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新型グロム試乗|欲しかった「5速」、やっぱり最高です!

  • 2021/05/19
  • 大屋雄一
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1967年にモンキーZ50Mを発売して以来、時代ごとに小排気量のエントリーモデルを投入してきたホンダが、2013年にデビューさせたのが125ccのグロムだ。タイで生産される前後12インチホイールのグローバルモデルであり、2016年にはスタイリングを一新して2代目へと進化。そして今年は、エンジンと外観に大掛かりな手を加えるなどビッグマイナーチェンジを実施した。その進化した走りをじっくりとチェックする。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

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ホンダ・グロム……385,000円

実用域での扱いやすさと速さではCB125Rをはるかに凌駕する

バンク角主体だからこそ旋回の楽しさと操縦の基礎が学べる

ライディングポジション&足着き性(175cm/64kg)

ディテール解説

グロム 主要諸元

ホンダ・グロム……385,000円

車体色は写真のフォースシルバーメタリックのほかにマットガンパウダーブラックメタリックを用意。ABSを追加しながら車重は104kgから102kgへと軽くなっている。
タイヤサイズはフロント120/70-12、リヤ130/70-12で、標準装着タイヤのメーカーと銘柄、そして指定空気圧まで先代と共通だ。
2013年6月に発売された初代グロム。「ジャストサイズ&魅せるスペック」をコンセプトとし、当時の税込本体価格は309,750円だった。
スタイリングを一新した2代目は2016年6月に発売された。ヘッドライトがLEDとなり、マフラーはダウンショートタイプに。税込本体価格は345,600円。

実用域での扱いやすさと速さではCB125Rをはるかに凌駕する

ツインリンクもてぎで開催されている4ストミニバイクの耐久レース「DE耐!」に、仲間のホンダ・エイプ100で参戦していた私にとって、初代グロムに試乗したときの衝撃は今も鮮明に記憶に刻まれている。驚きの筆頭はエンジンだ。エイプと違ってセル付きなので始動はイージーだし、キャブではなくPGM-FIなのでラフなスロットル操作も許容してくれる。そして、何より愕然としたのは低回転域でのトルクの厚さだ。形式が異なるとはいえ同じ空冷SOHC2バルブの単気筒なのに、たかが25cc増えただけでここまで出足が良くなるとは。

ハンドリングは、前後12インチというホイールサイズが共通で軸距もほぼ同じなので、ニュートラルに向きを変えるという傾向はエイプとかなり近しかった。その上で、エイプの方が車重が15kgも軽く、リヤにリンク式サスを採用しているというアドバンテージはあったものの、グロムの前後ディスクブレーキ(エイプは前後ドラム)がそれを補って余りあるほどのパフォーマンスを発揮。この試乗経験により、ホンダのレジャーバイクにおける世代交代を痛感させられたのだ。

さて、今回試乗したグロムは、初代から数えて3代目となる2021年モデルだ。マフラーを含む外観が刷新されたのは、よりカスタマイズしやすいようにとの配慮からで、特にタンクカバーとサイドカバーは「ここのボルトを緩めれば外せますよ」ということを視覚的にアピールしたデザインとなっている。カスタマイズもバイク趣味における重要なカテゴリーの一つであり、これはユーザーフレンドリーな進歩と言えるだろう。

空冷SOHC2バルブ単気筒のエンジンはボア×ストローク値が見直され、初代&2代目よりもロングストローク比となり、圧縮比も高められている。最高出力は9.8psから10psへと微増、最大トルクは11Nmのままだが、その発生回転数が5,250rpmから5,500rpmへとわずかに変化している。そして、何よりの朗報はミッションが4段から5段になったことだ。初代や2代目のエイプに乗ったことのある人のほとんどが、幻の5速に入れようとしたことがあるはず。メーターにギヤポジションインジケーターがなかったことも理由の一つではあるが、それだけ実用域のトルクが厚いことの表れとも言える。

新型のエンジンは、発進加速が非常に力強い。先代と直接比較していないので断言はできないが、ほぼ同等か、わずかに上回る加速力を見せてくれる。気になったので総減速比を計算したところ、1速でレッドゾーンの始まる8,000rpmまで引っ張った場合、先代のエンジンは38.7km/hまで出るのに対し、新型は33.5km/hと約13%低い。つまり、新型の1速は加速に有利なローギアードとなっており、これも体感的な速さにつながっている可能性は大きい。

とはいえ、エンジン自体の扱いやすさは歴代通じて共通であり、ミッションの段数が増えたからといってせわしなくギヤチェンジを求められる特性にはなっていない。勾配の急な上りコーナーの進入で仮にシフトダウンをサボっても、2,000rpm以上であればストトトッと事も無げに立ち上がってくれるのだ。ちなみに、ホンダのCB125Rを同日に試乗したのだが、エンジン特性は正反対であり、同じ状況においてはCBはモッサリとしか加速しない。CBがそのパワーを発揮するのは7,000rpm以上であり、それをキープできない状況、つまり街中などの一般的な使用状況においては、グロムの方が明らかに扱いやすい上に現実的にも速いのだ。

なお、60km/h巡航時のエンジン回転数は、新型がトップ5速で4,250rpm、先代がトップ4速で4,600rpmとなっている。わずかな差ではあるが、新型の方が回転数を低く保てる分だけツーリングでの燃費向上につながる可能性は大きい。

バンク角主体だからこそ旋回の楽しさと操縦の基礎が学べる

ハンドリングも実にいい。ワイドタイヤゆえの軽薄すぎないロール方向の動き、微速でも切れ込みすぎない舵角の付き方、スロットルのオンオフで発生する分かりやすい車体のピッチング。車重の違いこそあれ、そのどれもが軽二輪以上のスポーツバイクの動きに近似しており、扱いやすいだけでなく、操縦の基礎を学ぶには格好の素材と言えるのだ。

舵角が穏やかに付くので、基本的にはバンク角主体で旋回するタイプだ。寝かし込んだ分だけ旋回力が高まるという分かりやすさがあり、それを支えてくれるのが十分以上のグリップ力を発揮する標準装着タイヤだ。φ31mm倒立式フロントフォークは、強めのブレーキングでスコンッと縮まる傾向にあり、そこから先ではステアリングヘッドが左右へ逃げるような挙動を見せる。だが、そうした無理な突っ込みをしても旋回力が高まらないばかりか、単に恐怖心が増すだけなので、自然とスムーズなブレーキングからの倒し込みを心がけるようになる。言い換えれば、ビギナーに適切なライディング技術を教えてくれる稀有なモデルなのだ。

前後ともニッシン製のキャリパーを採用するブレーキは、入力初期の利きを穏やかにすることで扱いやすさを高めるという狙いは歴代共通だ。新型はフロントのみが作動する1チャンネルABSを標準装備しており、これの介入レベルは適切だ。実際にドライ路面で試してみると、二輪教習の急制動と同じかそれ以上にブレーキレバーを強く握り込まないと介入しない。それだけ標準装着タイヤのグリップ力が高いという証拠であり、オーナーになられた方は一度は安全な場所で試しておくといいだろう。

CB125Rを筆頭に、CT125・ハンターカブやモンキー125など、原付二種クラスに魅力的なマニュアルミッション車を多数ラインナップするホンダ。中でもグロムは軽量コンパクトゆえの親しみやすさで選ぶ人はもちろん、純正アクセサリーのリヤキャリアに社外品のトップボックスを装着し、通勤通学やツーリングに使用している人も少なくない。レジャーバイクを半世紀以上も作り続けてきたホンダの集大成のような存在であり、新型はまさにその正常進化版と言えるだろう。

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