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使用速度域が高い市場でもハイブリッドの強みを活かせるトランスミッション 【東京モーターショーTECH】狙うは欧州市場? アイシン・エィ・ダブリュのハイブリッドトランスミッション

  • 2017/10/26
  • Motor Fan illustrated編集部
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エンジン取り付け部分とは反対側。向かって右に最終減速ギヤ〜出力軸がある。左側は変速に必要な油圧を供給するバルブボディ。

アイシングループはパワートレーンからシャシー系まで、さまざまな部品・ユニットを開発・製造している。得意分野のひとつが変速機であり、今回の東京モーターショーでは1モーター方式のFF車用8速ATを披露した。
TEXT&PHOTO:牧野茂雄

エンジン取り付け部分とは反対側。向かって右に最終減速ギヤ〜出力軸がある。左側は変速に必要な油圧を供給するバルブボディ。
エンジン取り付け側(向かって左)には振動吸収用のバネ式トーショナルダンパーを備える。黒い樹脂カバーの中がバルブボディ。

今回の東京モーターショーで披露したのは、すでに製品化されている8速ATからトルクコンバーターを取り外し、代わりにモーターを組み込んだものだ。採用されているひとつひとつの技術的にはすでに実績があり、すぐにでも製品化できるユニットと言える。

通常はトルクコンバーターがある位置にリング状の電動モーターがある。モーター軸はそのまま8ATの変速機構につながり、最終減速ギヤを経て車輪へと出力される。モーター内側には湿式多版クラッチを備え、このクラッチを接続するとエンジン出力とモーター出力が合流する。切り離した状態では電動モーターの出力が8ATを経て車輪に向かう。

実際の車載状態では、発進はモーターだけで行なう。おそらく、もっともモーター効率の高い回転数にモーターの回転を維持し、スタートに必要なトルクを負担し、1速→2速くらいの変速が行なわれるのだろう。クルマがある程度のスピードになるとエンジン出力が合流し、モーター回転+エンジン出力の合計が8速ATに入る。モーターと変速機はつねに繋がっており、切り離すことはできないが、どのようにモーターを利用するかは「このシステムを搭載するクルマ側によりけり」である。アイシン精機によると「発進からどれくらいの車速までモーターを使うかは搭載されるバッテリーの容量次第」「燃費をねらうこともできるし、エンジン出力をモーターが補助することでの加速性能にも期待できる」とのことだ。

エンジン取り付け側のクローズアップ。リング状の部分がモーターで、モーター軸を囲むように湿式多版クラッチが配置される。
通常のアイシン8AT。エンジン取り付け側(向かって左側)にロックアップクラッチ、トルクコンバーター、回転増幅用のステーター(白い水車状の部品)がある。

このモーター内蔵変速機は、トヨタがプリウスなどに採用しているTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)とは違ったハイブリッド=混合動力システムである。しかし競合はしない。プリウスやアクアは日本の交通事情にほぼ最適化された設計だが、この電動8ATは日本よりも使用速度域が高い地域、たとえばヨーロッパの交通事情では真価を発揮するだろう。ユニット全体の大きさは通常の8ATとほとんど変わらないから、多くのエンジン横置きFF車両に搭載できる。汎用性の高いユニットであり、当然、アイシン精機は現在の同社ATの顧客である海外メーカー(フォルクスワーゲンやオペルなど)への売り込みも行なうはずである。

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