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プロに聞いた|生産から40年以上が経過したカワサキZ1/2をこれから買うとしたら! 長〜く楽しむための勘所|旧車探訪記2-3

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長きに渡って人気を維持しているためだろうか、耐久性が抜群だから旧車特有の心配は不要?、高速域でウォブルが発生する?、チューニングすれば現代のスーパースポーツより速く走れる?など、カワサキZシリーズにはさまざまな都市伝説が存在する。そのあたりの真偽も含めて、今回は取材に協力してくれたリアライズの道岡さんに、Zシリーズを楽しむための勘所を聞いてみたい。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)
取材協力●リアライズ ☎042-686-2504 http://mytec-realize.com/

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高値で安定している近年の中古車相場

トラブルへの対応とオススメカスタム

ライター:中村友彦

高値で安定している近年の中古車相場

リアライズの代表を務める道岡嵩裕さんは、1984年生まれの35歳。初めてのカワサキZは、20歳の頃に整備士学校の先生が貸してくれたZ750フォアレーサーで、後にZ2を入手してからは、さまざまな手法でこの機種ならではの魅力を追求している。ただし、ありとあらゆるバイクに興味を示す道岡さんは、自身のショップの取り扱い車種をZシリーズに限定することなく、さまざまな車両に対応。取材当日の同店には、数多くのZシリーズに加えて、BMW S1000RRやヤマハMT-07、ホンダVFR400Rなどが入庫していた。

 本題に入る前に説明をしておくと、取材に協力してくれたリアライズの創業は2007年で、代表の道岡嵩裕さんの年齢は35歳。Zシリーズを得意とするショップの基準で考えれば、店舗も店主も若いわけだが、メカニックとしての修業を積んだACサンクチュアリー時代を含めると、道岡さんが整備やカスタムを手がけたZシリーズは100台以上に達しているし、十数年前から愛用中のZ2では、これまでにさまざまなチューニングにトライしている。その技術力が評価され、昨今の同店には全国各地から多種多様なZユーザーが訪れているのだ。
 そんな道岡さんに対する最初の質問は、昨今のZシリーズの中古車事情。程度が良好なZ1/2なら、300万円以上が珍しくなくなった近年の相場を、道岡さんはどう感じているのだろう。
「非常に高いですよね(笑)。でもここ最近のZ1/2は、要整備のベース車でも100万円以上で、そこから新車同様のコンディションを目指して、エンジン、車体、電装系のすべてにきっちり手を入れると、やっぱりそのくらいの価格になるんです。ただし、ベース車をいまひとつ人気がない1976年型Z900や1977~1978年型Z1000にする、あるいは、最初は問題が出そうな部分にだけ手に入れて、徐々に完調を目指していくという姿勢なら、乗り出し価格を100万円台に抑えることは可能ですよ。なお一般的な旧車の場合、補修部品の有無が問題になることが多いですが、Zシリーズの場合、その心配は不要です。極端に言うなら、エンジンとフレームさえあれば、それ以外はアフターマーケットのリプロパーツで何とかなりますから。車両価格は非常に高いですが、Zシリーズは長く楽しむための環境が整っているんです」

現役時代には抜群の耐久性を誇ると言われたZシリーズの組み立て式クランクシャフト+コンロッド。とはいえ昨今では、芯がズレている個体がほとんどで、ベアリングの全交換を必要とするケースも多いようだ。

 現役時代には耐久性が抜群と言われたZ1/2だが、現代の視点で見ても、その資質は同様なのだろうか。
「そこは誤解している人が多い気がします。確かに、Zシリーズの耐久性はかなり高くて、調子が悪くても悪いなりに走れてしまうのですが、だからと言って手入れが不要なわけではありません。何と言っても生産から40年以上が経過していますから、履歴がわからない車両の場合、ひと通りの整備はマストと考えたほうがいいでしょう。普段の生活で考えてみると、40年以上前の機械や電化製品なんて、身の回りにほとんどないですからね。もっとも車両の購入時に全面的な整備を行っておけば、Zは現行車と大差ない感覚で付き合えると思います」

トラブルへの対応とオススメカスタム

 修理を目的としてリアライズに持ち込まれるZシリーズは、どんなトラブルを抱えているのだろうか。
「エンジンがかからない、かかるけど何だか調子が悪いという場合は、発電を担当するジェネレーターとレギュレター、点火を担当するポイントとイグニッションコイル、それらをつなぐメインハーネスなど、電装系に何らかの問題が出ていることが多いです。キャブレターの詰まりやセッティング不良もよくありますね。車体に関しては、前後ホイール、ステアリングステム、スイングアームピボットのベアリングが重要なポイントです。この4ヶ所のベアリングは操安性に多大な影響を及ぼしますが、世間では認知度が低いようで、高速域でウォブルが出るからフレームに補強を入れたい、乗り心地が悪いからリアショックを替えたい、などと言うお客さんの車両を点検すると、たいていの場合はベアリングが磨耗限度に達している。逆に4ヶ所のベアリングを新品にするだけで、車体の問題は解消するケースが少なくないですよ」

リアライズが過去に手がけたフルカスタム仕様のZ1。前後17インチのアルミ鍛造ホイールはゲイルスピードで、前後ショックはオーリンズを選択。前後ブレーキはブレンボ+ガルファー。エンジンはSOHCエンジニアリングのφ70mmピストンを投入した1015ccで、キャブレターはTMR-MJNφ38mmを選択。

 リアライズの仕事で興味深いのは、コレといった傾向が感じられないこと。Zシリーズを得意とするショップと言ったら、ノーマル派、当時風カスタム派、現代的なフルカスタム派など、何らかの特色を感じるのが普通なのだが、取材当日の同店に入庫していたZシリーズは、何でもアリ?と言いたくなる雰囲気だった。
「その点については、僕自身の考え方が反映されているんでしょう(笑)。僕の中には、“Zはかくあるべし”という意識はまったくないんです。ノーマルはノーマルで楽しいし、カスタムはカスタムで楽しい。だから初めて来店してくれたお客さんに、こちらからいろいろ提案することはありません。あくまでも、お客さんが求めているZを形にするのがウチの仕事。ただし、誤解を解こうとすることはありますね。例えば、40年以上前の旧車だから、操作が難しくてすぐに壊れるんじゃないかと不安を抱いているお客さんには、きちんと整備したZならそんなことはないですよとアドバイスするし、逆にマンガやレースの影響で、Zはムチャクチャ速いはずと信じているお客さんには、単純な速さなら、現代のスーパースポーツには絶対にかないませんと、率直な意見を言います」

道岡さんが十数年前から愛称しているZ2は、筑波サーキットで開催されるTOTモンスタークラスの規定に従って各部をモディファイ。独自の補強が追加されたフレームに搭載されるエンジンは1105cc仕様で、前後18インチホイールはモーリス、フロントフォークはカヤバφ38mm、リアショックはオーリンズを選択する。

 基本的に提案はしないという道岡さんだが、オススメカスタムみたいなものはないのだろうか。
「あえて言うなら、効力もタッチもいまひとつのフロントブレーキは強化したいですね。ブレーキの安心感が増すと、走ることが楽しくなりますから。それ以外だと灯火類のLED化。と言っても、僕が考えるLED化の主な目的は、明るさの向上ではなく、省電力化と電圧の安定化です。もともとの発電量が多いとは言えないZシリーズの場合は、灯火類を消費電力が少ないLEDに変更すると、電圧が明らかに安定するんですよ」

まったく形状は異なるものの、いずれもZシリーズ用。右がSOHCエンジニアリングの鍛造品で、左は純正の鋳造品。なお現代のアフターマーケット市場では、アメリカのワイセコやJE、イギリスのコスワース、ドイツのヴォスナーなど、数多くのメーカーがZシリーズ用ピストンを販売している。

 Zシリーズを主軸に据える一方で、リアライズでは年式や国籍を問わず、多種多様なモデルを取り扱っている。誠に漠然とした質問ではあるけれど、例えば現行車や他の旧車と比較した場合、道岡さんはZシリーズのどんなところに魅力を感じているのだろうか。
「筆頭に挙がるのは、単純にスタイルがカッコいいことと、街乗りでも操る楽しさが感じられることですが、僕にとってのZは、実験車であり教材車です。例えば現行車のZX-10Rをいじるとなったら、やるべきことは自ずと決まって来るのですが、Zシリーズはエンジンも車体もいろいろなアプローチができる。ピストンやカムシャフト、キャブレターなどは、10種類以上の選択肢がありますし、足まわりの設定次第でハンドリングはガラリと変えられますからね。もちろん、Zシリーズはノーマルでも十分に楽しいですが、チューニングの楽しさ、乗り手の好みに応じて特性を作り込める魅力がなかったら、僕は今ほど夢中にならなかったかもしれません」

キャブレター/インジェクションや点火系のセッティングを確実かつ迅速に行う装備として、リアライズはシャシーダイナモを活用。なお同店では、HELのブレーキホース&ブレーキパッドの販売や、ガンコート/パウダーコート/セラコート/結晶塗装も行っており(パーツ単体だけではなく、車両丸ごとの持ち込みもOK)、これらについてはZシリーズだけではなく、幅広い車種に対応している。

ライター:中村友彦

1981年以降のZ1000J系やGPZを含めると、これまでに数十台のカワサキ空冷Zシリーズを体験している、2輪雑誌業界24年目のフリーランス。人生初の旧車は22歳のときに購入した1979年型Z1000MkⅡで、ここ最近は1974年型モトグッツィV850GTや1976年型ノートンコマンド850などを愛用。

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