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GaN(窒化ガリウム)を半導体に用いたEVコンパクトスポーツカーと、CNF(セルロースナノファイバー)を内外装に用いたスーパースポーツを展示 環境省の次世代素材コンセプトカーAGN(All GaN Vehicle)とNCV(Nano Cellulose Vehicle)が子供達にも大人気!【東京モーターショー2019】

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環境省AGN(All GaN Vehicle)

東京モーターショー2019で青海展示棟Bホールにブースを構えた環境省は、かねてより産学官共同で自動車への活用を研究開発している、GaN(窒化ガリウム)とCNF(セルロースナノファイバー)、それぞれを用いたコンセプトカーを展示。業界関係者のみならず一般来場者、特に子供達からも注目を集めていた、その中身とは?

REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢/環境省

環境省AGN(All GaN Vehicle)

 GaN(窒化ガリウム)は青色LEDの材料として知られているが、これを半導体に用いれば、エネルギー損失を約1/10に低減できることから、次世代パワー半導体材料として注目されている。

(左より)名古屋大学が開発したGaNトラクションインバータ、長野日本無線が開発したGaN DC-DCコンバータ、小糸製作所が開発したGaNレーザーハイビームランプ
GaNトラクションインバータの内部構造
GaN DC-DCコンバータの内部構造

GaNレーザーハイビームランプとLEDランプとの構造・性能比較
 環境省は今回、青色LEDの実用化に大きく貢献しノーベル物理学賞を受賞した、名古屋大学の天野浩教授が主導する研究機関と企業のオープンイノベーション体制で、GaN技術を様々な部位に応用したEVコンパクトスポーツカーのコンセプトモデル「All GaN Vehicle(AGV) 」を開発。GaNをトラクションインバータ、DC-DCコンバータ、レーザーハイビームなどの半導体に採用した。

エアレスタイヤとインホイールモーターを採用した後輪の内側。CFRP製トーションビームも見て取れる
GaNのパッケージング図と主要スペック

 また、前後輪ともエアレスタイヤとしつつ、後輪にインホイールモーターを搭載した、RR(リヤモーター・リヤドライブ)の駆動方式を採用。フロント・ストラット式、リヤ・トーションビーム式のサスペンションはいずれもCFRP(炭素繊維強化樹脂)製で、ホイールベース間には17.5kWhのリチウムイオン電池を搭載している。

GaNトラクションインバータ採用によるCO2排出量削減効果のシミュレーション結果グラフ
DC-DCコンバータの小型化ロードマップ

 これらの技術により、従来技術を用いた車両に対しCO2排出量を約20%低減するほか、電費も20%改善。さらに、パワーモジュールの約30%小型化を目指しており、これが実現すればデザイン自由度の飛躍的な向上が見込まれる。さらにGaNインバーターは、高周波でのモーター駆動が可能となるため、従来のモーターで課題となっている電磁ノイズを低減することも可能だという。

環境省NCV(Nano Cellulose Vehicle)

 もう一台のコンセプトカー「NCV(Nano Cellulose Vehicle)」は、植物から取れるセルロースを化学的・機械的処理により数~数十ナノメートルに微細化したナノ繊維で、環境負荷が少なく、かつ鋼鉄の1/5の軽さで5倍の強度を持ち、線膨張率はガラスの1/50程度などと性能面でも優れる、CNF(セルロースナノファイバー)を内外装の多くに採用したモデル。

NCVのCNF使用部位
 こちらは京都大学が代表事業者となり、計22の大学・研究機関・企業等で構成されるコンソーシアムを構築して、2016年10月26日より「NCVプロジェクト」として研究開発がスタート。部品単体では最大5割程度、車体全体で1割以上の軽量化を実現するほか、素材製造段階から廃棄・リサイクル段階までのライフサイクル全体でCO2排出量を約1割削減する見込みとしている。

環境省NCV(Nano Cellulose Vehicle)

 NCVプロジェクトでは過去の展示会や単独イベントでも、CNFを用いた部品単体やそれらを装着した実験車両を展示してきたが、1台のコンセプトカーとして出品したのは今回が初。

木材由来の素材感を前面に押し出したNCVのインテリア

 シザーズドアを採用したミッドシップスーパースポーツのプロポーションに、木材由来の素材感を前面に押し出した「和」のテイスト満載のインテリアを組み合わせたこのモデルは、特に小学生以下の来場者から、AGV以上に注目の的に。さらに説明書きを読んで「え!? このクルマ、木で出来ているの!? すげえ!」と叫ぶ姿が何度も見られた。

 AGVとNCV、いずれも技術とスタイルの両面で、未来のクルマに対し「夢」を抱かせてくれるという、コンセプトカー本来の魅力に満ち溢れていた。

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