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『福野礼一郎のクルマ論評3』副読本的ウェブサイトMotoFan Road Test フェアレディZ432の真実 名車再考 日産フェアレディZ432 Chapter2 再録MotorFan Road TEST(1970年1月号)

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主催:社団法人 自動車技術会
   モーターファン編集部
とき:昭和44年11月12日・13日
ところ:日産村山テストコース
    運輸省船研技術研究所
座談会:昭和44年11月13日 番町共済会館

1969年12月1日発売のモーターファン1970年1月号のロードテストをできる限りオリジナルに忠実に再録した。オリジナルは日産村山テストコースで行ったテストの写真で構成しているが、当時の写真が散逸してしまっているため、本誌では1969年11月に鈴鹿サーキットで行ったオートスポーツ誌のテストの写真を使用した。テストドライバーは寺西孝利選手。

アメリカ向けを意識して

 本 誌 まず、開発の狙いからお願いします。
 水 津 このクルマの計画は、現在出ているブルーバードの発表の前の年で、ちょうどR380がレースで優勝した年でした。ですから、フェアレディZの企画の技術的基盤としては、ブルーバードのサスペンションとかR380のエンジンとかいうもので、その上に立って計画されたものです。
 われわれに与えられた命題は、まずレース、ラリーで十分戦えるだけの素地を持っていなければならないこと、乗用車なみの乗心地で、実用性を持たせてセダン的にも十分使えること、というふたつの相反する要求でした。また、大量生産できること、これはとりもなおさず、価格も安く、重量も適当である、ということです。さらに加えて、従来からフェアレディの主要な市場であるアメリカに十分適合するものでなければならない、ということでした。
 それで、高性能のスポーツカーであり、長距離のドライブも楽しめる、といったことに関連して、いろいろな好みに応じられるように、それぞれの用途に合った使い方ができるということに主眼をおき、高性能エンジンとしてはR380のS20エンジンを、乗用車的なものとしては、セドリックに使っている6気筒をとり上げました。
 とくにアメリカ向けとしては排気量をアップして、2.4ℓとしました。これはアメリカの排気規制の問題もありますが、ブルーバードを相当数アメリカに輸出していますので、その1.6ℓエンジンとボア・ストロークが同じL24型で、共通性を多く持たせてあります。
 車体関係は企画当初は迷いがあり、オープンカーかクローズドボディか、あるいはふたり乗りか4人乗りか、といった問題だったのですが、まず、高速道路が発達するにともなって、当然スピードは高くなり走行距離も長くなる。そういう時代になるとコンバーチブルというものが必ずしも快適だといえなくなりつつあります。そういう意味で騒音の問題、気密性、ヒーターおよびクーラーの有効さを含めた居住性の向上、そういったものが要求されてくるだろう、さらに転覆した場合の安全性を考えて、クローズドボディにしました。
 ふたり乗りについては、アメリカでの市場調査の結果、ふたり乗りで十分である、という結論を得ました。
 サスペンションは、フロント、リヤともストラットタイプのものを使いました。フロントは横剛性の強い点、さらにハーシュネスの問題を考えて、前後の剛性をある程度柔らかくできる、ということでストラットタイプにしました。後輪はふたり乗りで十分高さがとれるということからストラットにしました。これはキャンバー変化が少なくできる、アクスルステアをほとんどなくせる、あるいはコーナリングの際のジャッキアップを逆にマイナスに持っていけるということで、安定性の面で自由度があるサスペンションだと思います。
 ステアリングについては、ギヤはローレルと共通で、ただトータルギヤレシオはローレルより鋭敏にすることを考えて、ロック・ツー・ロックを2.59にし、応答を良くしています。
 乗心地もZ432とセドリック系の6気筒エンジンを積んだZとはばね常数を変えて、Zのほうはブルーバードと同じばねのたわみをとり、Z432のほうはそれより固くして、走行性、操縦性の向上をはかっています。そういうことで、基本的にふたつの大きな狙いを持ち、エンジン、サスペンションなどの選択ができ、広くユーザー層を獲得できるように意を用いた、ということが企画上の一番大きな問題だったと思います。
 現在、月2000台の生産能力を持っていまして、そのうち輸出が1500台程度、国内が500台程度を予定しています。
 平 尾 いままでのフェアレディと併行生産ですか。
 水 津 ええ、併行生産です。アメリカの市場調査ですと、オープンカーの要望もありますので、一度に切り替えずに様子を見よう、ということになっています。

量産スポーツカーの典型的スタイル

現代のスポーツカーの典型とも言える“ロングノーズ/カットテール”スタイル。
 平 尾 このスタイルはどういうのかな。
 四 本 最初にスタイルを考えるとき、空力的な外観のクルマにするか、ホットなクルマにするか、あるいはムスタングのようなスペシャルカーにするか、とだいぶ迷ったんです。ムスタング系のもやってみたんですが、結局、本当のスポーツ的なイメージでいこう、ということになりました。
 やはりスポーツカーですから、空力的な感じが命題になるだろうということで、小さな模型をつくって、空力の専門家に見てもらいました。クルマの長さと空力的な点とが必ずしも一致していませんが、イメージ的にそういうふうにしています。非常に苦労したのは、バンパーの高さと前さがりの関係とか、ヘッドランプの高さの法規とかで、自動車の安全上の寸法をどういうふうにカッコ良く消化するか、というのが大きなテーマになりました。
 スポーツカーのように低く、長く見せるものは、法規寸法がかなり障害になりますね。その点で、メルセデスのC111とか、ロータス・ヨーロッパのようなもうひとつ先のクルマから見れば、古いと思われますが、法規上からいって、また量産するといった意味では、このスタイルは現在の量産スポーツカーのひとつの典型だと思います。
 過去の流線型から現在のカットテールとウエッジタイプに変わったスタイリングの流れ、と考えますと、このクルマも一時代の典型というふうに考えています。開発途上ではホットなものもやりましたが、量産でアメリカ輸出ということを考えると、このへんに落ちついてきた、ということだろうと思います。
 樋 口 自動車ショーで見たのは、リヤにスポイラーのようなものがついていて、ちょっとカッコが良かったんですが……。
 四 本 スポイラーはスタイリングの立場から見ましても、スポーツバージョンとしてオプションでつけるのが本当だな、と思います……。それから、このクルマは輸出が本命だということで、車高がゆったりとってありますので、ファストバックに後ろを流すと寸法的にダックステールをつける余裕がないのです。
 亘 理 ドアのガラス部分をもう少し拡げられませんかね。窓がもう少し下がるとのんびり寄りかかれるんですがね。
 平 尾 井戸の中へ入ったようだね。
 四 本 シートが下がりすぎているのかもしれません。このシートは上下の調節が可能になっています。

考えている2+2

 本 誌 2+2というのは……。
 水 津 2+2については、もう少し様子を見て、と思っています。どうも国内で2+2が欲しい、という声がだいぶ出ているようですので、台数がまとまりそうなら、またなんとか考える、ということじゃないかと思いますが。
 本 誌 スタイル的に可能ですか。
 四 本 リヤシートのヘッドクリアランスの問題がありますので、かなり苦労すると思いますが。
 水 津 それとストラットのところがちょうどシートになりますから……。
 田 辺 造形的に検討しました。ただ、いろいろ調べると、ジャガーの2+2なんかでもアメリカではあまり見られないし、日本でも実際に買うときになるとあまり買わない。結局、パーソナリティを尊重したいという要素、ことにアメリカを主たるマーケットと考えると、本当に2+2が売れるか、ということが問題です。また、日本の法規にも適合する2+2というのを、形良くできるか、ということが私どもには問題です。向こうでは無理すれば乗れる、というのが2+2なんですが、こちらではひとり分の幅400mmとかシートの高さも規格どおりでないと許可されない。それで、ちゃんと形をとると相当大きなクルマになってしまうので……。
 本 誌 それでは、エンジンのお話をひとつお願いします。
 榊 原 エンジンの基本的な構造はR380 用のエンジンで、それを生産しやすいこと、クルマに載せやすいということ、整備性、あるいはメンテナンスなどを考えてモデファイしております。計画の段階で、スカイライン2000GT-RとこのZシリーズがほとんど同時でしたので、GT-Rもこれもほとんど同じに作られています。ただ、クルマの性格、搭載上の関係で変えなければならないところもありました。具体的にはオイルパンの形、エアクリーナーの形というような外装まわりが変わっている程度です。
 小 口 ZとこのZ432との値段のひらきがかなりあるんですが、エンジンはどのくらい違うんですか。聞くところによるとホイールディスク(マグネシウムとスチール製)で1本5万円くらい違うんだということなんですが……。
 水 津 エンジンは3倍くらいです。生産量とチューンアップされたのに近いものですから。
 榊 原 ハンドワークの多いエンジンで、割り合い手を入れて造っているわけです。例えば機械工作より上のオーダーの精度で造っている、というようなことをしているので、工数的にかかっています。また、将来ユーザーがチューンしやすい、ということも考えて造っていますから、そのへんがコストアップの要因になっているのではないかと思っています。
 本 誌 生産量は?
 田 辺 1ヵ月に何10台というオーダーです。値段も高いですし、需要もそんなに集中するとは考えていません。

“第2の青春”用

リヤのストラットサスペンションはコーナリングの際に“クルマを沈ませる”。
 本 誌 それでは動力性能の結果をお願いします。
 古 谷 まず0→400mは、50mに4.0秒、100mに6.3秒、200mに9.8秒、400mに15.5秒でした。これを車速と時間の関係で言いますと、40km/hに2.6秒、60km/hに3.8秒、80km/hに6.3秒、100km/hに8.7秒、120km/hに11.7秒、140km/hに15.3秒です。
 追い越し加速のサードの30km/hからは、40km/hに1.9秒、60km/hに4.6秒、80km/hに7.8秒、100km/hに11.0秒、120km/hに15.2秒でした。トップの40km/hからは、50km/hに2.9秒、60km/hに4.9秒、80km/hに9.2秒、100km/hに14.5秒、120km/hに19.6秒でした。
 0→50mが4.0秒というのは、スカイラインGT-Rと同じ値ですが、ノンスリップデフが非常に効いていて、立ち上りが非常に良かったですね。
 本 誌 燃費のほうはどうですか。
 佐 野 まず定地燃費ですが、オーバードライブの値は、40km/hで14km/ℓ、60km/hで15.2km/ℓ、80km/hで14.4km/ℓ、100km/hで12.8km/ℓ、120km/hで11.1km/ℓ、140km/h9.4km/ℓでした。60km/hあたりが一番いいんですが、高速にいっても落ち込みが少ないですね。
 モデル運行燃費は、40km/h指示の場合、平均速度22.1km/hで、7.1km/ℓ、60km/hの場合、平均速度26.2km/hで6.5km/ℓでした。
 本 誌 亘理研の測定結果をどうぞ。
 立 石 まず振動数ですが、ばね上振動数が1.5cps、ばね下が13cpsです。
 騒音は車内騒音が40km/hで65ホーン、60km/hで67ホーン、80km/hで72ホーン、100km/hで75ホーン、120km/hで79ホーン、140km/hで84ホーン、150km/hで84ホーンでした。
 車外騒音は2速の50km/hの定常騒音が74ホーン、50km/hからの加速騒音が81ホーン、暗騒音は46ホーンでした。
 亘 理 このクルマの狙いがどこにあるかによって違ってくるが、いわゆる長距離ドライブを楽しむには、音はちょっと高い感じですね。ただ、サーキットを走るんだったら、音は問題にならないが。それと音のレベルよりところどころピークがあるという感じがあるが、これをなくせば、総体的に高くてもあまり感じないだろうと思う。
 乗心地は固いですね。オプションでなにかあるんですか。
 水 津 エンジンに合わせて、ばね定数を変えているだけです。
 田 辺 グランドツーリングも狙っているわけです。それで、アメリカではどういう人がスポーツカーに乗るんだ、と聞きましたら、若いカップルはもちろん乗るが、そのうちに子どもができ、スポーツカーどころではない。それで大きなステーションワゴンになり、それを卒業して子どもが独立してしまった後でなんに乗るかというと、やっぱり“第2の青春”を謳歌したくなるだろう。その時にスポーツカーがいると。
 その時によけいな者を乗せずにすみ、プライバシーを尊重しうる2シーターに乗る。
 といった意味で、もう一ぺんの青春の際に乗れるクルマを考えてくれ、という要望だったんです(笑)。
 本 誌 今回、操縦安定性の試験はやりませんでしたが、リヤにもストラットタイプのサスペンションを使って、安定性が良い、ということですが。
 小 口 ストラットの位置がこのクルマは車軸より前にあるんですが、車軸の上にもってくるか、車軸の後ろにもってくるかで操安性はどう違いますかね。
 平 尾 一概に言えないだろうな。
 田 辺 ストラットをあまり上につき出したくなかった、というのが本旨だったので……操安性には関係ありません。
 水 津 デフの高さとストラット側のリンクの角度の問題など、そのへんのジオメトリーでどこが一番キャンバー変化を少なくできるか、ということでやりましたので……。カーブの時にクルマが沈むような性格をもたせてあるんです。

抜群のコーナリング

つくべきものが全部ついているブレーキは、踏力も軽く、効きは抜群だ。
 岡 崎 村山のテストコースで一応出せるだけ出して、速度計では200km/hまで出してみたんですが、この速度で左右に振っても収れんはいいし、かなり落ちついて乗れたと思います。ただ、SP、SR系のフェアレディのいわゆるスポーツカーとしてのシャープな操縦特性を考えると、このZ系の操安特性は、比率にしてみると安定性が6で、操縦性が4ぐらいの割合にとっているのではないかと思いました。
 クルマの性格から考えると、逆に良かったのではないかと思いますが。
 田 辺 SRのころはレース人口を多くしようと、あまり手をかけないで草レースぐらいはできるクルマ、というふうに考えておりました。その後、アメリカや国内でもそういうふうに使われてきたわけですが、アメリカの市場調査の結果、20%ぐらいは女性が使っているんです。それで非常に固い、ということと、なまじっか固くしても、「帯に短しタスキに長し」で、レースにはもっとハードでなければダメだ、ということになってきました。しかし、それ以上固くすると一般市場性がない、ということから固くするなどということはやめて、むしろスペシャルカーとしてソフトにする、ということに努めました。
 しかし、まだ発売にはなっていませんが、“432R”はずっとスプリングの固いものを、オプションとして考えております。
 岡 崎 高速でのステアリングの応答性は良い、と思いましたが、なにか弾性が感じられる。それがちょっと不愉快な気がしたんですが……。
 田 辺 タイヤのせいもあるが、と思いますが、レース用にした場合は、ステアリングのリンクに入っているゴムの剛性を上げることもありますので、そういったところで柔らかい感じを与えるのかもしれませんね。
 亘 理 サスペンションの材料剛性なんかを適当に選ぶと、もう少しいいのができるんじゃないかね。
 水 津 もう少し上を固くしてもいいのですが、ハーシュネスのところにひびいて少し具合がわるくなるので、少し柔らかくしているんです。
 田 辺 432Rのほうのスプリングは、フロントが標準の1.8kg/mmに対し5.5kg/mm、リヤが2.07kg/mmに対し5.57kg/mm。ダンパーも固くなっていて、伸び側で標準が35kgに対し130kg、圧側が20kgに対し90kg。リヤは伸び側が標準80kgに対し120kg、圧側は20kgに対し85kgと非常に固いものを使っています。これと横剛性の高いタイヤと組合わせた場合は、操縦性の良いサーキット向きになるわけです。
 岡 崎 432の場合、エンジンがかなり重いんですが、そのあたりで、レースなどの場合アンダーが強すぎる、というようなことはないですか。
 田 辺 スタビライザーによって多少は変わると思いますが、多少アンダー気味になると思います。
 このクルマに手を加えずに富士スピードウェイを走っても、実はうちのレースドライバーが走ったんですが、チューンアップしたフェアレディ(SR311)と比べて、直線ではちょっと遅いですが、コーナリングは非常にラクで、コーナーでぐいぐい抜けると言っていますね。

高くとった室内高

 本 誌 それでは樋口研のデータをお願いします。
 音 田 寸法の数字はトヨタ2000GTとほとんど似たもので、全長がいくらか短くなって、全高がやや高く全幅がやや広い、という程度です。
 室内では、アメリカのマーケットを中心に考えられた、ということですが、室内の高さも1045mmと高くとっています。シートは身体をよくホールドし、すっぽりと沈みこむ感じです。
 山 本 マグネシウムのホイールはダイキャストですか。
 田 辺 いいえ、鋳物です。数が少ないものですから。
 山 本 重さは?
 田 辺 スチールの約2/3です。
 岡 崎 実は、私はやせていますけど、身長は普通だと思うんですが、シートが向こうに合わせてあるせいか、腰のあたりをサポートするポイントとか、シートバックのアールとか形自体はいいんですが、いざ座ってみるとブカブカといいますか、非常にゆるいんです。ですから、国内にもある程度以上の台数が出たら、われわれにもぴったりフィットするシートが欲しいな、と思ったんですが……(笑)。
 亘 理 ぼくにはぴったりだった(笑)。
 ただ、ヘッドレストはバックするときに邪魔なんで、引っこむ形式のほうがいいと思うんだけど。

繰りかえされた衝突試験

 本 誌 安全に関して、樋口先生お願いします。
 樋 口 安全の採点基準はセダンを中心に考えていますから、こういうスポーツ的なクルマは個所によっては点数が低くなっています。例えば、バンパーはもっと幅広く、丈夫そうなら点数がもっと上がります。目で見た安全ですので、ブローバイ還元装置がないとか、また実際にぶつけてみるわけではないので、わからないですが、見て危なそうなところは、具体的にはフロントのグリルあたり、とんがっているので1点ぐらい下がっています。ほかはみな普通以上で、総合点は100 点満点で89点。2ℓクラスのセダンの92 ~ 93点をやや下まわる、という結果ですが。
 田 辺 このクルマはだいぶぶつけています。試作、生産試作をまぜて60 台ぐらいつぶしています。それとブローバイの件は、だいぶ神経をつかったところで、かなりやったところなんです。
 石 川 実際に衝突した場合、30マイル(48km/h)衝突ではハンドルはどのくらい突き出すものなんでしょうかね。
 田 辺 ノーズを長くした、ということはもちろん空気抵抗の問題がありますけど、安全の面ではエネルギー吸収の役目ももたせてあり、むしろ剛性もそんなに強くしていません。
 ステアリングシャフトも途中でくい違いにしてあります。
 樋 口 ハンドルもエネルギー吸収式になっているんですね。
 田 辺 ちょうちん型の縮む形式のものです。
 本 誌 船研のデータを……。
 石 川 重量関係はスペアタイヤ、工具付、ガソリンは80%ぐらい(満タンで60ℓ)で、1075kgでした。配分は前輪が557kg、後輪が518kgで、52:48になっています。ふたり乗った場合で、50:50 ぐらいの割合です。前輪の右側が左側より35kgほど重いのですが、輸出する場合は左ハンドルになるので、その関係だろうと思います。
 アライメント関係は、トーイン、キャンバーがかなり強くついていますが、ふたり乗りの状態では減ってきます。リヤもトーインが強くついていましたがは、キャンバーはほとんどゼロです。
 ブレーキはフロントがディスク、リヤがリーディングトレーリングで、2系統式になっていて、パワーサーボがついています。さらにリヤには油圧のレギュレーターがついている、というふうにつくべきものが全部ついている、といったブレーキです。油圧のレギュレーターは踏力で10kgぐらいのところ、減速度で0.3G程度のところで作動するようになっています。サーボの休止点は踏力20~25kg、減速度0.5G程度のところにあったようです。したがって、0.6G踏力はやや大きくて、33kgという数字になっています。路上ではそれより軽くなって、0.6G踏力は26kg程度でした。ブレーキ力の配分は踏力33kgで66:34でした。左右のアンバランスは、前輪にディスクを使っているのに、ちょっとあったようです。リヤは良く揃っていました。
 駐車ブレーキは機械式の後2輪制御で、左右のブレーキ力は良く揃っています。総重量の20%のブレーキ力を得るのに要する力は27kgです。ラチェットも効果が良くて、30kgの力で1/5勾配のところに駐車することができる、という数字になっています。各部の操作力はチェンジレバーがだいたい2kgで軽い。クラッチは切るのに12kg、継ぎが8.5kgで普通の値です。アクセルは50km/hコンスタントで0.5kg、急加速で3kgぐらいです。
 岡 崎 ブレーキの効き自体は非常にいいですね。130~140km/hぐらいから100km/hに下げるのに、ほんの瞬間と言っていいくらいですね。
 石 川 駐車ブレーキがオートアジャスト付というふうになっていたんですが。
 田 辺 サイドを引くとリヤのブレーキが自動調整される、という形式なんです。
 本 誌 ポルシェシンクロのミッションはいかがですか。
 小 口 私は好きですけど、人によっては好まない方もいますね。節度が欲しいと。
 亘 理 レバーが少し長すぎないか。上を持つには。ただ、短くすると重くなるが。
 田 辺 しかし、ポルシェシンクロは使っていると柔らかくなってきますから。
 本 誌 ZシリーズにSRの4気筒エンジンを載せる、ということは考えられなかったのですか。
 水 津 ホットであるばかりでなく、乗心地の面でも静かにしようという企画で、始めは4気筒だったのですが、途中から6気筒にしよう、ということになりました。今のところ4気筒を載せようとは考えていません。
 本 誌 視野のほうをお願いします。
 平 田 シートを中間にしたときの視点の高さは106.9cm、フロントガラスまでの距離が56.5cm、ルームミラーまでが55.5cmで測定しました。そのときの前窓の可視範囲は左右合計で90.5°、上下方向は26.5°。後窓は左右合計で46.0°、上下方向は13°、ワイパーの払拭範囲は74.5°でした。それで、視点を含む水平面内のデッドアングルは全体で56°です。立体角で表すと視点から前側が1.08ステラジアン、内前窓が0.641ステラジアン、ワイパーの払拭範囲は0.46ステラジアンで64.9%を払拭しています。後方の可視範囲は11.7ステラジアン、この種のクルマとしては当然ですが、全体の視野は平均よりやや下目の値です。
 本 誌 それではどうもありがとうございました。

フェアレディZ432 主要諸元
 エンジン:水冷直列6気筒、ボア82mmストローク62.8mm、最大トルク18.0kgm/5600rpm、最高出力160ps/7000rpm、総排気量1989cc。
 変速機:前進5段フルシンクロ、後退1段フロアシフト、変速比1速2.957、2速1.858、3速1.311、4速1.000、5速0.852、後退2.922
 サスペンション:全輪独立懸架ストラット式
 ステアリング:ラックアンドピニオン式、比16:4
 ブレーキ:(前)ディスク式、(後)リーディングトレーリング式
 タイヤ:6.95Hー14ー4PR
 寸法・重量:全長4115mm、全幅1630mm、全高1290mm、ホイールベース2305mm、トレッド(前)1355mm、(後)1345mm、車重1040kg、燃料タンク60ℓ
 性能:最高速度210km/h、登坂能力0.420、最小回転半径4.8m

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