テスラ”モデル3”キラー、シャオペンP7に中国メーカーのEV戦略が見えた!!
- 2020/05/05
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MotorFan編集部

今や世界のEV市場の動向を握りつつあると言われている中国。日本ではなかなかその実情が見え難いが、先ごろシャオペンから発表された4ドア・スポーツセダンのEV、「P7」からは、その将来戦略がおぼろげながら浮かび上がってくる。
TEXT◎高橋昌也 PHOTO◎Xpeng Motors(小鵬汽車)
中国EVメーカーの現況
中国ではEV(電気自動車)や水素のようなNEV(新エネルギー車)の普及を政府が支援したこともあり、現在、中国は世界のEV保有台数の約30%を占めていると言われるほどだ。
無論、それゆえに中国では現在15ほどのEVメーカーおよびブランドがあり、さらに小規模なベンチャーや個人まで含めれば、それこそ星の数ほどのEVコンストラクターが存在するという。これらのなかでも通販で知られる巨大IT企業のアリババ(阿里巴巴集团)が出資する「シャオペン(小鵬汽車 Xpeng Motors)」、同じく検索エンジンで知られる巨大IT企業バイドゥ(百度)が出資する「ウェイマー(威馬汽車 WM Motor)」、昨年アメリカのニューヨーク証券取引所に上場した、世界最大級のゲーム会社としても知られるIT関連持株会社テンセント(腾讯)が出資する「NIO(ニオ。上海蔚来汽車)」が有名どころだ。
バイドゥ、アリババ、テンセントの中国巨大IT企業は頭文字をとって「BAT」と呼ばれるが、その3社がそれぞれ出資しているだけに、これらEVメーカーは豊富な資金力をバックに傑出した開発能力を示しており、世界的な注目度も高い。
シャオペンP7の特徴とは?

2019年に、この3社のうちのひとつであるシャオペンが同社2モデル目の市販EVとなる「P7」を発表した。これは4ドアのスポーツクーペで、「X PILOT」と呼ぶレベル3の自動運転システムを搭載し、高速道路での自律自動運転が可能だ。スタイルを見れば一目瞭然だが、この「P7」は一部では「テスラ"モデル3”キラー」と目されている。それは一充電あたりの航続距離が約439 マイル(約706.5km)、日本円換算で約350〜500万円という価格もさることながら、高性能でエネルギー効率に優れたAIコンピューティング プラットフォームを活用したレベル3の自律自動運転機能にある。
ここまでシャオペンが自動運転に力を入れるのは、「次世代の運転はソフトウェア定義型の運転である」と考えているからだ。エンジニアリングチームは、エンジンの馬力に労力を注ぐよりも、ディープ・ニューラル・ネットワークのファインチューニングを行ない、AIによる運転支援機能を強化する道を選んだのである。
この運転支援機能は常にアップデートされるのもまた大きな特徴だ。「P7」はOTA (Over The Air) ソフトウェア・アップデートによって最新の自動運転およびインテリジェント・コックピットの機能を受信して更新するため、ユーザーの手に渡ってからもクルマの機能はモデルイヤーに関係なく常に最先端であり続けるというわけだ。
「P7」の自動運転性能とその狙いは?

「P7」は、安全で便利な AI 支援運転を目指して設計されており、超音波センサー12基、高精度のミリ波レーダー5基、360度認識のためのカメラ14基を備えている。車の前方監視レーダーの検出距離は 200mで、雨、霧、煙霧なども見通すことが出来る。

これらの多様なセンサーによる検出情報が、毎秒30兆回の演算という AI コンピューティング性能を実現するNVIDIAの「DRIVE AGX Xavier」を核としたレベル3自律自動運転システムである「X PILOT(X Pilot 3.0)」 に伝えられ、高速道路での自動運転と自動駐車を可能にする。「P7」の開発はシャオペンのデータセンターで始まり、その自動運転ディープ・ニューラルネットワークのトレーニングとテストには、NVIDIAのAIインフラストラクチャーが使われた。
このような、いわば「スマートテクノロジー」を将来の支柱としようというのがシャオペンの戦略のようで、かのアリババ・グループが出資している自動車メーカーらしいと言うこともできる。何やら、かつて電子制御の「ハイテク」を武器に世界を席巻したどこかの国を彷彿とさせる。
さらに言えば、レベル3の自動運転の実現により、中国国内の道路事情に精通するための優位性をどこよりも先に得ることができるという狙いもあるようだ。これは海外から中国へ売り込まれるクルマに課せられる高額な関税よりも、中国国内における中国車の優位性を確固としたものにするはずだ。
さまざまな制約から、現在、残念ながらシャオペン「P7」を日本で買うことはできないが、そう遠くない将来に中国メーカー製EVが世界標準に躍り出てくる可能性は否定できない。いまだに「馬力が」「加速が」というレベルで物事を語っているならば、急激なEV化の流れに乗り遅れてしまう危惧は小さくない。中国の「スマートテクノロジー」に対して、同じ「スマートテクノロジー」をもって戦うのか、それとも別のユーザー・オリエンテッドな「何か」を新たな武器として模索するのか。決断までの時間はもはや「待ったなし」だ。
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