100%バイオ由来の新素材(改質ポリ乳酸コンパウンド)Plaxの展開を発表 TBM:高機能なバイオプラスチックの改質剤を開発するBioworksをグループ会社化
- 2018/12/07
- Motor Fan illustrated編集部
石灰石を主原料とし、原料に水や木材パルプを使用しない紙の代替や石油由来原料の使用量を抑えたプラスチックの代替となる新素材「LIMEX(ライメックス)」を開発・製造・販売するTBMは、高機能なバイオプラスチックの改質剤を開発するBioworksが発行する株式を取得し、グループ会社化した。
持続可能な開発目標(SDGs)やプラスチック汚染問題の解決に向けて、企業の環境問題への対応が求められている。2018年に入り、海外で使い捨てプラスチックを規制する動きが強まり、プラスチックの代替素材に関するニーズはより高まっている。日本でも年内に大枠が取りまとめられる「プラスチック資源循環戦略」の素案において、植物などを原料にした環境に優しいバイオ(非石油)素材の国内利用を、2030年までに13年度の7万トンから約200万トンに拡大する数値目標が明記された。
TBMは、それらのソリューションとなり得るバイオ由来の生分解性樹脂の需要の拡大を見込み、今年の5月に開催されたBrussels SDG Summit 2018(主催:CSRヨーロッパ)のパートナーとなり、主原料の石灰石とバイオ由来の生分解性樹脂から構成される「生分解性LIMEX」を発表した。TBMでは、使い捨てプラスチックの代替製品を作る際、LIMEXにマイノリティ成分として含まれる石油由来樹脂をバイオ由来の生分解性の樹脂に置き換えることを、重要な開発テーマとして位置付けている。
■ グループ会社化の目的
TBM では、100%非石油由来で、且つ自然環境中で生分解し、万が一流出しても環境に無害な生分解性LIMEX の開発を目指している。その第一歩として、100%バイオ由来であり、コンポストで生分解可能なPLA 樹脂に注目した。
しかし、PLA 樹脂は硬くて脆い、耐熱性が低い、成型が難しいといった課題があり、そのままではPLA 樹脂に石灰石(炭酸カルシウム)を高充填して製品化できない。そこで、バイオ由来で且つ生分解性の改質剤技術を持つバイオワークスと共に開発に取り組んできた。その結果、PLA 樹脂に石灰石を高充填し、シートや成形品を開発する目途がついてきた。
バイオワークスは、PLA 樹脂の改質方法や耐熱性向上の特許を日米欧で登録済であり、且つ実用化している。TBM は生分解性LIMEX の開発を加速し、スピーディに上市すると共に、バイオワークスの改質剤を用いた100%バイオ由来で生分解可能なPLA 樹脂・製品の展開のために、バイオワークスに対して資本参加することにした。
■ Plax(改質ポリ乳酸コンパウンド)について
バイオワークスは、基材として生分解性(コンポスト環境下)とカーボンニュートラルというふたつの特性を持つ、PLA 樹脂を使用している。PLA 樹脂はそのままでは成形性や耐熱性などに課題があり、石油由来の樹脂を混ぜなければ製品化が困難だったが、バイオワークスでは100%バイオ由来のPLA 樹脂の改質剤を開発し、石油由来のプラスチックと同等の性能を持つバイオプラスチック、Plax(改質ポリ乳酸コンパウンド)の開発に成功した。100%バイオ由来のPlax は、耐熱性、強度、柔軟性等において、他に類を見ない高機能な素材だ。
Plaxは全く新しい結晶化促進機構により、結晶化速度を大幅に向上させることに成功した。汎用樹脂と同様の成形サイクルでの加工が可能。また水温調節可能な100℃以下の金型での成形ができるため、製造現場を選ばない。Plaxを幅広く展開するため、以下の用途でのコンパウンドを提供していく。
・射出成形⽤コンパウンド
用途:自動車・OA機器・家電・日用品・雑貨など
耐熱性・耐衝撃性・柔軟性・難燃性・耐久性などあらゆるニーズに対応した成形用材料を提供。
・ブロー成形⽤コンパウンド
用途:⾃動⾞(エアロパーツ等)・ボトル・マネキン
破裂や白化することなく透明性を保ったまま耐熱ボトルをインジェクションブロー成形することが可能。ドローダウンすることなく大型のダイレクトブロー成形も行える。
・繊維⽤コンパウンド
用途:自然素材繊維製品
強度・伸度ともにポリエステルと同等レベルを有し、伸縮復元はポリエステルの約1/10。ナイロン樹脂並みの生産性と、製造工程における安定した糸の細さを保証する。弱酸性で抗菌性を備えた肌にも優しい繊維。
・フィルム・シート⽤コンパウンド
用途:弁当容器・コーヒーカップ蓋
食品容器の上蓋等に使用されるPET・OPS同等の透明性を維持しながら、より高い耐熱性(140℃)を実現している。低温での耐衝撃性も高く、PPの置換も可能。また、バイオ由来の樹脂であるため環境ホルモンへの懸念もない。
■ 今後の事業シナジーの創出に向けて
石灰石にPlaxを混ぜ合わせた生分解性LIMEXは、バイオ由来の生分解性樹脂であるPLA樹脂の硬さ・脆さ、成型生、耐熱等の課題を石油由来樹脂に頼らずに解決することが可能。また、これまで生分解性樹脂はコスト高であったため普及しなかったが、生分解性樹脂の中では比較的安価なPLA樹脂を使用し、且つ安価な石灰石(炭酸カルシウム)を50%以上配合することで、さらなるコストダウンを実現できる。
TBMとバイオワークスは、今後、生分解性LIMEXを用いた包装材、真空成形品(カップ、食品トレー等)を開発し、19年度早期のローンチを目指す。また中長期的には、コンポストで生分解可能なPLA樹脂ベースの生分解性LIMEXを超えて、土壌や海洋中でも生分解する生分解性LIMEXの開発を進めていく。
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