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全てを忠実にダウンスケールした「70%モンキー」が凄すぎる【月刊モトチャンプ 2019年12月号】

  • 2020/02/18
  • モト・チャンプ編集部
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今号の月刊4MINIでは、ほぼ全てのパーツを手作りして、モンキーを70%サイズに縮小した驚愕のマシンをご紹介!ご覧の通り超精巧なのはもちろん、なんとこれを市販化するというからまたビックリ。規格外のミニモンキーをご覧あれ!

PHOTO●渡辺昌彦(WATANABE Masahiko)
REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)

※問い合わせ先電話番号に誤りがありましたので訂正させていただきました。ご迷惑をおかけした読者の皆様ならびに関係各位には深くお詫び申し上げます。

ホンダF1黄金期を支えた確かな技術でマシンを制作

 これまで何度もモンキーを縮小してしまった例を紹介してきた。それらの多くはフレームや外装を切り貼りして8インチホイールを履かせた個人レベルのもの。だから、この70%モンキーをご覧になっても、目新しいとは感じないかもしれない。ところがこのモンキー、実はフレームからサスペンション、外装パーツまで新たに作り出したものでできている。さらに個人レベルと決定的に違うのが、全パーツの強度計算をして安全を確保していること。強度計算を基に設計図面を描き、ジグを作る。だから何本でもフレームが作り出せて、同じ強度を保てる。つまりこれはメーカーがバイクを作り出す工程と全く同じなのだ。

 では、どうしてそんなことが可能になったのか。70%モンキーを製作したバロックという会社に、その秘密がある。バロックの代表である皆川栄司さんは今年で70歳になる技術者。今は現役バリバリの方ではないのだが、その経歴を聞いて腰を抜かした。なんと、1980年代に全盛を誇ったホンダF1のV6エンジンに関わっていた技術者なのだ。

 ホンダがF1に参戦した第2期は1983年にスタート。翌年にはウイリアムズチームへエンジンを供給して初勝利を挙げる。その強さは年々進化して、1986年と87年にはコンストラクターズチャンピオンを獲得。88年には16戦中15勝という圧倒的な強さを見せた。

 このホンダV6エンジンはホンダ社内で完結したわけではない。皆川さんは埼玉県朝霞市で仕事を始めるが「師匠」はいない。すべて試行錯誤で今の技能を習得した。周囲にホンダ関係者が多い土地柄ゆえ、コンロッドの研磨を仕事にした。その腕に白羽の矢が立ち、ホンダV6エンジンのカムシャフトを研磨することに。これを続けているうちにホンダの研究所に出入りするようになり、試作部品を任された。ホンダF1の第2期における圧倒的強さは、その影に皆川さんのような技術者がいたからこそなのだ。

 その後、ホンダ本家ではなく無限の仕事をメインとし、関係はさらに密接に。ついには二輪完成車のすべてを手がけるようになった。そのためある時期のホンダ製プロトタイプは、皆川さんが作っていたということになる。例えば初代クロスカブのメーカーカスタム車は皆川さんによるもの。なんとも仰天するようなエピソードだ。

 ホンダの仕事がひと段落すると、改めてバイク作りへの情熱がムクムクと湧いてきた。だが、大メーカーと同じことをしても意味はない。だったら床の間から公道まで楽しめるサイズにしては、どうだろう。こんな思いから70%モンキーの試作が始まった。ではなぜ70%か。それはエンジン。ホンダ製草刈機のGX35は排気量が35.8㏄。50㏄の70%に該当する。このエンジンがあったからこそ、70%のモンキーなのだ。

 もちろん、そのままでは使わない、というか使えない。キャブレター周りはインマニなどを新規設計したが問題は駆動系。本来草刈機はシャフト駆動。これをスプロケットによるチェーン駆動に改めるのだ。エンジンに被せるタイプのアルミカバー母型を制作し外部で鋳造。さらにギヤを加工した。そう、トランスミッションも装備しているのだ。

 自社製作ではないもう一つがタイヤ。8インチの70%だと5インチになるが、どこを探してもそんなサイズはない。そこで太いブロックタイヤで探し直してみると、ベトナム製の4インチが見つかった。さすがに皆川さんも何用であるかは知らない。おそらく荷車用だろう。

 フレームでわかるように、鉄やアルミを成形するのが得意な皆川さんだが、燃料タンクは型を起こして製作するだけではなく、蒔絵をあしらったカラーリングも手掛け、塗装ブース、集塵機から塗装乾燥機まで作ってしまった。だからできないことなどない。何か作るために必要な機材がなければ、それすら自分で作る。時代とともに薄れてしまった、モノ作りの原点かつ究極がここにあるのだ。

70%MONKEY DETAIL CHECK!!

皆川栄司さんが代表を務めるバロック(問:080-3153-8230)による設計。完成車が165万円(税別)、フレームと足周りのセットが25万円(税別)だ。 
HANDLE etc.
FUEL TANK
SEAT
TAIL LAMP &TURN SIGNAL
ENGINE
STARTER
SWINGARM etc.
KEY
TIRE&WHEEL
REAR SHOCK

エンジンやゴム製品の一部以外そのほとんどを型から製作!

 モンキーの純正部品を切り詰めるのは決して簡単ではないが、このモンキーはフレームや前後サスペンション、灯火類などの外装パーツまで、純正の70%となるよう厳密に縮尺を計算して新設計したパーツを使用する。エンジンはホンダ製草刈機を使うが、カバーを製作して自社開発トランスミッションを組み合わせた。驚くことにブレーキドラムやシューも専用設計で、サスペンションのスプリングやダンパーもオリジナル製品。シートはベースを型から起こしたものに手製の表皮を被せている。タイヤだけ市販品だ。

部屋の中に整然と並ぶパーツたち

この70%モンキーは量産車。完成車としても入手可能だが、パーツ単位で購入してプラモデル感覚で組み立ても楽しめる。これだけのパーツを一人で量産しているのにも恐れ入る。

フレームのジグまで製作

フレームを作るには専用のジグが必要不可欠。パイプをベンダーで曲げるにもジグがなければ同じ寸法にならない。そこで鋼板を用いた専用ジグを作ってしまった。上下に同じ切り欠きがあるのは、2つ同時に作業できるから。

ホンダの汎用エンジンをモディファイ

エンジンはホンダ製草刈機に採用されている35.8cc。本来ミッションはなくクランクにシャフトが連結されているので、クランクにスプロケットを装着してカバーを被せることで自社開発ミッションとチェーンで連結している。
燃料タンクを作るための型を作り、左右と底をプレス成形。溶接して組み立てる。ライトケースやライトリムも同じ手法で作っている。
シートの型は上下2枚でできていて、内部に素材を入れてから凝固させる。型作りからパーツ製作まで、すべての工程をバロックで行なう。
キャブレターは草刈機純正を使うが、傾きに合わせてインマニを製作している。円筒のエアクリーナーも専用設計したものだ。
ミッションケースを製作して専用に加工したギヤを組み込んで駆動力を得ている。ギヤの設計は皆川さん自身によるものだ。

なんでも作れる設備がズラリ

広い工場ではないが、コンクリート建物の内部には大工場並みの工作機械や生産設備が整う。中央のテーブルもここで自作したもの。

BAROCK代表:皆川栄司さん

美容師で社会人生活をスタートさせたものの、転職してトラック運転手に。だが、何か作り出す仕事がしたいからと独立して、40年前にバロックを設立した。現在70歳になるが63歳までホンダの仕事をしてきた。ないものは作るのがモットー。

モトチャンプ 2019年12月号

おかげさまで創刊500号

・国内発売前だけど激走 ADV150徹底試乗
・フレームもタンクも手作りで縮小!? 70%モンキー現る
・ミニバイクの名車を語ろう
・時代に愛された“人気の原付”をいま振り返る
・カブマニアが激論! NEWハンターカブ続報!

・特別付録 青春 ミニバイクカタログ
 1982年~2019年まで 約400台が大集合!

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