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現ホンダCB750フォアが500kmツーリングに持っていくものは意外と少ない。│旧車探訪記①-3

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1969年から発売が始まったCB750フォアは、どんなバイクだったのか。当企画の目的はその背景を探ることなのだが、歴史解説と試乗だけでは物足りなさを感じる人もいるだろう。そこで今回は、試乗&撮影用の1972年型K2を貸してくれた、CB750ドリームオーナーズクラブ(http://www.amy.hi-ho.ne.jp/club-750-dream/)西東京支部長の小川曻治さんに、現役時代と現代のCB750フォア事情を聞いてみることにした。

REPORT&PHOTO●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

1956年生まれの小川曻治さんはCB750フォアの現役時代の現状をよく知るライダーで、取材時の年齢は63歳。1972年に新車で購入したK2は約3年で手放したものの、現在の愛車であるK2は2000年から乗り続けているので、CB750フォアの合計所有年数は23年。

 当企画の試乗&撮影のために1972年型K2を貸してくれた、CB750ドリームオーナーズクラブ・西東京支部長の小川曻治さんは、現役時代のCB750フォア事情をよく知るライダーである。1968年の東京モーターショーでCB750フォアが初公開されたとき、小川さんはまだ12歳だったものの、量産初の並列4気筒車に衝撃を受け、“16歳になったら、すぐに免許を取って、すぐに乗る!”という決意したそうだ。

「俺が10代の頃は、原付なら無免許で近所を走っても大問題にならなかったし、16歳でいきなり排気量無制限の免許が簡単に取れたわけだから、今になってみると、いい時代だったと思うよ。K2を買う前の出来事でよく覚えているのは、誕生日までの日めくりカレンダーを自作したこと。2輪免許を取ってCB750フォアに乗る日が、とにかく、待ち遠しくて仕方なかった」

 そう語る小川さんではあるけれど、1970年代初頭の大卒初任給が5万円前後だったのに対して、CB750フォアの新車価格は38万5000円である。となると小川さんのご家庭は、かなり裕福だったのだろうか。

「裕福とまではいかなけど……。ウチの親父は土建屋をやっていて、あの頃はまだ高度成長期の余韻が残っていたから、それなりの収入はあったんじゃないかな。だからK2の代金は親父が出してくれた。でもそれって、当時は珍しいことじゃなかったんだよ。俺の高校時代の同級生には、CB750フォアに乗っているヤツがいっぱいいたからね。それにK2が登場した1972年になると、もうK0とK1の中古がそこらじゅうにゴロゴロしていて、解体屋では5~6万円で売っていた。K0が5~6万円なんて、今では絶対にあり得ない話だけど、当時のK0は単なる古いバイクっていう扱いだったんだ」

 16歳でバイク&CB750フォアデビューを飾った小川さんは、当時の多くの若者がそうだったように、18歳からは4輪趣味に没頭。以後はほぼ20年に渡って、バイクとは無縁の生活を送ることになったものの、40代に入るとリターンを決意し、まずはゼファー750やCB1300SB(スーパーボルドール)などを購入。そして今からちょうど20年前に、若き日の愛車と同年式で同じ色の1972年型K2を手に入れた。

「見た目はまあまあキレイで、部品は揃っていたけど、生産から30年近くが経過したバイクだけあって、やっぱり当初の調子はよくなかった。だから最初の1年半はひたすらレストア。自分でできるところは自分で、難しいところはモト来夢さんにお願いして、確かトータルでの費用は50万円くらいかかったんじゃないかな」

 2000年代前半の小川さんのガレージには、新旧並列4気筒CBが並び、一時は用途に応じて使い分けていたと言う。とはいえ、レストアが一段落してからはK2ばかりに乗ることとなり、SBは知人に売却した。

「乗る機会が激減したから手放したけど、白バイが採用するだけあって、CB1300SBはすごくいいバイクだったよ。何をどうやっても、よく走ってくれるから。その一方でK2は、整備がきちんと行き届いて、乗り手がいろいろ考えないと、気持ちよく走れない。でも俺にとってはそのほうが楽しいんだ。K2とSBを比べた場合、自分にとって一番大きな違いは、車格と重さかな。俺にとってSBの車格は大きすぎるし、重心が高いせいか、グラッと来たら持ちこたえられない。CB750フォアは当時としてはデカいバイクだったけど、SBと比べたら車格が小さいし、重心は意外に低い。だから60代になった今でも普通に乗れる。それに加えて、気化器の違いも大きい要素だと思う。もちろん、性能的に優れているのは、どんな状況でも扱いやすいSBのインジェクション。でもキャブレターのK2に乗っていると、スロットルの開閉タイミングをシビアに考える必要があって、やっぱり俺はそのほうが楽しい。バイクに乗せられているんじゃなくて、自分の意思でバイクを操っている感じがするからさ」

 現在は西東京支部の支部長を務める小川さんだが、今から15年以上前に、初めてCB750ドリームオーナーズクラブのツーリングに参加したときは、走行距離の多さとペースの速さに驚いたと言う。

「旧車のクラブって言うと、メインは愛車自慢で、実際に走るのはちょっとだけ、っていうケースが多いでしょう。でも毎回50人前後が参加するCB750ドリームオーナーズクラブのツーリングは、500kmくらいは普通に走るし、飛ばす人は現行車と大差ないペースで飛ばす。だから初めて参加したときは、目の前の光景が信じられなかった。でもCB750フォアは、そういう使い方ができるバイクなんだ。もちろん、それは本来の調子を維持していればの話で、問題を抱えている車両では、なかなかそうはいかないけどね。逆に言うなら、スロットル操作に対するエンジンの反応が明らかに悪いとか、高速域で真っ直ぐ走らないなんていう場合は、どこかに問題を抱えているわけで、本来のCB750フォアはすごく乗りやすいバイク。何と言っても、新車がそうだったから」

 小川さん自身のK2だけではなく、オーナーズクラブのメンバーの愛車も含めて考えた場合、CB750フォアならではの弱点はあるのだろうか。

「あえて言うなら、イグニッションキーシリンダー内のハンダの剥がれくらいかな。それ以外だと、2速ギアが磨耗しやすいとか、K2以前のドライブスプロケット軸のベアリング容量が足りないとか、スタータークラッチが滑るっていう話はあるけど、弱点と言うレベルではないと思う。もちろん、経年変化でキャブや電装系が調子を崩したり、転倒が原因でフレームが曲がったりというケースはあるけど、それはCB750フォアならではの弱点ではないからね。基本的にはかなり丈夫なバイクだよ」

小川さんがツーリングに持って行く補修部品の一部。左から、イグニッションキーシリンダーAssy、DE7Aのスパークプラグ×4、クラッチレバー、リアタイヤ用チューブ。ちなみにCB750ドリームオーナーズクラブのツーリングでは、どんな部品/工具を持って行くかの担当が決まっていて、携帯式の電動コンプレッサー、タイヤレバー、灯火類用のバルブなどは、他のメンバーに任せていると言う。

 近年のCB750フォアの中古車相場は、K0:200万円以上、K1:150~200万円、K2以降:100万円以上である。ちょっと妙な質問になるけれど、この中古車相場を基にしたヒエラルキーは、CB750ドリームオーナーズクラブには存在しないのだろうか。

「ウチの場合は、会長がK4に乗っているくらいだから、どれがエラくてどれがダメなんていう雰囲気はまったくない。ただし、K0に憧れを持っている人は少なくないんじゃないかな。K1以降にK0用のマフラーや外装を装着した車両は、かなりの数がいるから。俺の場合はK2にこだわりがあるので、そういう改造をするつもりはないけど、若い頃に解体屋で見たK0を思い出すと、買っておけばよかったなあ……と、思うことはあるよ」

 これからCB750フォアに乗ってみようという人がいたら、小川さんはどんなアドバイスをするのだろう。

「CB750フォアに限った話じゃないけど、旧車を楽しむうえで大事なことは、ウチみたいなオーナーズクラブやショップを通して、整備やトラブルに関する情報の共有に加えて、パーツのやり取りができる、仲間を作ることでしょう。もちろんクラブやショップには個性があるから、人によって合う合わないはあるけど、少なくとも俺の場合は、CB750ドリームオーナーズクラブの仲間がいるからこそ、K2が思いっ切り楽しめている。だからCB750フォアのオーナーになりたいなら、いきなり車両を買うのではなくて、まずはクラブやショップの様子を見るところから始めるのがいいんじゃないかな。そこで仲間になれそうな人、信頼できる人が見つかるかどうかで、以後のバイクライフは変わってくるはずだから」

■ライター:中村友彦
これまでに10台以上のCB750フォアを試乗している、2輪雑誌業界23年目のフリーランス。若い頃から旧車は大好きで、現在は1974年型モトグッツィV850GTと1976年型ノートンコマンド850を愛用。かつては1974年型トライアンフT140ボンネビルや、1979年型カワサキZ1000MkⅡなどを所有していた。

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