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ホンダ・モンキーのスーパーチャージャー仕様!?|プレイバック平成カスタマイズ

  • 2020/09/28
  • MotorFan編集部 北 秀昭
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写真は1998年(平成10年)6月、兵庫県の猪名川サーキットで行われた4ミニミーティングの0-50m大会での一コマ。多数のギャラリーが見守る中、怒涛の走りを初披露(月刊モト・チャンプ 1998年8月号より)。

豊富なバイク用パーツ&アイテムをリリースする「デイトナ」が、1990年代後半から2000年初頭、市販化に向けて積極的に研究・開発を行っていた伝説の4ストロークミニ、スーパーチャージャー装備のモンキー。過給機を後付けしたモンキー改のパイオニアとして、強烈なインパクトを残した1台だ。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
PHOTO●月刊モト・チャンプ

研究用モデルとして開発。モンキーのスーパーチャージャーには100cc前後が最適だと判断

走るために生まれた武骨なフォルムのスーパーチャージャー・モンキー。研究用として開発されたため、保安部品等のパーツは未装着。

「デイトナ」が製作したスーパーチャージャー・モンキーは、幅広い商品の研究・開発のための車両として、イベントやミーティングなどの催事のみに披露された、走る実験室的なカスタムだ。

 スーパーチャージャーとは、エンジン内に空気を送り込むためのタービン(過給機)を強制的に作動させ、大量の混合気を吸い込ませることで燃焼を増大させるシステムのこと。排気圧によってタービンを回すターボチャージャーとは異なり、クランク軸などの回転運動を利用し、ベルト等を介してタービンを動かしているのがポイント。写真のモンキー改は、クランクシャフトの回転運動を利用し、ベルトを経由してタービンを動作させている。

 一般的にスーパーチャージャーは、低回転から一気に加速するのが特徴。一方、100cc前後の小排気量車には、ターボチャージャーよりも、低回転域から高回転域までスムーズに過給しやすいスーパーチャージャーが楽しめるはず。これが開発のきっかけだったと、当時のデイトナ開発者は話していた。

いよいよ0-50m大会に出場。モンキーのスーパーチャージャー仕様は怒涛の加速力を披露!

大勢の観客を前に初走行するデイトナのスーパーチャージャー・モンキー。
 デイトナのスーパーチャージャー・モンキーは、それまで何度か披露。しかし“本気の走り”を披露するのは、この日が初めてだった。

「自然吸気を遥かに凌ぐ、ロケット級の加速力を秘めているらしい」
「100cc強で、軽く15馬力を叩き出すらしい」

 等々、当時は様々な噂がささやかれた。フリークたちは、スーパーチャージャー・モンキーの走りに興味と期待を抱いた。そして1988年(平成10年)6月、モト・チャンプ主催の4ストミニミーティングの0-50m大会において、ついにその実力を見せつける時がやってきた。

スーパーチャージャーはジェネレーター(クランクシャフト)部とタービンをベルトでつなぎ、過給するシステム。
 タービンが奏でる「キュィーン!」という独特の金属音、腹の底まで響く、メガホンマフラーの図太いエキゾーストノート。入り乱れる2つのサウンドは、錯綜しながら最高潮まで到達。ライダーは狙いすましたかのように、絶妙なタイミングでクラッチをミートした。その瞬間、爆音とともに、マシンは猛然と加速。瞬く間に50mを駆け抜けた。

 記録は3秒776という当時としては驚異的な数字。「あの加速、本当にモンキーなのか……」多くのギャラリーからは、驚きとどよめき。そして称賛の声が巻き起こった。

 50.29mのタイムを競う「SS1/32mile(2002年より開催)」では、近年では2スト車による2秒台は珍しくない。また、4スト124ccの3秒前半は、ごく当たり前の記録だ。

 しかし当時、3秒776というタイムはケタ外れだった。というよりも、筆者の記憶によれば、デイトナのスーパーチャージャー・モンキーの初期加速は驚異的だった。

 例えばSS1/32mile出場の4スト124cc(自然吸気)は、「速度が伸びていく」イメージ。一方、当時のスーパーチャージャー・モンキーは、ジャンボジェット機のスタンバイから離陸時のように、出足から暴力的に加速。そのため、スタート時のスロットルワークとクラッチミートには、かなり手こずっていた模様だった。

 また、走行途中、さらに加速する車体を立て直すために、どうしてもタイムロスが生じた。これらの現象は、ストリート仕様の車体=ホイールベースが短く、ドラッグ仕様の車体にカスタムされていなかったことが大きかったと予測する。

 あくまでも当時の筆者の記憶だが、スーパーチャージャー・モンキーは、スタート~25m付近において、SS1/32mile出場の4スト124cc(自然吸気)とは異質の加速力を見せていた。また、後半の25-50mにおいて、ライダーはこの暴れるじゃじゃ馬を持て余していた。筆者でなくとも、このモンキー改はタダモノではない。スーパーチャージャー・モンキーの走りを見た誰もがそう感じたはずだ。

デイトナ スーパーチャージャー・モンキー 主要スペック(1998年仕様)

・ベースマシン:モンキー50(12V)
・スーパーチャージャーシステム:試作
・エンジン:ハイポートヘッド104cc+ロングストローククランク(ボア52mm×ストローク49mm)
・キャブレター:ケイヒンPCφ20
・ミッション:5速クロス
・クラッチ:湿式4ディスク
・マフラー:メガホン(試作)
・前後ホイール:10インチチューブレスアルミ
・フロントフォーク:Φ31正立型
・スイングアーム:160mmロングアルミ
・リヤショック:335mm
・外装:アルミ製ガソリンタンク、トラッカーシート改

ブースト圧は0.5~1.0kgに設定。排気量104ccで15馬力以上を発揮

1998年(平成10年)6月、兵庫県の猪名川サーキットで行われた4ミニミーティングのパワーチェック大会での当時のグラフ。落ち込むことなく1万2000回転まで加速してオーバー15馬力を出力。

試乗インプレッション!どこまでも続く独特の図太いトルクを発揮

写真は細部を改良し、さらに進化した1999年仕様。
 エンジンを始動すると、図太い排気音と金属音、そして直キャブが吸気するレーシーなサウンドが響く。このマシンは、どのマシンとも異なる過激であることを強烈にアピールしているかのようだ。

 低回転域でクラッチをミートして走行。早くも104ccの排気量が数倍になったかのような、凄まじいトルクを体感。回転を上げてみると、今度は不思議な感覚に遭遇。タコメーターはグングン上昇しているのに、車体を押し出す強さ、つまりトルク感は一定なのだ。

 回転が上がったような感覚がしないという、自然吸気とは異なる独特のフィーリングが印象的だ。

このモンキー改はミニバイクの領域を超えた、驚異のパワーと新発力

1999年仕様のモンキースーパーチャージャー部分(月刊モト・チャンプより)。
 モンキーの横型をボア&ストロークアップ(ボア52mm×ストローク49mm)した104ccエンジンをベースに、独自のスーパーチャージャーシステムを搭載。

 パワー的には、ノーマル(50cc)時の約5倍アップ。しかし体感的には、5倍という数字を遥かに上回っている。スーパーチャージャーがもたらす強烈なトルクと瞬発力は、もはやミニバイクの領域を遥かに超越。スロットルをひねれば、まるでパワーバンドなど存在しないかのように、どんな回転域からでも怒涛の加速を開始する。

 シフトダウンやアクセルオフの反応は、自然吸気のバイクと変わらない。過激な過給機付きのモンスターを、ここまで調教したテクノロジーには脱帽だ。

※注:上記走行インプレッションは、当時の記事を再構成したものです。

スーパーチャージャー・モンキー(2001年仕様)の過給機部をチェック

ロー&ロングのドラッグスタイルになったスーパーチャージャー・モンキーの最終型(2001年仕様)。4ストながら3秒を切る驚愕のタイムを記録(2001年/月刊モト・チャンプより)。

 サージタンクの容量見直し、各部のレイアウト変更、プーリー比の見直し等々、随時仕様変更されたデイトナのスーパーチャージャー・モンキー。その後も改良を重ね、足周り、外装共々着実に進化。最終的には、ロー&ロング+フルカウル付きのドラッグマシンフォルムとなった(2001年仕様)。

 直線にマトを絞った(ここに辿り着いたともいえよう)同車の速さは改良ごとに磨きが掛かり、2001年の春、デイトナ本社のテストコースで行われた0-50mのテスト走行において、写真の2001年仕様は非公式ながら、3秒を切る驚愕のタイムを連発した。

 多くのモンキー好き達が待ち望み、一部では市販化も噂されたモンキー用スーパーチャージャーだが、残念ながら市販化には至らなかった(※注)。

※注:スーパーチャージャー・モンキーはあくまでも商品の研究・開発用車両として位置付けられていたため、当時からデイトナでは「キット発売の予定はない」とアナウンスしていた。

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