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HKS ターボジェネレーター Gen.3改 HKSが開発を進めるターボジェネレーターは、モーター・インバーターの回生効率を改良し、発電開始の低回転化により発電量を向上 PR
- 2020/07/16
- Motor Fan illustrated編集部
HEVへの適用が実用化への近道として、開発中のターボジェネレーターを高電圧対応へとシフトしたHKS。エンジン効率点での発電量向上のため、モーター、インバーターを改良し、回生効率の向上を図った。
TEXT:世良耕太(Kota SERA) PHOTO:市健治(Kenji ICHI) FIGURE:HKS
1.2ℓエンジンとの組み合わせにより燃費換算で約6%向上
エッチ・ケー・エス(HKS)はOEMやアフターマーケット向けと並行し、次世代自動車向けの過給機を開発している。次世代自動車向けはハイパフォーマンスを指向しているのではなく、効率を狙っている。調査機関やメーカーはどこも、電動化した車両が増えていく予測を立てているが、同時に、内燃機関は当面なくならないことを示している。EUのCO2排出量規制は18年の118g/kmが20年には95g/kmになる。95g/kmでも充分に厳しい数値だが、25年には81g/kmになり、30年には59g/kmになる。モーターと組み合わせてハイブリッド化していくにしても、それだけで規制が楽々とクリアできるほど甘くはない状況だ。
そこで、過給技術の出番である。HKSは排気損失に着目し、捨てている排気が持つ熱エネルギーを電気エネルギーに変換して内燃機関の熱効率を高める「ターボジェネレーター」の開発に取り組んでいる。
「新型コロナウイルスの影響はさまざまな方面に及んでいますが、環境規制のロードマップに変化はなさそうです。5年後、10年後に迫った厳しい規制値をクリアするには新しいソリューションが必要です。我々は燃料エネルギーのうち約30%を占める排気損失に目をつけました」
ターボジェネレーターの開発を率いる小林優氏はこのように説明する。
ターボジェネレーターはタービンとジェネレーターの組み合わせだ。ターボチャージャーのコンプレッサーをジェネレーターに置き換えた構成と見ることもできる。排気のエネルギーでタービンを回転させ、同軸上にあるジェネレーターを回すことで熱エネルギーを電気エネルギーに変換する仕組みだ。
ジェネレーション1と呼ぶ最初の世代は電圧12Vで、出力は2kWだった。ジェネレーション2は48V化することで出力が5kWに向上した。19年の「人とくるまのテクノロジー展 横浜」に展示したジェネレーション3は、ハイブリッドシステムとの組み合わせを前提に300V化。空冷だったジェネレーターを水冷化する変更を行ない、1.0ℓクラスのエンジンとの組み合わせで出力6kWのポテンシャルを得るに至った。高電圧ハイブリッドとの組み合わせにしたのは、ジェネレーターの駆動電圧を上げられること。回生した電力の蓄え先がもともとあることだという。
「ジェネレーション3改」と呼ぶ進化版は、組み合わせるエンジンを1.2ℓ3気筒ターボで検証した。過給圧を上げれば排気流量も増え、発電効率が上がる道理だ。ウェイストゲートから捨てる排気の量を減らしつつ、ターボチャージャーにどれだけの仕事をさせるか。ジェネレーターにどれくらいの排気エネルギーを投入するか。こうした観点でテストを進めているという。
スペック上の発電出力は10kW(体格)だ。ポイントは、ジェネレーション3よりも800rpm低いエンジン回転から発電を始められるようになったこと。低流量での立ち上がりを重視して新設計したタービンの効果が大きい。ジェネレーターの水冷ハウジングは、3Dハニカム構造にして表面積を大きくすると同時に水流れを改善。温度の安定化を図った。インバーターの改良もあり、発電開始からの温度上昇が低減。連続運転が可能になっている。
これらの改良の結果、最大6.4kWの発電出力を確認した。熱効率で1.6%の向上、燃費で約6%の向上に相当する。効率点を狙うのか、ワイドレンジを狙うのかは、この技術を適用するエンジン仕様次第だ。F1のMGU-Hと同じ、ターボチャージャーとジェネレーターを一体化したタイプの開発にも着手している。
発電開始を800rpm低回転化
INTRODUCTION:電動車はどのくらい売れるのか?
BASICS1 :電動車の仕組み Q&A
BASICS2 :電動車のスペックの見方
CATALOG:最新電動車図鑑
1) マイクロ&マイルドハイブリッド
2) ストロングハイブリッド
3) バッテリー電気自動車&燃料電池自動車
COLUMN:①BEVの価格競争力は上昇したが……
②48Vシステムの仕組みと狙いを理解する
EPILOGUE:プラグインアウトという考え方
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アルミニウムのテクノロジー6