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世界中のメーカーとライダーのドギモを抜いたZ1/2は、カワサキ初の4ストだった。 ナニが凄いの?カワサキZ1/2、そのキーワードは「カワサキ初の4スト」。|旧車探訪記2-1

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1970年前後にカワサキが販売した3台の世界最速車

ライバルとの相違点と日本独自のナナハン規制

ライター:中村友彦

ライバルとの相違点と日本独自のナナハン規制

1973年型Z2の新車価格は、一般的な日本車では初の40万円台となる41万8000円。同年のライバル勢の価格は、ホンダCB750フォア:38万5000円、スズキGT750:39万5000円、カワサキ750SS:36万5000円で、この差額をどう感じるかは人それぞれだが、当時の大卒初任給が6万円前後だったことを考えると、決して小さくはなかったはずだ。

 カワサキマニアにとっては周知の事実だが、Z1/2の本格的な開発が始まったのは1967年で、1968年春には試作エンジンが完成。そんな同社にとって、1968年秋の東京モーターショーでホンダが公開したCB750フォアは、寝耳に水と言うべき存在だったのだが、今になってみると、CB750フォアはZ1/2の性能を高めるアシストをしたのかもしない。本命となる輸出仕様の排気量が750→900ccに拡大され、1200cc前後までの排気量拡大を想定した耐久性が与えられ、車載状態でシリンダーから上の整備ができるようになったのは、CB750フォア(排気量拡大の上限は850cc弱で、車載状態で出来るエンジンの整備はタペット調整くらい)以上の性能を目指した結果だったのだから。なおホンダの名誉のために記しておくと、動力性能で多少劣っていようとも、CB750フォアの人気はZ1/2登場後も大きく衰えることはなく、1969~1977年の9年間で約60万台を生産。この数値は1973~1980年に販売された、Z1/2シリーズのほぼ倍である。

当企画では一般的な呼称のZ2=ゼッツーで統一しているけれど、この車両の正式な車名は“750RS”で、Z2は型式。ちなみにZ1=ゼットワンあるいはジーワンも型式で、こちらの正式車名は“900スーパー4”だった。

 日本人の視点で考えた場合、Z1/2の生い立ちを語るうえで欠かせないのは、1973年に日本自動車工業会二輪車部会が発表した、“国内で販売する二輪車の排気量上限は750ccまで”という自主規制だろう。この規制の背景には、当時の急激な交通事故の増加と暴走族の過激化があったのだが、900ccのZ1を販売しようとしていたカワサキにとっては、シャレにならない事態である。すぐさま同社は、日本での販売を諦めるか、排気量縮小版を製作するかという議論を開始し、結果的に後者を選択。こうした経緯で生まれたZ2は、ボア×ストロークやキャブレターなどを専用設計することで、兄貴分とは一線を画する、750ccならではの魅力を追求していたのだが……。

 現在の年齢が65歳以上で、当時をリアルタイムで体感したライダーにZ2の話を聞いてみると、“ツインカムは魅力的だったけど、CB750フォアほどの衝撃は感じなかった”、“加速や峠道での速さなら750SSのほうが上”などという意見が出て来ることが少なくない。各車の最高出力と乾燥重量、Z2:69ps/230kg、CB750フォア:67ps/218kg、750SS:74p/192kgという数値を考えれば、それはまあ当然のことだろう。もちろん、82ps/230kgのZ1が販売されていたら、日本でのカワサキZに対する評価はさらに高くなったはずだが、主要市場のアメリカだけではなく、ヨーロッパでもZ1が大人気を獲得したことを考えれば、当時のカワサキにとって日本での評価は、そんなに重要ではなかったのかもしれない。

 昨今ではクラシックバイク業界の大人気機種として、世界中で認知されているZ1/2。ただし生産終了後の数年を振り返ってみると、Z1/2は時代遅れの中古車に過ぎず、日本でも海外でも、10~30万円台前後の個体がゴロゴロしていた。とはいえ1980年代後半の日本では、海外からの逆輸入という手法が一般的になり、さらには当時のレーサーレプリカブームに対する反動もあったようで、Z1の人気は当初はジワジワ、1990年代に入ると急速に上昇。近年になってその上昇は落ち着いたようだけれど、オリジナル度の高い極上車なら300万円~、要整備車でも100万円以上という価格は、かつてのZ1の中古車相場を知る人にとっては隔世の感があるだろう。

 ちなみに日本仕様のZ2は、Z1から10年ほど遅れて人気が上昇。少なくとも1990年代中盤までのZ2は、排気量拡大を前提としたカスタムのベースと考えられることが多かったものの、生産台数がZ1より少なかったことや、ショートストローク指向のエンジンが評価の対象になったのだろうか、近年のZ2はオリジナル度が高い車両なら、兄貴分を上回る価格で取り引きされているようだ。

ライター:中村友彦

1981年以降のZ1000J系やGPZを含めると、これまでに数十台のカワサキZシリーズを体験している、2輪雑誌業界24年目のフリーランス。人生初の旧車は22歳のときに購入した1979年型Z1000MkⅡで、ここ最近は1974年型モトグッツィV850GTや1976年型ノートンコマンド850などを愛用。

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