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♯2 「これなら思い切って攻めても大丈夫」Ninja ZX-10R SEは、安心をもたらす絶対的な存在だ。/カワサキ・サーキットインプレ

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都内から相棒のNinja ZX-10R SEを飛ばし、筑波サーキットへ。道中もなかなか楽しませてもらったが、やはり本領を発揮するのは200km/h以上のステージだと再確認した。

REPORT●後藤武 PHOTO●長谷川 徹

カワサキ Ninja ZX-10R SE……2,656,800円

 スーパースポーツの本当のパフォーマンスと楽しさを知りたかったら、サーキットに持っていくしかない。ということで、Ninja ZX-10RSEを持ち込んだのは筑波サーキットだ。筑波サーキットでは、ナンバー付きのノーマル車を対象としたファミリー走行枠がある。
 レース用のマシンも走るスポーツ走行枠では、レース対応のアンダーガードなどが必要になるなど、マシンのモディファイが必要になる。速い人達と走って腕を磨きたいというのなら間違いなくスポーツ走行だが、ストリートマシンのままサーキットまで自走していって走るのであればファミリー走行だろう。もちろん今回ZX-10RSEを走らせたのもファミリー走行枠になる。
 最近は、スポーツバイクの性能が向上したため、サーキットで思い切り走らせようという人も増えてきている。峠でスーパースポーツを走らせても限界まで攻めることは不可能だ。その点、サーキットなら思う存分全開にすることができるし、クルマが飛び出してくるようなこともない。同じようにスポーツライディングしたい仲間も一緒に走るから、刺激もある。短い時間でも濃密な時間を楽しむことができるわけだ。スーパースポーツのライディングをとことん楽しむのであれば、間違いなくサーキットを走るべきなのである。

 ZX-10RSEでコースインしてすぐに思ったのは、ストリートでの乗りやすさがサーキットでも感じられること。コースインして一発目のこのフィーリングは、ライダーに「これなら思い切って攻めても大丈夫そうだ」という安心感を与えてくれる。メンタルな部分に大きく左右される二輪のライディングでは、こういう点も非常に重要な要素になる。
 
 特に素晴らしいのがコーナーへの侵入。スーパースポーツで筑波を走ると各コーナーの進入でハードなブレーキングをすることになる。タイヤのグリップもいいから、ブレーキングポイントを奥にして、減速しながら旋回していく。この時の安定感と操作性が抜群に良い。
フレーム、フォークの剛性が高いことに加えて、ここでも電子制御のサスがしなやかに高い荷重を受け止めてくれる。だから強くブレーキをかけているのにマシンが起き上がったりせず、とても素直にバンクしていく。強烈に減速しながら曲がり込んでいくこの感覚は感動ものだ。
 下からトルクがあるエンジンだけれどサーキットで使うのは8000rpm以上。本格的にパワーが出るのは10000rpmあたりからだ。車重208kgで204psの組み合わせが生み出す全開加速というものは恐ろしいほどで400mしかない筑波の裏ストレートでも200km/hを一瞬で超え、最終コーナー手前では240km/hくらいに到達する。
 このスピードで最終コーナーに飛び込んでいくのだけれど、ここは100Rから90Rへの複合コーナー。高速道路のインターチェンジでグルっと回っているところのコーナーが100Rだから、あそこに全開で突っ込んで行くようなもの。
 もちろん手前でスロットルを戻してブレーキングする。でも十分に減速して……なんていう走り方じゃタイムは出ないから「こんなんじゃ絶対曲がれない!!」って思うくらい(あくまでもイメージ)のところまで突っ込んでいって減速しながらバンクさせていく。昔は根性一発コーナーなんて言われた所以である。
 でもZX-10RSEは、こういうところでも恐怖感がない。先に説明したプレーキングでの安定感が、このスピードでも効いている。しかもブレンボのブレーキはコントロール性が素晴らしい。出来の悪いオートバイだと「ひぇー怖い」なんて叫びそうになるのだけれど、こいつはそういう感覚が皆無。沈着冷静にタイムアタックすることができる。
 ちなみに204psのエンジンがどうかというと、1回目の走行で実はLモードで走っていた。一番パワーが出なくなるヤツだ。ZX-10RSEの場合、それでも極端に遅くなったりしないから「おお、結構速いじゃん」なんて喜んで走っていた。走行後、チェックしてパワーが一番出ていないことを知って愕然。2回目の走行はフルパワーモードにした。
 意外に低中速のトルク感は、それほど変わった感じがしなかったけれど、ストレートで全開にした時の迫力はもうまったく別物。ストレートなんてシフトアップした瞬間、フロントが浮きそうになって、それをトラクションコントロールが絶妙なところで止めてくれているのが伝わってくる。そんな凶悪な加速しているのに不安感もなく楽しんでいられたのは、この車体と足周りのおかげだ。クイックシフターの作動も正確で、一度体感してしまうとこれなしでサーキットを走りたくなくなってしまうくらい。 
 一昔前、タイムを出すバイクは、乗りにくくて、でもそれを抑えこんで乗るからタイムが出る、なんて話があった。けれどNinja ZX-10R SEにその常識は当てはまらない。メッチャ乗りやすくて、楽しく走っていたらタイムが上がっていくという感じだ。(レースレベルになるとまた話が違ってくるのだが)。
 このバイクのパワーを使い切って、本格的に乗りこなすには相応の時間が必要だろう。しかし、スポーツライディングが好きなライダーだったら、間違いなく挑んでみたくなる。そんな風にライダーをやる気にさせるマシンである。

ディテール解説

WSBを通して進化したエンジン。2016年モデルをベースとして吸気ポートのストレート化、吸排気にチタンバルブを採用(排気はバルプ経を拡大)、燃焼室形状、ピストントップ形状を変更。カムのオーバーラップを増やすなどして高回転でのパワーを向上させている。
フロントフォークはSHOWAと共同開発したNinja ZX-10Rバランスフリーフォークに電子制御機能を追加。フロントホイールはマルケジーニと共同開発のアルミ鍛造。ブレーキはφ330のブレンボ製ステンレスローターとラジアルマウントされたブレンボ50Mものブロックキャリパーの組み合わせ。
最新の規制をクリアしながら204psを実現させるため、エキゾーストは車体下部に大きな膨張室を持つ。リアブレーキはφ220mmのローターでスライドピンタイプの1ピストンキャリパー。コーナー進入時などで姿勢や速度を調整する時も扱いやすい。
リアショックはフロント同様SHOWAと開発したバランスリー・リアクッション・ライトで電子制御を追加。前後に量産車初のストロークセンサーを装備、車速、ストロークスピードをIMUが検知して常に最適な減衰に調整する。サスペンションはマニュアル、ロード、トラックの3モードを選択することができ、マニュアルモードでは伸圧減衰をそれぞれ15段階で調整することが可能。

Ninja ZX-10R SE 主要諸元

車名(通称名):Ninja ZX-10R SE
マーケットコード:ZX1002HKF
型式:2BL-ZXT02E
全長x全幅x全高:2,085mm×740mm×1,145mm
軸間距離:1,440mm
最低地上高:145mm
シート高:835mm
キャスター/トレール:25.0°/ 107mm
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC4バルブ
総排気量:998cm³
内径x行程/圧縮比:76.0mm×55.0mm/ 13.0:1
最高出力:149kW(203PS)/13,500rpm ラムエア加圧時:156kW(212PS)/13,500rpm
最大トルク:114N・m(11.6kgf・m)/11,200rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:バッテリ&コイル(トランジスタ点火)
潤滑方式:ウェットサンプ
エンジンオイル容量:3.7L
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常噛6段リターン
クラッチ形式:湿式多板
ギヤ・レシオ:
 1速 2.600 (39/15)
 2速 2.222 (40/18)
 3速 1.944 (35/18)
 4速 1.722 (31/18)
 5速 1.550 (31/20)
 6速 1.391 (32/23)
一次減速比 / 二次減速比:1.681 (79/47)/2.294(39/17)
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式 :
 前 テレスコピック(倒立・インナーチューブ径43mm)
 後 スイングアーム(ホリゾンタルバックリンク)
ホイールトラベル:
 前 120mm
 後 114mm
タイヤサイズ :
 前 120/70ZR17M/C (58W)
 後 190/55ZR17M/C (75W)
ホイールサイズ:
 前 17M/C×MT3.50
 後 17M/C×MT6.00
ブレーキ形式:
 前 デュアルディスク 330mm (外径)
 後 シングルディスク 220mm (外径)
ステアリングアングル (左/右):27°/ 27°
車両重量:208kg
燃料タンク容量:17L
乗車定員:2名
燃料消費率(km/L):
 ※1 21.0km/L(国土交通省届出値:60km/h・定地燃費値、2名乗車時)
 ※2 16.8㎞/L(WMTCモード値 クラス3-2、1名乗車時)※3
最小回転半径:3.4m
カラー:メタリックカーボングレー×メタリックフラットプラチナグレー(GY2)

※1:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状況などの諸条件により異なります。
※2:定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。
※3:WMTCモード値とは、発進・加速・停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。

後藤 武

オートバイ誌クラブマン元編集長。顔に似合わず繊細な感覚の持ち主で、各車の違いを読み取る。

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