マツダ Mazda3で初搭載のスカイアクティブ-Xを実現させた技術を考察する。 マツダSKYACTIV-X:常識破りのブレークスルー。ガソリンエンジンで圧縮比世界最高16.3、燃料噴射圧世界最高700bar
- 2019/07/15
- Motor Fan illustrated編集部
今秋からいよいよ日本でも受注、そして販売がスタートするSKYACTIV-Xエンジン。国内の詳細のスペックはまだ発表されていないが、欧州仕様の試乗会は行なわれた。発表仕様から、技術情報を読み取ってみる。
注目のSKYACTIV-Xは、ひと言でいえば、ガソリンとディーゼルの両方の長所を兼ね備えたエンジンだ。
オットーサイクルの理論熱効率の式を見ればわかるように、効率を高めるためには、
1:圧縮比を上げる
2:比熱比を上げる
マツダは第1ステップ(SKYACTIV-G)で圧縮比を上げた。当時(そして現在も)世界最高の圧縮比14.0を実現したのだ。今回は、第2ステップで「比熱比」を上げたわけだ。
といっても、圧縮比も14.0から16.3と、大きく上がっている。もちろん世界最高の圧縮比で、比較するならガソリンエンジンではなくディーゼルということになる。
ちなみに、BMWのディーゼル、B47型(2.0ℓ直4)、B57型(3.0ℓ直6)で16.5だから、まさに最新ディーゼル並みの圧縮比と言える。
さて、比熱比を上げるには、どうすればよいか? その手段が「リーンバーン」である。比熱比の低い燃料と比熱比の高い空気を混ぜて混合気を作るときに、燃料を少なく(=空気を多く)すれば比熱比は上がる。
ご存知の通り、ガソリンエンジンの理論空燃費は重量比で
ガソリン1対空気14.7だ。
これをストイキオメトリー(ストイキ)という。SKYACTIV-Xでは、現行のSKYACTIV-Gの2倍の空気を入れているという。燃料が薄ければ燃焼温度も下がる。すると、シリンダーの内壁に奪われる熱、つまり冷却損失(よく「冷損」とも言われる)も下がる。冷却損失は温度差に比例するから、燃焼温度が下がれば奪われる熱も減る。
上のスライドにあるように、リーンバーンにすると
比熱比が高まり、冷却損失は減り、ポンプ損失も減るといういいことがある。
じゃあ、なぜ、いままでそうしてこなかったか?
それは、燃料が薄くて火が着かなかったからだ。通常の火花点火(SI=スパーク・イグニッション)では火炎伝播ができずに燃えないのだ。そこで、考えられるのが、ガソリンもディーゼルみたいに(プラグなし=火花点火なし)圧縮着火しようという発想だ。
薄い(リーン)混合気をギューっと圧縮して(高圧縮)温度を上げて自然に自己着火(圧縮着火=CI=Compression Ignition)させればいいわけだ。これがいわゆるHCCI(予混合圧縮着火)だ。
多くの研究者、自動車メーカーがHCCIに挑戦しているが、モノにできないのは、HCCIの温度領域が狭く、制御が困難だからである。
マツダ技術陣は、それをSPCCI(SPark Controlled Compression Ignition)という方式で解を得たのだ。圧縮着火ならスパークプラグは不要。でも、圧縮着火ができない領域ではスパークプラグは必要。その切り替えが従来のHCCIの常識であり、最大の課題だった。マツダは、「圧縮着火ではスパークプラグは不要」という常識を疑うというブレークスルーを果たした。
マツダは、純粋なHCCIは追わずに全域スパークプラグ点火制御にしたことでまったく違い世界を創り出したのだ。
火花点火で生じる局部的な燃焼による圧縮効果を使って必要な燃焼室内の温度と圧力を制御し、圧縮着火するのだ。幾何学的圧縮比を圧縮着火(CI)開始寸前まで高めておいて、圧縮着火を誘発させるために火花点火(SI)による膨張火炎球によってもうひと押し圧縮する。そのあと一押しをスパークプラグの点火タイミングで制御できるため、圧縮着火が難しい領域でもシームレスに火花点火に燃焼を移行できるわけだ。
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