テキサス・インスツルメンツ:車載インフォテインメントやクラスタのシステムを熱から保護する方法
- 2019/12/04
- Motor Fan illustrated編集部
上の写真に示すようなさまざまなインフォテインメントやクラスタのアプリケーションには、それぞれに熱に関する問題がある。テキサス・インスツルメンツには、それらの問題に対する温度センサやサーミスタ、温度スイッチを活用した解決策がある。
次世代車に搭載されるインフォテインメント・システムやクラスタ・システムは、ますます複雑さを増している。しかし、最近の車は、電化された部分が増えたことで、消費するエネルギーも増大し、発生する熱も大きくなっている。それでなくても車のダッシュボードは、太陽光の熱や車内の熱による高温にさらされている。
インフォテインメント・システムやクラスタ・システムによる発熱量が増加していることで、自動車メーカーは新たな熱管理の課題に対処する必要に迫られている。顧客を惹きつけるために機能豊富で快適な運転体験を提供しながら、これらのシステムの重要な機能を安全かつ高い信頼性で確実に動作させることを、限られた予算内ですべて実現する必要がある。
車載ヘッド・ユニットの高負荷マイクロプロセッサを熱から保護する
車載ヘッド・ユニットは、インフォテインメント・システムのメイン・コントロール・パネルとなっており、各種のボタンを備え、これまでは車のあちこちに散在していた多種多様な機能を集約している。このような集約化により、ヘッド・ユニットは、アプリケーション・プロセッサによる重要な処理パワーを備えたインフォテインメントの頭脳となる。しかし、アプリケーション・プロセッサは、処理負荷が増すとすぐに高熱になる傾向がある。
熱の発生と高温リスクのほとんどは、これらのマイクロプロセッサのコアから来ている。最も信頼性のある測定温度を得るには、サブストレート・サーマル・トランジスタやプロセッサのダイ内のダイオードによりP-N接合を介してリモートで感知するのが一般的だ。
このリモート・センシングのためにTIが設計した『TMP451-Q1』では、動作時周囲温度が-40°C~125°C、標準精度が±1°Cとなっており、リモート・チャネル(プロセッサ・コア)またはローカル(温度センサの設置場所)のいずれかに対応し、ふたつの温度測定値をシステムに伝える。電力消費量と、その結果として測定精度に影響する自己発熱を抑えるために、『TMP451-Q1』は1.7V~3.6Vの低電圧電源で動作し、動作時消費電流が27µAと低い一方、毎秒0.0625回の速度で変換を行う。
『TMP451-Q1』は、8ピンで2mm×2mmと超小型で薄型のSON(Small Outline No-lead)パッケージなので、スペースに制約のあるヘッド・ユニットのPCB基板に非常に適している。2.5mm×2.5mmのウェッタブル・フランク・パッケージもあり、電子機器基板の半田付け確認を迅速に行うために自動車工場で採用されている自動光学検査(AOI)プロセスに適合する。
このデバイスには、温度が規定の閾値を超えるとシステムに割り込んで動作を調整するアラート機能がある。THERMとALERT/THERM2のふたつのアラート機能があり、より高精度にシステムの熱管理を行える。
下図に示すように、警告として85°Cに設定されたひとつ目の割り込み(THERM2)は、ファンや冷却システムを起動したり、マイクロプロセッサの性能を落としたりすることで、過熱のリスクを抑える。110°Cに設定されたふたつ目の割り込み(THERM)では、システムを実際にシャットダウンして、ダメージを受けないように保護する。例えば、シャットダウンしてシステム・リセットを開始し、THERMヒステリシスのレベルより温度が下がるまで待機するよう指示することができる。
再構成可能なクラスタでシステム温度を正確に計測
車の計器クラスタは、運転手の意思決定に関わる重要な情報、例えば速度、回転数、燃料計やオイル温度計などを表示する。
しかし近年は、ヘッド・ユニットのデジタル化と同様に、計器クラスタも再構成可能なクラスタへとアップグレードされつつある。これらの再構成可能なクラスタは、個人に合わせて、カーナビや情報媒体、連絡手段などを表示する。このためにはマイクロプロセッサの働きが非常に重要だが、処理要求が増えると必然的にマイクロプロセッサの発熱も増加する。おまけに、ハンドルの後ろ側はスペースが限られていることから通常は換気がないため、熱問題の原因になる。
適切な温度測定値を得るために、超小型の温度センサをマイクロプロセッサの近くに配置することが可能で、これにより測定精度が上がる。測定値が高精度で得られると、熱設計限界近くまでシステムの性能を上げることができたり、低スペックのマイクロプロセッサを採用してシステムのコストを抑えたりすることが可能になる。
実際には、ほとんどのプロセッサには組み込みの温度センサがあるが、ウェハーごとやロットの違いによるばらつきのため、精度は±4°Cにしかならない。測定値にこのような変動があると、測定値の精度が±1°Cの場合よりも安全マージンをかなり取る必要がある。このケースでは、熱設計限界に近づきすぎないように、マイクロプロセッサの性能に3°Cも余計な余裕を取ることになる(下図参照)。
『TMP235-Q1』は、-40°C~150°Cの動作温度範囲で±0.5°Cの精度を誇る(グレード0)。このデバイスは、フットプリントが非常に小さく(2.00mm×1.25mm、図4参照)、低消費電力。
システムとUSBチャージャを熱によるダメージから保護
最新のUSBチャージャは、USB Type Aだけでなく、60Wから100Wの電力供給能力を持つこともあるUSB Type-Cもサポートする。ポートが複数ある場合はワット数も複数倍になるため、異常なほど発熱し、非常に危険な事態になることもある。USBコントローラICには、一般にプログラマブル・ケーブル・ドループ補償があるので、高負荷時に最適な電流と電圧で携帯機器を充電することができる。インテリジェントな熱管理用にサーミスタを実装することで、USBコントローラに温度状態を知らせ、温度を下げるために出力電流限度を低いレベルに変更させることができる。
例えば、『TMP61-Q1』サーミスタは、正の熱係数を持ち、1mm×0.5mmの超小型パッケージでリニア出力を供給する。
温度スイッチもまた、抵抗、電圧または出荷時設定でセットされた一定の閾値を超えた温度になるとUSBコントローラICにアラートを送ることで、過熱からシステムを保護。より直接的に迅速な決定が下されるように、このアラートはマイコンをバイパスできる。温度閾値によっては、温度センサよりも低い温度でマイコンが故障する可能性もあるため、乗員の安全を優先し、熱暴走を防ぐために、重要性の低いこの機能をシャットダウンできる保護システムが必要だ。さらに、温度スイッチの使用は、ディスクリート実装(下図)に比べると、閾値を検出するコンパレータや電圧リファレンスのような余分な回路が不要になる分、コスト的に有利である。
抵抗でプログラム可能な温度スイッチ『TMP390-Q1』は、-40°C~+125°Cの動作温度範囲をカバーし、最高精度が±3.0°C。チャネルをふたつ備え、過度の高温と低温をそれぞれ同時に検出する(下図参照)。『TMP390-Q1』は、電源電圧が1.62~5.5V、25°C時の消費電流が0.5µAであることから、サーミスタに代わる低消費電力の代替品にもなる。この温度スイッチにより、熱保護機能の実装が非常にシンプルになると同時に、チップひとつで高温と低温両方の保護を備えているため、集積度が最も高くなる。
インフォテインメント・システムの温度モニタリングや熱保護に対応する方法はいくつもあり、考慮すべき要素は他にもたくさんある。車の機能や搭載されるディスプレイの数が増え、それによる処理要求が増大する中、事故防止のためには熱に関する安全性を保障することが重要である。
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