【実走燃費は19.8km/L】 4気筒より荒々しい。でも普段使いにちょうど良い。MT-09は日常を楽しむ天才だ。/ヤマハ・MT-09
- 2019/07/18
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MotorFan編集部 近田 茂
初代モデルは2014年4月にデビュー。ツインカム狭角バルブの3気筒エンジンは電子制御スロットル(YCC-T)を搭載。デザインもなかなか新鮮だったが、何よりもインパクトが大きかったのは、車重188kgという軽量設計と849,960円という低価格だった。2017年1月のマイナーチェンジを経て価格は100万円ちょいとなったが、その魅力的乗り味は期待を裏切らない。今回の試乗車は2019年4月1日にカラーバリエーションが一新された最新モデルだ。
REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
ヤマハ・MT-09……1,004,400円
ヤマハ・MT-09 SP……1,112,400円
MT-09は、ヤマハのライナップに革新をもたらした実に重要なバイクである。初代モデルは2014年2月に発表、4月10日に発売。後に投入された2気筒エンジンのMT-07と共に扱いの軽さと低価格設定で大きな注目を集めた。世界的デザイン賞である「iFデザインアワード」を受賞する話題も相まって、バイクに背を向け始めていたユーザーの目を再び向き直させる原動力となったのである。
モーターサイクルーショー等の主要展示場では、観客の誰もが安全に固定されたバイクに跨がって触れられる出展内容が当たり前の中、MTシリーズの特徴訴求を狙うヤマハは、あえてバイクを固定せずに出展。専属のサポート係を据えた特設コーナーを設け、観客はサイドスタンドで立てられたバイクに跨がり、実際に車体を引き起こして、その驚くべき扱いの軽さや足つき性をチェックできたのである。
そして何よりもお手頃な価格に大きなインパクトがあった。MT-07に至っては当初80万円を切る設定だったのだから誰もがビックリである。2014年11月にヤマハはMT系をベースにプラットフォーム戦略の推進を表明、MT-09 TRACERを皮切りにバリエーション展開の充実に着手。沈滞ムードの業界に少なからず明るい兆しを提供してくれた。
そんなMT-09は新開発された3気筒の845ccエンジンを搭載。ヤマハはかつてGX750(1976年発売)という3気筒シャフトドライブのバイクを持っていたが、当時は4気筒に憧れた時代だっただけに、残念ながら商業的な成功にはつながらなかった。ただツアラーとしての基本性能と快適性は高く評価されていたと記憶している。
それから約40年のブランクを経て再び投入されたヤマハの3気筒シリーズは、多くの人の期待を裏切らない3気筒ならではの乗り味と実用域で美味しい出力特性の発揮に侮れない人気を集めたのである。
エンジンの美味しい所が気分良く楽しめる。
メーカーのキャッチコピーを引用すると“もっと自由に、ずっと自在に。”とある。マッシブなプロポーションを持つ外観デザインはいわゆるネイキッドだが、どこかスーパーモタードのエッセンスが混じる感じでストリートファイター的な雰囲気がある。目つきも鋭く、各部品構成はシンプルで、ロードスポーツモデルとしての新しい標準形が構築された。
フロント(ステアリング)回りにはそれなりの質量を感じるものの、車体の引き起しや取りまわす感覚はミドルサイズ並みの気軽さ。いわゆる重量級バイクとは異なる気楽なムードが実に親しみやすい。
エンジンを始動すると4気筒よりはやや荒々しく連続した太い排気音が印象的。クランクケース幅は狭く、前後長も詰めた合理的デザインとダイヤモンドフレームにリジッドマウントされる方式により、マスの集中化と高剛性化への寄与も徹底されている。
ボア・ストロークは78×59mmというショートストロークタイプで、軽めのクランクマスと相まって、実に小気味よい吹き上がり性能を発揮する。それでいていつでも遅滞無く太いトルク感でレスポンスするリニアな感覚が魅力的。排気量とのバランスが絶妙なのである。
発進、ノロノロ走行~全開加速に至るまで実にダイナミック。TCC-T(ヤマハ電子制御スロットル)は、まさに生き生きと豪快な出力特性を発揮する。右手の操作次第でいつでも期待以上の図太い底力を発揮し、パンチの効いた加速性能は一般公道でも十分に気持ちが良い。つまり出力特性の美味しいところが普段でも楽しめる。それが魅力的なのだ。
操縦性もなかなか鋭いレスポンスを発揮しS時コーナーの切り返しも意のままに決められる。ステアリング回りの質量はカチっとした安定感にも貢献。ツーリングやワイディングでの快走まで自由自在に楽しめる。
路面の悪い場所では、衝撃に対してやや慌てた感じの作動性を示す前後サスペンションは、乗り心地という意味で少しだけ気にはなったが、その点にこだわる(予算に余裕がある)ならフロントにKYB製専用フォーク、リヤにオーリンズ製サスペンションを標準採用するSP(スペシャル)仕様という選択肢もある。
ちなみにローギヤでエンジンを5000rpm回した時のスピードは48km/h。6速トップ100km/hクルージング時のエンジン回転数は約4000rpmだった。また実走燃費は主に市街地や郊外の一般道で計測。高速ロング等、ツーリング利用なら20km/Lを越すデータを記録することは間違いないだろう。
試乗後の正直な感想は、やはりエンジンの美味しい所を感じていられる時間が長い事。それが普段使いでも心地よいMT-09の強みなのだと確信できた。
⚫️足つきチェック(ライダー身長170cm)
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