環境省「NCVプロジェクト」がセルロースナノファイバーを用いた自動車用部品を参考出品 セルロースナノファイバーを全面採用したクルマが公道を走る日は近い!?【エコプロ2017】
- 2018/01/17
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遠藤正賢
“環境”をテーマにした展示会「エコプロ2017」(旧・エコプロダクツ。主催:産業環境管理協会、日本経済新聞社)が12月7~9日の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。
出展社数は616社・団体、小間数は1,414小間を数え、3日間で160,091人の来場者を集めた同展示会において、今回特に注目を集めていたのは、環境省や製紙メーカーを中心に出品が相次いだ「セルロースナノファイバー」(CNF)だった。
CNFは、木材・枝葉・果実やジュースの絞りかす・コーヒーがらなどの食品残渣、稲わら・落ち葉・雑草などの未利用バイオマス、古紙などの植物バイオマスをパルプ化したものを、さらにナノ(10億分の1メートル)化した繊維状物質。植物由来素材のため再生利用が可能で環境負荷が小さいうえ、鉄に対し約1/5の重量と約5倍の強度、250m2/g以上の大きな比表面積を持ち、かつ熱変形はガラスの1/50程度、などの優れた物性を備えている。
環境省は2016年12月、京都大学を代表事業者とし、アイシン精機、デンソー、トヨタテクノクラフト、トヨタ紡織など自動車関連企業を含む約20の研究機関・企業が参画する「NCV(ナノセルロースビークル)プロジェクト」を始動。内外装の樹脂及び金属部品、タイヤ、ガラスなどを可能な限りCNFに代替し、従来製法より約10%軽量化したデモカーを2020年までに製作する計画を発表している。
今回のエコプロでは、「NCVプロジェクト」としてブースを構え、トヨタ紡織がドアトリム、キョーラクがデッキボード、マクセルがエンジンカバー、アイシン精機がインテークマニホールド、昭和丸筒がバンパー/ドアビーム、利昌工業がパネル類を参考出品。CNFを用いたこれら部品の多くは手に触れて持つことが可能な状態で展示されており、エコかつ軽量・高剛性な素材として、実用化に向けた検証が着実に進んでいることを来場者に強くアピールしていた。
製紙メーカーでは、フィンランドの首都ヘルシンキを本拠地とするUPMが、同じくヘルシンキにあるメトロポリア大学などと2010年より共同開発し2014年のジュネーブモーターショーで発表したコンセプトカー「Biofore」を展示。
フレームに鋼管とセルロース/炭素繊維複合材、ドアミラーおよびランプ・給油口まわりにCRFPを用いる以外、ガラスを除くほぼ全ての外板に、同社が「UPM Formi」と呼ぶ木質セルロースを用いたバイオプラスチックを採用。室内のウッドパネルには熱成型木材「UPM Grada」を使用することで、同サイズの一般的な車両に対し約150kg軽量化している。
そして、フロントに搭載される1.2Lディーゼルエンジンの燃料は、化石燃料に対し温室効果ガス排出量を最大80%削減する、木材ベースの再生可能ディーゼル燃料「UPM BioVerno」。さらにはタイヤも専用品で、カーボンブラックをリグニンに代替しているという徹底ぶりだ。
このコンセプトカーはナンバーを取得しており公道走行が可能となっているものの、「あくまでPRのために製作したもので市販化の予定はない」とのこと。だが、木材をベースにしたクルマの究極の姿として、その存在意義は大きいといえるだろう。
自動車メーカーからはホンダ、マツダ、スバル、三菱が出展。ホンダは製造圧力82MPa・充填圧力70MPaの「スマート水素ステーション(SHS)70MPaコンセプト」、マツダは材料着色バイオエンジニアリングプラスチックを用いたCX-5用フロントグリルの試作品、スバルは北海道・美深試験場の開発時に伐採した白樺を活用した丸太いすや間伐材を用いたブース装飾、三菱はアウトランダーPHEVなどを展示した。
また、自動車リサイクルネットワーク大手のNGP日本自動車リサイクル事業協同組合は、エアバッグを展開し部品を取り外したトヨタ・ピクシスエポックと、その車両から実際に生産したリサイクル部品を展示。新品部品とリサイクル部品との価格差も示すことで、社会科見学で訪れた学生のみならずクルマを所有する大人からも大きな注目を集めていた。
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