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“Y部品”が組み込まれた伝説のスポーツモデル「ベンリイSS50」ってナニモノ?

  • 2019/07/05
  • MotorFan編集部 北 秀昭
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1960年代後半、当時開催されていた「全日本ロードレース・50ccクラス」のレギュレーション変更により、市販レーサー「CR110カブレーシング」はエントリー不可となった。その後継モデルが、1967年(昭和42年)に発売された、“伝説の”ベンリイSS50だ。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)

エンジンは「カブ」や「モンキー」と同じ、ボア39mm×ストローク41.4mmの横型OHC49ccだが…

最高出力は横型エンジン最高峰の6.0ps/1万1000rpmを発揮。最高速度は95km/hをマーク!

 60年代後半、今はなき「全日本ロードレース50ccクラス」のレギュレーションが変更。その結果、それまで大活躍していた、“精密機械”と呼ばれた、DOHC4バルブ49ccエンジン搭載のホンダ市販レーサー「CR110カブレーシング」が、エントリー不可となってしまった。

▲DOHC4バルブ49ccエンジン搭載の「CR110カブレーシング」。
▲鈴鹿サーキットを激走する「CR110カブレーシング」。

■カスタム不要のスーパーカブ? DOHC4バルブ搭載の名車「CR110カブレーシング」って?

 上記の「CR110カブレーシング」の後継モデルとなったのが、1967年(昭和42年)に発売されたベンリイSS50。

 サーキットや公道において、小排気量車は徐々に2ストマシンが優勢になってゆく中、ホンダはかたくなに4ストにこだわり続けた。

 ベンリイSS50は、「ホンダのこだわり」が凝縮されたスポーティな1台。ちなみにベンリイSS50の“SS”とは、「スーパースポーツ」を指す。

 ホンダは1968年(昭和43年)の世界GPを機に、バイクレース活動を休止(四輪のF1参戦が主な理由)。それらも影響し、社内でのバイクレースは禁止となる。

 その結果、社内のバイクレース好きたちがプライベートチームを結成。ベンリイSS50をベースにチューニングを施し、個人的にレースを楽しんでいたという。

「ベンリイSS50」はカブ系の横型エンジン搭載スポーツ最終モデル

 エンジンは「近代カブ系横型エンジンの原型」ともいえる、ボア39mm×ストローク41.4mmの横型OHC49cc。パワーを出すため、高圧縮型ピストンやハイカムシャフトなど、ベンリィCS50用としてオプション販売された「Y部品(※注1)」が随所に組み込まれている。

 最高出力は、横型エンジン最高峰の6.0ps/1万1000rpmを発揮。最高速度は95km/hをマークした(カタログ値)。

 ミッションはホンダ50cc初となる、5速リターンを採用。同ミッションは、ボアアップしたハイパワーのモンキーカスタムやカブカスタムにも多数流用された。

 フレームはスポーツモデル伝統のT字型バックボーンフレームを採用。17インチホイール、ベンリィCS50用Y部品がベースのテレスコピック式フロントフォークなど、足周りも当時の最新技術がフル投入されている。

 1970年(昭和45年)には、外装を変更するなどモデルチェンジ。

 なお、1971年(昭和46年)には、新設計された“縦型エンジン”搭載の「ベンリイCB50」がデビューし、「50ccスポーツ」の座を譲った。

 カブ系横型エンジンを搭載したスポーツモデルとしては、最後となるベンリイSS50。CR110カブレーシング同様、「50cc最強」を誇っていた当時を知る50代以上の年齢層からの人気は、今もなお高い。

●主要SPEC 
全長:1780mm/全幅:610mm/全高:920mm/乾燥重量:68kg/燃料タンク容量:5.5ℓ/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/ボア×ストローク:39mm×41.4mm/圧縮比:9.5/最大出力:6.0ps/1万1000rpm/最大トルク:0.40kgm/1万rpm/変速機:5速リターン/クラッチ:手動式/タイヤサイズ:前後2.50-17/当時の価格:6万2000円

超貴重な「ベンリイSS50用エンジン」を、旧型の「4Lモンキー」に載せ替えた、超々お宝カスタムを発見!

 写真は、電気系統に手を加え、4Lモンキー(Z50J-1)にSS50用エンジンを搭載したカスタム。オーナーは4ミニカスタム歴数十年のハイエンドユーザー、N氏。

 N氏は貴重なベンリイSS50用エンジンを、新品で入手。メンテナンスのためにエンジンを分解したところ、「Yキット(※注1)」と思われるパーツが、随所に組み込まれていたという。

 そのことから、このエンジンは、「Y部品(※注1)」を総導入した『CYS50型』というレース向けのコンプリートである可能性もあるとのこと。ただし詳しい資料が残っていないため、事の真相は不明だ。

※モトチャンプ誌(2008年12月号)より

※注1:「Y部品」「Yキット」とは?

 当時少数生産された、ホンダ純正のレース用パーツ。現在では「Yパーツ」「Yキット」とも呼ばれる。

 ベンリイSS50用は、ハイカムシャフト、ヘッド部の盛り上がった高圧縮型ピストン、ウェブ径を小径にして軽量化したクランクシャフト、肉盛りにより高回転にも耐えうるロッカーアーム、大径の吸排気バルブ、専用バルブスプリング、高耐久型バルブスプリングリテーナー、高耐久型カムチェーンテンショナー、大口径キャブレター、エアファンネルなどが発売された。

 Y部品の多くはレースに使用され、また価格も非常に高価だったことから、現況現存するものは極めて少ない。

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