[1.4]/6,500
始動方式 セルフ式 燃料供給装置形式 電子式《電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)》
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
燃料タンク容量(L) 8.0
変速機形式 無段変速式(Vマチック)
タイヤ 前 100/80-14M/C 48P 後 120/70-14M/C 55P
ブレーキ形式 前 油圧式ディスク 後 機械式リーディング・トレーリング
懸架方式 前 テレスコピック式 後 ユニットスイング式
フレーム形式 ダブルクレードル

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