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さよならヤマハSR400、こんにちはホンダGB350。|空冷シングルの諸元を比べてみた。

  • 2021/03/03
  • MotorFan編集部 北 秀昭
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写真左は NEWモデルのホンダGB350(写真はインド仕様のハイネスCB350 DLX/豪華版のハイネスCB350 DLX プロもあり)。写真右は2021年モデルで生産終了となるヤマハSR400。

国内で間もなく発売の ホンダGB350(インド名・ハイネスCB350)は、インドで爆発的なヒットのNEWモデル。ヤマハSR400は2021年モデルをもって生産終了が発表された。両車ともシンプルな空冷4スト単気筒SOHCの、ビッグシングルエンジンを搭載。新参のGB350と、惜しまれつつ姿を消すロングセラーのSR400。イメージは似てはいるが、実は大きく異なる両車の諸元や中身を比べてみた。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)

両車とも空冷4ストSOHC単気筒エンジンを搭載。2台のビッグシングルマシンを比較

ホンダ GB350.......価格未定 ●排気量:348cc

インドでは「ハイネスCB350」の名称でリリース中の GB350。現地では発売からわずか4ヶ月で1万台を記録する大ヒット。

ヤマハ SR400……Final Edition 60万5000円(年間国内限定5000台)/Final Edition Limited 74万8000円(国内限定1000台) ●排気量:399cc

1978年に登場以来、エンジン形式やフレーム形状等の基本構造を変更することなく愛されてきたロングセラーモデル。写真はFinal Edition Limited。
ホンダ GB350。前後ブレーキはディスク式のデュアルABSを装備。アシストスリッパークラッチ、HSTC、HSVCS等の最新機能も採用。
ヤマハ SR400 Final Edition Limited。ブレーキはフロントがディスク式、リヤがドラム式。ABSは非装備。
ホンダ GB350。クラシカルな外観と最新システムを融合させたNEWモデル。前後ホイールはアルミキャスト型で、フロント19インチ、リヤ18インチに設定。
ヤマハ SR400 Final Edition Limited。車体はGB350よりもやや小さく、車両重量も6kg軽量。クラシカルなスポーク型の前後ホイールは18インチに設定。
ホンダ GB350。SR400に比べて全長は78mm長く、ホイールベース(軸距)も31mm長くてやや大柄。
ヤマハ SR400 Final Edition Limited。「Final Edition」の予約台数は、発表後数日で6000台に到達。この数値は、これまでの年間国内生産量の2倍に達するもの。

GB350はレトロな外観ながら、豪華な最新の電子制御システムも装備

インドで発売中のツートーンカラー+2連ホーンを装備した豪華版「ホンダ ハイネスCB350 DLX プロ」。

 国内で発売予定のNEWモデル・ホンダGB350は、高級感を前面に押し出したネオクラシックスポーツ。空冷4ストローク単気筒SOHC 348ccエンジンを搭載した、レトロフォルムのビッグシングルモデルだ。

 生産国のインドでは、2020年9月30日にオンラインで発表。インドでは現在、H'ness(ハイネス)CB350の名称で発売中だが、4ヶ月で1万台をリリースするなど爆発的なヒットとなっている。

インドで発売中のホンダ ハイネスCB350 DLX プロ。廉価版の「ハイネスCB350 DLX」もあり。
 GB350には、

●ブレーキング時におけるタイヤのロックを防ぐ、デュアルチャンネルABS

●アシストスリッパークラッチ......通常のクラッチ機構に比べて負荷の少ないアシストスリッパークラッチを搭載。このシステムは、スリッパー機能によってシフトダウン時の突然のエンジンブレーキによる不快なショックを軽減。頻繁なシフトチェンジ時の疲労を軽減し、快適性を高めた最新機構

●ホンダ・セレクタブル・トルク・コントロール(HSTC)......トルク制御システムのHSTCは、急激なスロットルグリップ操作による後輪のスリップを軽減し、様々な状況において安心感をアップ

●ホンダ・スマートフォン・ボイス・コントロール・システム(HSVCS)......Bluetooth接続で連携できるHSVCSは、スマートフォンにインストールされたライディングインターフェイスを提供し、ナビゲーション、音楽再生、電話、着信メッセージなどの主要機能をサポートする画期的なシステム

 など、イマドキのバイクに相応しい最新機能も採用。

 GB350には実用性や整備性に優れたメインスタンドを標準装備。シフトペダルはミドルバイクには珍しい、踏み込みだけでアップ・ダウン操作が可能な、カブシリーズにも採用のシーソー式を導入。シフトアップ時に、靴のつま先を傷めないで済むのが特徴だ。

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キック始動のみのクラシカルなSR。スカチューン、カフェレーサー、トラッカー、アメリカン等々、数々のカスタムも派生

写真はパーツメーカー「デイトナ」が手掛けたBSAクラブマン風のSR500(SR400の兄貴版)カスタム。独自のシリンダーヘッド・シリンダー・ピストンのキット(すべて絶版)で546ccにチューン。※写真は月刊モト・チャンプより
 一方、SR400は、言わずと知れたヤマハの超ロングセラーモデル。1978年に登場以来、これまでエンジン形式やフレーム形状を変更することなく(排ガス規制クリアのため、4型よりキャブレターからFIに変更されたものの)、シンプルな構造のまま生産を継続。

 この変わることのない一貫した姿勢も支持され、これまでSR400は多くのフリークを輩出。ノーマルフォルム重視派はもちろん、スカチューン(サイドカウルやバッテリー等を外してスカスカにするカスタム術)、カフェレーサー、トラッカー、アメリカン等々、SR400をベースにした様々なカスタムも数多く生み出してきた。

 SR400のエンジン始動方法は、昔ながらのキックスターターのみ。発売以来、便利な電動モーターのセルフスターターは採用されてこなかった。

 キック始動によるSR400のエンジン始動は、4サイクルの大排気量車ならではの、一連の“儀式”が必要。

1:デコンプレバー(下記参照)を握り、クランキング(キックアームを何度か踏み込む)
2:カムシャフト右端に設けられたキックインジケーターを見て、ピストンを上死点にセット(慣れればキックインジケーターを見なくても、感覚で分かる)
3:ピストンの上死点を出したら、キックアームを一気に踏み込む

 SR400のエンジン始動(1~3)には、コツや慣れが必要。セルボタンを押せば一発で簡単にエンジン始動できる、イマドキのバイクとは対極にあるのが特徴だ。

 人によっては、何ともアナログで面倒くさいと感じるであろうSR400だが......一方で懐かしく、シンプルで新鮮なこの感覚が、こだわり派のユーザーを魅了し、愛され続けてきた理由の1つなのだろう。

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最終モデル・SR400 Final Editionの予約台数は、発表後数日で6000台に到達!

1978年に登場した初期型のSR400/500。フロントに19インチホイールを履き、キャブレターは強制開閉式を採用。フューエルタンクは細いタイプで、通称「ナロータンク」と呼ばれるものを採用。タンデムバーは装着されていない。
 43年間で累計12万台以上を売り上げたというSR400も、厳しい排ガス規制、ABS装着義務化によるコストダウン等々の理由により、上記の「Final Edition」と「Final Edition Limited」をもって惜しまれつつも生産終了。両車は2021年3月15日発売で、すでに予約が開始されている。

 ヤマハの発表(2021年2月)によれば、「Final Edition」の予約台数は、発表後数日で6000台に到達。この数値は、何と前回の年間国内生産量の2倍を上回るものだという。

 なお、限定1000台の「Final Edition Limited」は、2021年3月1日現在、メーカーでの予約はすでに完売との噂。同じくロングセラーモデルだったホンダ・モンキー(50cc)の最終限定モデルと同様、発売前の段階ですでにお宝バイクとなっている模様だ。

 筆者がかつてヤマハ関係者から聞いたことだが、ヤマハ社内にも多くのSR400オーナーがいるという。SR400は、カタチを変えて、いつか復活するかもしれない(筆者の願いを込めて)。

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https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/sr-cafe/

車体はGB350がやや大柄。外観・サイズ・足周りの違いをチェック

【ホンダGB350(インド仕様のハイネスCB350)】
全長×全幅×全高:2,163mm×800mm×1,107mm
軸距 :1,441mm
最低地上高:166mm
シート高:800mm
車両重量:181kg
タイヤ:前100/90-19M/C 57H、後130/70-18M/C 63H
ブレーキ:前 Φ310mm油圧式シングルディスク+2POTキャリパー 後 Φ240mm油圧式ディスク+1POTキャリパー ※デュアルチャンネルABSを装備
懸架方式:前 テレスコピック 後 スイングアーム式2本ショック
フレーム:セミダブルクレードル

【ヤマハSR400(Final Edition Limited)】
全長×全幅×全高:2,085mm×750mm×1,100mm
軸距 :1,410mm
最低地上高:130mm
シート高:790mm
車両重量:175kg
タイヤ:前90/100-18M/C 54S 後110/90-18M/C 61S
ブレーキ:前 Φ298mm油圧式シングルディスク+2POTキャリパー 後 機械式ドラム
懸架方式:前 テレスコピック 後 スイングアーム式2本ショック
フレーム:セミダブルクレードル

 外観は両車とも、バイクの王道を行くクラシカルな雰囲気。車体はホンダGB350がヤマハSR400に比べ、全長が78mm長く、ホイールベース(軸距)も31mm長くてやや大柄。車両重量もGB350が6kg重い。数値のみでみた場合、渋滞路やエンジン停止時の取り回し性は、SR400が上。

 なお、GB350を実際に押し歩くと、操舵フィーリングも含めてそれなりにズシっと重い手応えを覚える。諸元によると車両重量は181kg。今、ファイナルエディションが販売されているヤマハSR400は175kgなので6kg重い。しかし、GB350の方が、それより少しばかり車体が大柄な事もあってか、扱いが重過ぎるとは思わない。

 フレームはどちらもセミダブルクレードル式を採用。ホイールはGB350が軽快なアルミキャスト型。SR400がクラシカルなスポーク型を装備。フロントブレーキは両車とも、片押し2POTの油圧式ディスクを採用。リヤブレーキはGB350が油圧式ディスクだが、SR400は機械式ドラムが導入されている。

 なお、GB350にはタイヤのロックを防ぐ、デュアルチャンネルABSも装備済み。

GB350。オーソドックスなフォルムのフロントマスク。丸型ヘッドランプはLEDタイプを採用。灯火類はフルLED。
SR400。昔ながらのハロゲンバルブを採用したヘッドライトとウインカー。ウインカーデザインも伝統の大径タイプを採用。
GB350にはステッチがあしらわれた、ブラウン表皮の豪奢な段付き型ダブルシートを採用。
SR400はシンプルでフラットな、クラシカルな雰囲気のフラット型ダブルシート。
GB350のリヤ部分。シートエンドのHONDAマークなど、テール周りのデザインは1960年代にタイムスリップした懐かしいイメージ。
昔から変わらない、SR400のリヤ部分。クロームメッキのグラブバーやYAMAHAロゴ入りテールカウルも伝統のアイテム。
GB350のフロント周り。フロントフォークのボトムケースやFフェンダーはマットブラック仕上げ。ブレーキはΦ310mmシングルディスクローター+NISSIN製片押し式2POTキャリパーを組み合わせ。タイヤは19インチのチューブレス(ダンロップ製アローマックスGT601)を採用。
SR400のフロント周り。セリアーニタイプのフロントフォークにはインナーチューブを保護する蛇腹のラバーブーツを装備。クロームメッキフェンダーはスタビライザー効果もあるスチール製。ブレーキはΦ298mmのシングルディスクローターにピンスライド式の異径2ピストンキャリパーを組み合わせ。写真は前モデル。
18インチのアルミキャストホイールを採用したGB350のリヤ周り。ブレーキはΦ240mmディスクローター+油圧式1POTキャリパーを組み合わせ。前後ブレーキはデュアルチャンネルABSを採用。
SR400の前後ホイールはレトロなスポークホイール(前後18インチ)を採用。リヤブレーキは機械式ドラム。リヤショックは伝統のツイン型。写真は前モデル。

ビッグシングルエンジンを比較!GB350はロングストローク型、SR400はショートストローク型

大きな冷却フィンの存在が新鮮に見える、GB350の空冷4スト単気筒SOHCエンジン。エンジン始動方式はセルフスターターのみ。
SR400のエンジン。シリンダー及びシリンダーヘッドの冷却フィンデザインは昔から変わらない。始動方式はキックのみ。初めて扱う人には慣れが必要。

【ホンダGB350(インド仕様のハイネスCB350)】
エンジン:空冷4ストロークSOHC単気筒4バルブ
排気量:348cc
ボア×ストローク:Φ70.0mm×90.519mm
圧縮比:10.5
最高出力:21PS/5,500rpm
最大トルク:3.05kgf-m/3,000rpm
燃料タンク容量:15L
変速機形式:5速リターン
始動方式:セルフ式

【ヤマハSR400(Final Edition Limited)】
エンジン:空冷4ストロークSOHC単気筒2バルブ
排気量:399cc
ボア×ストローク:Φ87.0mm×67.2mm
圧縮比:8.5
最高出力:24PS/6,500rpm
最大トルク:2.9kgf-m/3,000rpm
燃料タンク容量:12L
変速機形式:5速リターン
始動方式:キック式

 どちらもシンプルな空冷4ストロークSOHC単気筒。SR400は簡素な吸気バルブ1本+排気バルブ1本=2バルブだが、GB350は吸排気効率に優れた吸気バルブ2本+排気バルブ2本=4バルブのシリンダーヘッドを採用。

 エンジン始動方式はSR400がキックのみで、“あえて”セルフスターターを省略。一方、GB350は「イマドキのバイクに相応し」キックスターターを省いた、電動のセルフスターターのみ。この点は、伝統を重んじたSR400の個性であり、こだわりとも呼べる点だ。

 SR400のボア×ストロークは、Φ87mm×67.2mmのショートストローク型(絶版となったSR500はΦ87mm×84mm)。両車のボア×ストローク比(ストローク長÷ボア径=高いほどロングストローク度が高い)を数値で換算してみると、

・ヤマハSR400……0.772
・ホンダGB350……1.270

 つまり、ショートストローク型のSR400と、ロングストローク型のハイネスCB350は、同じ4ストローク単気筒SOHCながら、その特性や乗り味はやや異なる模様。

 数値だけを見る限り、SR400はやや回転を上げてパワーを稼ぐタイプ(MAXパワーは6500回転)だが、GB350はロングストロークらしい、中回転域(MAXパワーは5500回転)で楽しめる特性だといえる。

「ロングストローク」や「ショートストローク」の違いとは?

モンキー50を例にしたボア×ストロークのイメージ。街乗りを重視したボア径39mm×ストローク長41.4mmのロングストローク型(ノーマル)のボア径やストローク長を変更すると、パワーはもちろん、乗り味も大きく変わるのが特徴。
 ボア(径)とはピストンとシリンダーの直径。ストローク(長)とはピストンが上下運動する距離(長さ)を示す。

 ロングストローク型とは、ボア径よりもストロークの長いタイプ。低中回転域でネバリ強い、街乗りしやすいエンジン特性。ショートストローク型は、ストローク長よりもボア径のほうが大きいタイプ。高回転までスムーズに回るレーシーなエンジン特性。スクエアストローク型、ボア径とストローク長が同じサイズのタイプ。

 一般的に排気量の大きなロングストローク型は、低中回転域でのモリモリとした太いトルクを活かした、突き上げるような乗り味が楽しめるのが特徴(登り坂でもスロットルをひねれば、力強く走るイメージ)。「回転を上げて走るのではなく、トルクで走る」大排気量でV型2気筒のハーレーダビッドソンは、まさにこれに当てはまる。

 一方、排気量の大きなショートストローク型は、高回転域でパワーを稼ぐ、スポーティーでレーシーなエンジン特性(登り坂ではシフトダウンして高回転をキープすれば、スムーズに走るイメージ)。4気筒エンジン搭載のスポーツモデルなどが典型的な例。

GB350のシフトペダルはミドルバイクには珍しい、カブシリーズと同じシーソー式。つま先と踵でペダルを踏み込めばシフトアップとシフトダウン操作が可能。
美しいSR400のエンジン周り。写真の前モデルから排出ガス規制対応のため、ジェネレーターカバー前に円形のキャニスター(蒸発ガス浄化室/黒くて丸いパーツ)が新装備された。
SR400に採用のデコンプレバー。レバーを握ると排気バルブが開放されてピストン上昇時の圧を抜く仕組み。これを使うと上死点を探し出す時の操作力(踏力)が軽減される。

両車ともスタンダードなセミアップハンドルを採用

ホンダGB350のハンドル周り。全幅は800mmで、SR400よりも50mm広い。手前への絞り込みは少なめ。
ヤマハSR400のハンドル周り。全幅は750mmで、GB350よりも50mm狭いのが特徴。写真は前モデル。

メーターを比較

歴代モデルのイメージを踏襲してセパレートされたSR400のツインメーター。右がエンジン回転計でヤマハの音叉マークとSRの文字。左が速度計で共に白い文字盤が印象的。写真は前モデル。
メーター内に液晶ディスプレイが組み込まれた、実にシンプルなGB350のメーターを装備。液晶ディスプレイには便利なギヤポジションインジケーター、平均燃費、リアルタイム燃費、バッテリー電圧計、燃料警告灯が点灯してからの推定走行可能距離、サイドスタンド警告灯も盛り込まれている。

足着き性を比較(ライダー身長170cm)

GB350。両足は膝にも余裕を持って、べったりと地面を捉えることができる。上体の起きたゆったりと自然体なライディングポジションが印象的。
SR400。車体がスリムなので、足着きは地面を捉える良好なもの。シート高は790mm。膝にも余裕があり、両足共にベッタリと地面を踏ん張ることができる。写真は前モデル。

SR400に関する情報はこちら!

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