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内燃機関超基礎講座 | GRのすべて(トヨタのV型6気筒エンジン)

  • 2021/02/21
  • Motor Fan illustrated編集部
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2GR-FSE型。世界で初めてDI+PFIを市販車に搭載した。

ミスリードを誘うようなタイトルで恐縮。さまざまなバリエーションを誇るトヨタのV型6気筒ファミリー・GR型の各種を解説する。

GR系列は後輪駆動車とそれをベースにしたSUVなどに向けて作られた横置き60度オープンデッキのV型6気筒エンジンで、排気量は2.5ℓから4.0ℓまでをカバーする。

シリンダーブロックならびにDOHCシリンダーヘッドはアルミ合金製。鍛造コネクティングロッドとワンピース鋳造のカムシャフト、アルミ合金鋳造のロワー・エキゾースト・マニフォールド、デュアルVVT-i(吸・排気側の連続可変バルブタイミング機構)の装備も特徴である。従来、このゾーンには直列6気筒のJZ系列やG系列、V型6気筒のVZ系列やMZ系列などが混在していたが、2003年デビューの“クラウン”(S180系)に搭載されて登場して以降、このGR系列への統合が進められてきた。

多種多様な仕様を持つことがGR系列の特徴と言えるが、なかでも最も特徴的なのが2GR-FSEであり、直噴(ストイキD-4)とポート噴射を併用するという世界初の方式を採用している。基本的には直噴だが、低・中回転域では状況に応じて両者を使い分ける。これはデュアルVVT-iとあわせ、全回転域での効率を追求したためだ。

*当初、2.5ℓ機4GR-FSEもD-4S採用の旨を記事としておりましたが、該当せず削除修正いたしました。(2021.12.30)

1GR-FE:GR系列中で最大排気量を誇る。レギュラーガス仕様もラインアップ

2002年にGR系列で最初に登場したのが4.0ℓの1GR-FE。主に後輪または4輪駆動のSUVやピックアップトラック用に使われる。当初は吸気側のみのVVT-i(トヨタ流連続可変バルブタイミング機構)を装備していただけだったが、2009年に排気側にも装備するデュアルVVT-iとなった。他のGR系列より低・中速トルクを重視した実用性重視の設計である。

■ 1GR-FE
シリンダー配列 V型6気筒
排気量 3955cc
内径×行程 94.0mm×95.0mm
圧縮比 10.4
最高出力 203kW/5600rpm
最大トルク 380Nm/4400rpm
給気方式 NA
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL  In-Ex/×

2GR-FE:国内外を問わずに多くの車種に積まれるFF用ユニット

3.5ℓの2GR-FEは2005年にデビューした前輪駆動車用のユニットで、国内では“ハリアー”のようなSUVや“エスティマ”のようなミニバン、海外では“カムリ”のようなセダンなど、多くの車種に搭載されている。またロータスのスポーツカー“エヴォーラ”にも供給されている。吸・排気側双方の連続可変バルブタイミング機構、デュアルVVT-iを装備する。

■ 2GR-FE
シリンダー配列 V型6気筒
排気量 3456cc
内径×行程 94.0mm×83.0mm
圧縮比 10.8
最高出力 206kW/6200rpm
最大トルク 344Nm/4700rpm
給気方式 NA
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL  In-Ex/×

2GR-FSE:世界初の直噴+ポート噴射併用の実績。高級車向けエンジン

2006年に登場した2GR-FSEは上掲の2GR-FEに、世界初となる直噴とポート噴射を併用する「D-4S」を初めて採用したエンジン。これにより全回転域でのトルクを確保すると同時に高出力、低燃費を実現している。またメカニカルノイズの低減策も徹底しており、静粛性に優れるため、トヨタの“クラウン”やレクサス“GS”といった高級車に搭載されている。

■ 2GR-FSE
シリンダー配列 V型6気筒
排気量 3456cc
内径×行程 94.0mm×83.0mm
圧縮比 11.8
最高出力 232kW/6400rpm
最大トルク 377Nm/4800rpm
給気方式 NA
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL  In-Ex/×

2GR-FXE:吸気バルブ遅閉じで高膨張比サイクルを狙う

GS450hに搭載されて初登場した、ハイブリッド車用ユニット。2GR-FSE型がベース。吸気弁の閉じ時期を最大100度近くまで遅くし、アトキンソンサイクルを実現する。これに伴い、圧縮比は11.8から13.0に高められた。また、筒内ガス流動の高効率化を図り、D-4Sの直噴側インジェクターの最大噴射圧を13MPaから20MPaまで高圧化、さらには噴射パターンも「縦Wスリット」形状から「高分散横スリット」形状に改められている。

■ 2GR-FXE
シリンダー配列 V型6気筒
排気量 3456cc
内径×行程 94.0mm×83.0mm
圧縮比 13.0
最高出力 217kW/6000rpm
最大トルク 356Nm/4500rpm
給気方式 NA
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL  In-Ex/×

2GR-FXS:2GR-FXEの横置き版

中大型HEVに用いるアトキンソンサイクルユニットで、2GR-FXEをベースとしたユニット。横置きレイアウト。D-4Sを備え、運転状態によってポート噴射と筒内直接噴射を使い分けるのは同様ながら、中間ロックVVTや排気冷却などを用いて、さらに高効率を追求した。

■ 2GR-FXS
シリンダー配列 V型6気筒
排気量 3456cc
内径×行程 94.0mm×83.0mm
圧縮比 13.0
最高出力 193kW/6000rpm
最大トルク 335Nm/4600rpm
給気方式 NA
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL  In-Ex/×

2GR-FKS:2GR-FEのアップデート版

横置き型のD-4S仕様で、アルファード/ヴェルファイアに初搭載された。ポートインジェクターは12噴孔の最高噴射圧530kPa、筒内噴射インジェクターは2〜20MPaの噴射圧制御としている。同じ横置きの2GR-FE型に対して吸気側のVVTを可動角80度/中間ロック機構の「VVT-iW」に変更、吸気弁閉じ時期を105度まで遅らせてアトキンソンサイクルとする。また、ピストンとコンロッドを約10%軽量化し高回転化および中低速域のトルク向上をともに満足させたのもトピック。

■ 2GR-FKS
シリンダー配列 V型6気筒
排気量 3456cc
内径×行程 94.0×83.0mm
圧縮比 11.8
最高出力 221kW/6600rpm
最大トルク 361Nm/4600-4700rpm
給気方式 NA
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 DI+PFI
VVT/VVL In/×

3GR-FSE:複雑な機構を排して扱いやすくした直噴専用仕様

GR系列のなかで普及版とも言える3ℓの3GR系にはポート噴射仕様の3GR-FEと「D-4」直噴仕様の3GR-FSEがあり、両者を併用する「D-4S」を採用した仕様はない。ただしデュアルVVT-iは双方ともに装備する。ポート噴射仕様の3GR-FEは主に中国などのアジア・中東向けの車両に使用されており、日本や欧米では直噴仕様の3GR-FSEの方が使用される。

■ 3GR-FSE
シリンダー配列 V型6気筒
排気量 2944cc
内径×行程 87.5mm×83.0mm
圧縮比 11.5
最高出力 188kW/6200rpm
最大トルク 314Nm/3600rpm
給気方式 NA
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 DI
VVT/VVL  In-Ex/×

4GR-FSE:GRファミリー一番乗りの2.5ℓ版

12代目クラウンに搭載されて登場したGRエンジンファミリーのファーストシリーズで、上記の3GR-FSEと同時の発表だった。ともに国内仕様トヨタ車のFR用V6エンジンとしては最初にあたる機種だった。燃料噴射は直噴式D-4で、超希薄燃焼を図る成層燃焼ではなく全域ストイキとしている。これは希薄燃焼に伴って発生不可避のNOxを嫌ったため。登場時の燃料噴射圧はアイドル時4MPa、軽負荷時6MPa、高負荷時13MPaという具合だった。

*当初、4GR-FSEもD-4S採用の旨を記事としておりましたが、該当せず削除修正いたしました。(2021.12.30)

■ 4GR-FSE
シリンダー配列 V型6気筒
排気量 2499cc
内径×行程 83.0mm×77.0mm
圧縮比 12.0
最高出力 158kW/6400rpm
最大トルク 260Nm/3800rpm
給気方式 NA
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 DI
VVT/VVL  In-Ex/×

8GR-FXS:GRシリーズの最終進化版

ベースとなった2GR-FXEからは、動弁系・ピストンの軽量化、エキマニ一体型シリンダーヘッド、EGRの付加等が施され、出力・トルクともピーク発生を高回転域に移行。吸気側VVTは可動域を拡大し中間ロック機構を備えたVVT-iWに変更、アトキンソンサイクル運転に備える。搭載車種のLC500hでは、4段変速機と電気式CVTを組み合わせて5.0ℓV8ハイブリッドを超える駆動力を発生するとしている。

■ 8GR-FXS
シリンダー配列 V型6気筒
排気量 3456cc
内径×行程 94.0×83.0mm
圧縮比 13.0
最高出力 220kW/6600rpm
最大トルク 356Nm/5100rpm
給気方式 NA
カム配置 DOHC
ブロック材 アルミ合金
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 DI+PFI
VVT/VVL In/×

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