ホンダ シャリィ、シャリイ、シャリーどれが正解? 歴代モデル&カスタム解説
- 2019/06/29
- MotorFan編集部 北 秀昭
万人向けに登場した、カワいいファミリーバイク「シャリィ」。女性にも人気のあったシャリィは、ワイドタイヤ装着の太足カスタム、メカニカルなフルチューン仕様など、今ではカスタムベースとしても人気。時代によってフォルムをチェンジしてきたシャリィの変遷や、渾身のカスタム車両をご紹介しよう。
PHOTO●4ミニ.net https://4-mini.net/
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
シャリィはビギナーでも安心して乗車できるファミリーバイクとして誕生
1972年(昭和47年)、「ビギナーでも安心して乗れる操作性と乗降性を持ったバイク」をコンセプトに開発されたシャリイ(Chaly)が登場。
今ではローダウン仕様など、硬派なカスタムの多いシャリィ(下記参照)だが、実は家族みんなで楽しめるファミリーバイクを目指して開発されたアットホームなモデルだった。
エンジンは低・中速域での使い易さを重視した、マイルドな特性のカブ系横型を搭載。スカートをはいた女性でも、簡単に乗車できる低床バックボーンフレーム、小回りの利く小径の前後10インチホイールなど、誰にも優しい機能を装備しているのがポイントだ。
当時のタイプは全3種類。
・排気量49cc/2速ロータリー変速/前後輪ハンド式ブレーキ式の「CF50-1」
・排気量49cc/3速リターン変速の「CF50-2」
・排気量72cc/3速リターン変速の「CF70」がラインナップされていた。
1976年(昭和51年)には、透過光式メーター、両面キーを採用するなど使いやすさを向上した「CF50-3」「CF70-3」を追加発売。また、既存の「CF50-2」「CF70-2」には、ハンドル前面に新設計の大型バスケットを標準装備するなど実用性を高めている。
シャリィは時代によってカタカナ表記が異なっているのが特徴。当初は「シャリイ」だが、1988年型より「シャリィ」、95年型より「シャリー」にそれぞれ変更されている(※ここではシャリィに統一)。
現在、シャリィは「カブトフェンダー」「ブーツ付きフロントフォーク」「4本スポークホイール」装着車が人気
シャリィのカスタムベース車両として人気が高いのは、兜(かぶと)のような形状の通称カブトフェンダー、フォークブーツ付きフロントフォーク、4本スポークホイール装着車。
このシャリィは、カスタム後も、どっしりとした丸っぽいシルエットに仕上がるのがポイントだ。
●CF50-3の主要SPEC
全長:1615mm/全幅:630mm/全高:960mm/乾燥重量:76kg/燃料タンク容量:2.8ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:39mm×41.4mm/最大出力:3.2ps/7000rpm/最大トルク:0.34kgm/6000rpm/変速機:3速リターン/クラッチ形式:自動遠心式/タイヤサイズ:前後3.50-10
1979年(昭和54年) 49ccモデル(CF50)はホイールを「3本」に変更
1979年(昭和54年)、シャリィは新しい「昭和54年排ガス規制」に適合させるためにモデルチェンジ。
49cc(CF50)と72cc(CF70)のエンジンは、中・低速の出力特性が向上。エンジンオイルの消費の少ないピストンリングの採用等で、より信頼性のある4サイクルエンジンに生まれ変わっているのがポイントだ。
前後の兜(かぶと)型フェンダーは、スチール製から、軽量な樹脂製に変更。49cc版のホイールは、4本スポークから3本スポークに変更された。
明るさを増したヘッドランプ、大きくて見やすくなったリヤのランプ類、操作しやすいようハンドルの左側にまとめたスイッチ類など、利便性もアップしている。
●CF50<CF70>の主要SPEC
全長:1605mm<1630mm >/全幅:660mm/全高:965mm/乾燥重量:72kg<74kg>/燃料タンク容量:2.8ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc<72cc>/ボア×ストローク:39mm×41.4mm<47mm×41.4mm>/最大出力:3.2ps/7000rpm<4.2ps/7000rpm >/最大トルク:0.37kgm/6000rpm〈0.52kgm/5000rpm〉/変速機:3速リターン/クラッチ形式:自動遠心式/タイヤサイズ:前後3.50-10
1981年(昭和56年) 伝説の「オートマチックモデル」である“ATシャリィ”が登場
1981年(昭和56年)、世界初となるリッター100kmの超低燃費エンジン(30km/h定地走行値)と、パワーアップを両立させた新型のシャリィ50が登場。
ピストンの軽量化によるフリクション(抵抗)の低減、同クラス初となるCDI点火の採用など、当時の最新技術をフル投入。角型ヘッドライト、角型ウインカー、角型サイレンサー等々、外観は角張ったイメージに変更された。
1981年モデルには、横型49ccエンジンに3速オートマチックのミッションを組み合わせた「シャリイ・50AT」、通称「ATシャリィ」もラインアップ。
エンジンの回転数や車速によって自動的にギア比を変更するこのATミッションは、既存のスクーターとは異なる複雑かつ独創的なシステムを導入(遠心クラッチを3個使用)。
驚くのがその価格。将来を見据えた革新的な機構ながら、通常版よりもたったの6000円高というリーズナブルな価格を実現。しかし……。
横型エンジン+ATを採用したATシャリィは、Vベルト・プーリー・遠心クラッチを組み合わせた2ストスクーターの驚異的な普及もあり、間もなく姿を消した。
現在でもATシャリィ用エンジンにこだわるコアなユーザーは存在。なお、通常のマニュアル式及び、自動遠心式クラッチ&ミッション関連パーツとの互換性はない。
ギア操作を省いた“伝説の”3速オートマチック採用モデル、ATシャリィ。発売して間もなく、「オートマチック=軽量な2ストスクーター」という図式が定着したため、ATシャリィは短命に終わった。
ATシャリィはクランクケースカバー(クラッチ側)に浮かぶ「AT」の文字が目印(写真はカバーにメッキを施したカスタム車)。
なお、クランクケースの基本構造は、通常版のシャリィと同じだが、当然ながらクラッチ周りやミッションはまったくの別物となっている。
●シャリイ50の主要SPEC(カッコ内は50AT)
全長:1650mm/全幅:645mm(655mm)/全高:995mm/乾燥重量:75kg/燃料タンク容量:2.8ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:39mm×41.4mm/最大出力:3.5ps/7000rpm/最大トルク:0.38kgm/6000rpm/変速機:3速リターン(3速オートマチック)/クラッチ形式:自動遠心式(オートマチック)/タイヤサイズ:前後3.50-10
1981年(昭和56年) 原付2種である72cc版の最終モデル
1981年(昭和56年)には、「シャリイ50」「シャリイ・50AT」とともに、タンデムステップ、タンデムシートを装備した、新しいシャリイ70が登場。
エンジンは、ボアを39mmから47mmに拡大し(ストロークは50と同じ)、排気量を72ccに拡大。パワーは4.2psまでアップされている。
1983年(昭和58年)にはマイナーチェンジによって、パワーが4.6psまで引き上げられた。
●81年型シャリイ70の主要SPEC(カッコ内は83年型)
全長:1650mm(1665mm)/全幅:645mm/全高:995mm/乾燥重量:76kg(73kg)/燃料タンク容量:2.8ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒72cc/ボア×ストローク:47mm×41.4mm/最大出力: 4.2ps/7000rpm (4.6ps/7000rpm )/最大トルク: 0.52kgm/5000rpm(0.55kgm/5000rpm)/変速機:3速ロータリー(新3速ロータリー)/クラッチ形式:自動遠心式/タイヤサイズ:前後3.50-10
1983年(昭和58年) リッター115kmを達成!
1983年(昭和58年)、シャリィ50はリッター115kmを達成した、超低燃費エンジン(30km/h定地走行値)を搭載。パワーは3.5psから4.0psにアップした。
ミッションは急激なシフトダウンによる衝撃を防止する「新ロータリーチェンジ機構」を採用して、快適な走行を実現。
1988年には12VのMF(メンテナンスフリー)バッテリーが新たに導入されている。
●1988年モデルの主要SPEC
全長:1665mm/全幅:645mm/全高:985mm/乾燥重量:72kg/燃料タンク容量:2.8ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:39mm×41.4mm/最大出力:4.0ps/7000rpm/最大トルク:0.44kgm/5500rpm/変速機:3速新ロータリー/クラッチ形式:自動遠心式/タイヤサイズ:前後3.50-10
1995年(平成7年) カラーリングを変更した「シャリー」の最終モデル
1995年(平成7年)、明るく軽やかなイメージのパールミルキーホワイトと、落ち着いた品のあるキャンディメープルレッドの2色に変更。クランクケース、マフラープロテクター、ホイールなどをライトゴールドでまとめ、質感をアップしている。
なお、メーカー表記は「シャリー」に変更。ただしエンジンの仕様や足周りなど、スペックに大きな変更はない。
1997年(平成9年)にはカラーリング変更。なお、シャリィは99年の新排ガス規制に適合しなかったため、97年モデルが最終モデルとなる。
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