時代を先取りした1987年(昭和62年)登場のお宝モデル 【モンキーR(1987)アーカイブ】モンキーなのにツインチューブフレーム! 馬力も3.1→4.5PSに!/ホンダ
- 2019/02/08
- MotorFan編集部 北 秀昭
『パワーのあるバイク=1番』という、熾烈な“パワー競争”の時代に登場したモンキーのレーシングバージョン、モンキーR。4.5psのパワーユニット、スタンダードモデルとはまったく異なるフレームや足周りを搭載するなど、ホンダの“R(レーシング)”という名に相応しい、アグレッシブな装備が随所に投入。絶版後に人気を獲得するという数奇な運命をたどったこの名車をクローズアップ!
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
PHOTO●4ミニ.net http://4-mini.net
1987年(昭和62年)に登場したモンキーRは、バイクブーム&レーサーレプリカブーム真っ只中の時代に生まれた、モンキーのスポーツバージョン。
モンキーRには、出力を一段と向上(3.1から4.5馬力)させた、モンキー用ベースの空冷4サイクル単気筒49ccエンジンを搭載。フレームはコンパクトで高剛性のバックボーン式・ツインチューブフレームを採用。
ホイールはスタンダードの8インチから、10インチにサイズアップ。フロントには油圧式ディスクブレーキや、インナー径φ30のテレスコピックフォークを採用するなど、コンパクトなボディサイズながら、本格的な装備を導入。
これらに加え、軽快なライディングポジションを生むハンドル形状やステップ(アルミ製)位置などとあいまって、より軽快でスポーティーな走行が楽しめる個性派レジャーバイクとしているのがポイントだ。
当時の発売価格は15万9000円。なお、1988年型のスタンダードモンキーは12万2000円だった。
モンキーRは“モンキー”という名称ながら、モンキーとは思えない“R(レーシング)”な装備が導入されている(下記参照)。
モンキー“R(レーシング)”ならではの、レーシーな装備に注目!
・エアープレーンタイプのタンクキャップを採用した大容量(7・0L)燃料タンク。
・スポーティーな極太クロームメッキのマフラーカバー。
・ホイールのスポーク部とハブ部をアルミ製の一体キャストにした、軽量でスポーティーな10インチのコムキャストホイール。
・ワイドで力強いイメージのチューブレスタイヤ(3.50-10)。
・エアロフォルムの可動式リヤフェンダー。
・ライディングスピリッツを駆り立てる低めにセットされたスワローハンドル。
・メッシュ&肉抜き加工された独自のジェネレーターカバー。
・スポーティーなポジションを可能にするバックステップを標準装備。
・スポーツ走行にも対応する本格的なモノショック型スイングアーム。
・NSR50/80用と互換性のある220mmリヤショック。
プレイバック・1987年(昭和62年) “ハイソカー”ブーム
日本の景気がバブル期に向かう中、若者を中心にハイソカー(ハイ・ソサエティー・カー(上流階級の車)の略)と呼ばれるクルマの人気が急上昇した。
車種は2ドアクーペのソアラ(写真は2000ツインターボモデル)を筆頭に、4ドアセダンのマークⅡ、クレスタ、クラウン、チェイサーなど。
カラーはスーパーホワイトが定番。「シャコタン(車高が短い)」と呼ばれたローダウン仕様に加え、エアロパーツをフルに装着するカスタムも人気だった。
プレイバック・1988年(昭和63年) 東京ドームが完成
モンキーRが発売された翌年の1998年(昭和63年)には、日本初のドーム型屋内野球場「東京ドーム」が完成。また、四国と本州を結ぶ「瀬戸大橋」が開通した。
四輪では日産シーマが登場し、バブル経済を背景に爆発的なヒット。これは「シーマ現象」とも呼ばれた。
この頃、ファミコンソフト「ドラゴンクエストⅢ」が発売され、爆発的ヒット。学校を欠席して購入の列に並んだ小中学生が、多数補導された。
ソウルオリンピックにおいてベン・ジョンソンが、陸上100m走で“幻の9秒83(後にドーピングが発覚して記録は抹消)”を出したのも1988年の出来事だ。
モンキーRが短命に終わったその理由は?
モンキーRがデビューした時代は、バイクブームとともに、ミニバイクレースが全盛。モンキーRの発売から2ヵ月後の1987年5月、7.2psの2スト水冷エンジン&前後ディスクブレーキを装備した本格派2ストスポーツミニ、「NSR50」が、満を持してデビューした。
ストリートユーザーはもちろん、レースユーザーの目は「ワークスマシン、NSR500の2/3サイズモデル」を謳ったNSR50に集中。ちなみにNSR50は、モンキーRをベースに開発された。
“ミニバイクレース最強”を目指して開発・リリースされたNSR50の影に隠れてしまった兄貴分のモンキーRは、1988年にアップハンドルやリヤキャリア等を装備した「モンキーRT」が追加発売されるものの、人気に火が点くことなくひっそりと姿を消した。
しかし数年後にやってきたモンキーブームとともに、モンキーRの人気は絶版後に急上昇。その希少性から、程度の良い車両は現在でも高値で取引されている。
モンキーRの主要諸元
通称名:モンキーR
型式:A-AB22
全長(mm):1,510
全幅(mm):610
全高(mm):800
軸距(mm):1,055
シート高(mm):650
乾燥重量(kg):67
車両重量(kg):73
燃料消費率(km/L):100.2(30km/h)
エンジン型式:空冷・4サイクル単気筒
総排気量(cm3):49
内径×行程(mm):39.0×41.4
圧縮比:9.8
最高出力(PS/rpm):4.5/8,500
最大トルク(kg-m/rpm):0.42/6,500
キャブレター型式:PB92
始動方式:キック式
点火方式:CDIマグネット点火
燃料タンク容量(L):7.0
潤滑油容量(L):0.8
変速機型式:常時噛合式
変速比:
1速 3.272
2速 1.937
3速 1.350
4速 1.090
キャスター(度)/トレール(mm):25°00′/64
タイヤサイズ:
前3.50-10-2PR
後3.50-10-4PR
サスペンション 前/後:テレスコピック/スイングアーム
ブレーキ型式 前/後:油圧ディスク/機械式リーディングトレーリング
発売価格(当時):15万9000円
■お詫びと訂正
記事中のベン・ジョンソン元選手のタイム表記に誤りがありました。
誤:9秒85
正:9秒83
読者の皆様ならびに、関係者の皆様にご迷惑をおかけいたしましたことお詫び申し上げます。
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