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街も峠もイケる95馬力エンジン。|100万円以下で買えるミドルスポーツ、トライアンフ・ストリートトリプルS試乗

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ストリートトリプルはRSを筆頭に3機種を揃えるミドルスポーツネイキッド。“S”はシリーズ中最も親しみやすい存在で、660cc 3気筒エンジンを搭載する。LEDヘッドランプやTFT液晶ディプレイ、バックミラー等、装備内容が一新された2020年最新モデルに試乗した。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●徳永 茂(TOKUNAGA Shigeru)
取材協力●トライアンフ モーターサイクル ジャパン

トライアンフ・ストリートトリプル S.......999,000円

クリスタル ホワイト
ストリートトリプル R Low.......1,295,000円
ストリートトリプル RS.......1,465,000円

 初代ストリートトリプルは2007年に登場。見るからにアグレッシブな外観デザインを纏ったミドルクラスのネイキッドスポーツだ。トップスペックを誇るRSを筆頭に、R Low(低シート高)とSの3機種が揃えられ、今回試乗した“S”は多くのユーザーに親しみやすいエントリークラスに位置づけられている。
 主要マーケットの欧州ではA2ライセンスに対応するパワーセーブモデル(最高出力が35Kw〔47.6ps〕、最大トルクは60Nm)を投入しているが、日本国内に導入されているのはフルパワー仕様で95.2psの最高出力と66Nmの最大トルクを発揮する。
 
 2019年からロードレース世界選手権のモト2クラスに供給されている注目のエンジンは“RS”に搭載の765ccだが、このSには弟分と言える660cc直(並)列3気筒エンジンを搭載。右サイドカムチェーン方式の水冷DOHC12バルブ等の主要メカニズムは基本的に共通である。
 燃焼室のスクエア比(ボア÷ストローク)は1.57で、1.46のRSより一段とショートストロークタイプだ。ただし、1L当たり出力は144ps。高圧縮比を得て同160psを稼ぎだすRSよりチューニング・レベルは控えめ。とはいえ中々の高性能エンジンであることに疑いようは無い。
 
 ちなみにRS、R、Sは、アンダーカウルの装備やマフラーの違い、ボルトオンされているサブフレーム(シートレール)の色違い等で見分けられる。また、クリスタルホワイトのカラーリングはSだけである。
 マスを車体中心部に集めた塊感のある外観デザインが印象的。フロントに倒立フォークを採用し、リヤには鋳造アルミニウム合金製の個性的なガルアームにボトムリンク式モノショックを組み合わせる。前後サスペンションは共に日本のShowa製品を採用している。
 フロントブレーキはブレンボのフローティングディスクローターにNISSIN製キャリパーを、リヤブレーキはブレンボ製キャリパーを採用。そして前後タイヤはピレリ製DIABLO ROSSOⅢを履いている。スポーツネイキッドとしての役者に不足なしである。

3気筒ならではの柔軟な出力特性が魅力的

 高さ810mmのシートに跨がると、両足の踵までがちょうどぴったりと地面を捉えることができた。170kgほどの車重は決して重過ぎない。おおよそのサイズ感はホンダCB400スーパーフォアと同レベルだが、全体的フォルムはマッシブにシェイプした様な感じ。
 車体引き起し等の扱いはCB(4気筒)より軽く感じられ、カワサキZ400(2気筒)レベルの親しみやすさに近い。つまり国産ミドルスポーツを扱う感覚と良く似た、親しみと安心感を覚えた。
 サイズ的にはコンパクトな雰囲気で、ステップ位置はやや後退ぎみ。ライダーの上体が若干前傾姿勢となるライディングポジションでスポーティな乗り味を直感する。ホッと落ち着けると言うよりは、少しワクワクと胸踊るアグレッシブなムードが漂ってくるのである。

 3気筒エンジンを始動すると、右出しショートアップマフラーからは、少し図太いエキゾーストノートを響かせてくれ、中々の迫力が伝わって来る。同クラス4気筒エンジンの繊細さと比較すると、排気量の大きなエンジンに乗るような図太いイメージで実際それはなかなか頼もしい。
 発進時のクラッチミートから十分に太いトルクが発揮されていて、低速域でもとても粘り強い。わざと早め早めにシフトアップして2000rpm前後の領域を使っても、へこたれる事のない底力を発揮する。
 そして何よりも4000~9000rpmあたりまでの中高速域で、スムーズさを伴う柔軟で豪快なスロットルレスポンスの発揮が秀逸。とても扱いやすいのである。感覚的に俊敏と表現するタイプでは無いが、吹け上がりの小気味良さも印象深い。
 それらのメリットは普段使いの街乗りでも遺憾なく発揮されるし、郊外の峠道やサーキットのスポーツ走行でも持てるパフォーマンスを存分に発揮させやすく、その強かな動力性能は侮れない。
 特筆すべきは、そのポテンシャルがスポーツ用途だけではなく、足代わりの市街地利用からツーリング等、ゆったり気分でクルージングする時にも相応しい心地良さが感じられる点も見逃せないのである。
 
 前後サスペンションは作動具合が硬めで、荒れた路面ではやや跳ねる傾向も見せるが、特にリヤのフットワークは優秀。交差点を右左折するだけでも、バイクを倒し込んだ時にリヤサスペンションが沈み込んだところで、タイヤが路面に押さえつけられる感覚が着実に伝わってくる。
 後輪から伝わるその踏ん張り具合に合わせて前述の出力特性が相まって、しっかりと適度な駆動力を掛けながらコーナーを脱出でき、タイヤのグリップ力にも確かな信頼&安心感を覚えられるのである。
 この旋回コントロールの気持ちよさは抜群。Uターン等の小回り性ではハンドル切れ角の小ささが少し残念だったが、十分にレベルの高いブレーキ性能も含めて市街地でも峠道でもワクワクとスポーティな気持ちの良い走りが堪能できた。
 
 ちなみにローギヤでエンジンを5,000rpm回した時のスピードは43km/h。6速トップギヤ100km/hクルージング時のエンジン回転数は5,000rpmだった。
 車両価格は約100万円。国産ミドルクラスと比較すると少し高めな設定で上級クラスに匹敵するが、軽く親しみやすい乗り味と元気の良いハイパフォーマンスを発揮できる楽しさは実に魅力的である。

足つき性チェック(身長168cm)

シート高は810mm。ご覧の通り膝に余裕を持って両足はべったりと地面を捉えることができる。上体はほんの少し前傾となり、ややスポーティな印象を受ける。

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