国交省、「第3回車載式故障診断装置を活用した自動車検査手法のあり方検討会」を開催 スキャンツール(故障診断機)を使った車検の開始は2021年度に前倒し!?
- 2018/02/27
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遠藤正賢
国土交通省は2月26日、霞ヶ関ビルディング(東京都千代田区)で「第3回車載式故障診断装置を活用した自動車検査手法のあり方検討会」を開催した。
今回は、
1.OBD(車載式故障診断装置)検査の対象車種・装置と適用時期
2.警告灯の活用可能性について
3.車検時に特定DCTを読み取る手法の実施面の課題とフィージビリティ
を主な論点とし、国土交通省自動車局整備課から、下記の通り素案が示された。
1.OBD検査の対象車種・装置と適用時期
<対象車種>
型式指定自動車または多仕様自動車、国連車両区分M1・M2・M3・N1・N2・N3に該当する乗用車・バス・トラック、2021年以降の新型車(自動車側の対応、車検場の準備期間などを考慮し変更する可能性あり)
<対象装置>
排出ガス等発散防止装置、ABS、ESC、自動ブレーキ、ブレーキアシスト、車両接近通報装置、国連カテゴリーAおよびB1に該当する自動運転技術はフェーズ1とし、その他の運転支援技術・自動運転技術はそれ以降。
<適用時期>
フェーズ1に該当するものより2021年以降の新型車から適用。ただし保安基準に性能要件が規定されていないものは規定されるまで対象としない。
2.警告灯の活用可能性について
<警告灯車検のメリット>
・ユーザーの納得感を得やすい。
・設備導入なしに簡単に実施可能。
<警告灯車検の課題>
・点灯条件が基準に明記されておらず、自動車メーカーが検査基準を決めることになる。・国際基準化には時間がかかる。
・警告灯表示がクリスマスツリーのようになり、正確な判別が困難。
・どの部品の故障か特定できない。
・保安基準に抵触するか判断できない。
・レディネスコードの有無を確認できない。
<「特定DTC(保安基準の性能要件を満たさなくなる「故障」に関わる故障コード)」と警告灯の関係>
・OBDは異常値を検知できてもそれを故障(損傷等により不可逆な異常に陥り、修理や故障が必要な状態)と断定できない。
・警告灯点灯の目的は、ドライバーが危険な状態にあることをただちに知らせること。点灯条件は「特定DTC」と必ずしも一致しない。
・そのため、性能要件を満たさず、OBDが「故障」と推断可能な異常(=警告灯オフ・特定DTCオン、警告灯オン・特定DTCオンのもの)を車検不合格としたい。冗長性のあるものは一系統が故障しても性能要件を満たすため車検不合格としない。
<警告灯の基準について>
・警告灯本来の目的や設計の自由度を損なわないよう、警告灯の点灯条件に関する基準は変更しない。
・警告灯点灯条件の国際基準による統一化・明確化を進めるが、時間がかかるためOBD検査の導入と並行して進める。
3.車検時に特定DCTを読み取る手法の実施面の課題とフィージビリティ
<主な課題>
・自動車メーカーが提出する「特定DTC」情報が膨大(約3500万件/年)。また、新型車投入等のたびに情報の更新が必要。この際、入力ミスがあると車検時に読み取れない。
・「特定DTC」管理サーバーに保管されるデータ量は膨大であり、かつ増加し続ける。
・管理サーバーの「特定DTC」情報の更新にあわせて、定期的に法定スキャンツールをアップデートする必要がある。
・車検時に、法定スキャンツールで確実に「特定DTC」を読み取れるか(通信プロトコルの整合等)。
・法定スキャンツールは、自動車技術総合機構が使用するもののほか、軽自動車検査協会、整備工場(ディーラー、専業)が使用するものもあることに留意が必要(全国で数万~十数万台)。
・一連の「特定DTC」情報の流れについて、セキュリティ対策や不正防止策が必要。
これらの案や課題を踏まえ今後は、4月末に中間取りまとめを公表。その後分野ごとにワーキンググループを設置して詳細の検討を進め、かつ並行して検証実験を行い、その結果を踏まえて最終取りまとめを実施する。また、準備が必要な機器メーカーや整備工場の立場を踏まえ、可能なものから法令・通達・案などを策定するほか、OBD検査適用日の1年前にプレテストを実施したいという方針が示された。
検討会の中では各委員から様々な意見や質疑応答が交わされたが、今回も自動車メーカー側の日本自動車工業会(自工会)と日本自動車輸入組合(JAIA)、自動車を検査・整備する政府・団体とで、自工会とJAIAが推す警告灯目視による車検の問題点について議論が白熱。
「警告灯が点灯しており、それで車検不合格とされても、故障の原因を知らせなければユーザーは納得しないのか」という日本自動車工業会の問いに対し、自動車技術総合機構は「そういった際、保安基準にどう規定されているのかと質問されることが多い。また、警告灯が点灯しなければいいという解釈で警告灯を意図的に点灯しないようにするなど、正しくに整備しないケースも増えている」と、ユーザー車検における不正行為の増加を示唆。
また、「警告灯もDTCもそこから故障個所を特定するのは困難。OBDは故障があるかを診断するためのもので、そこから整備士が故障の原因を探るのが一般的な使い方」というJAIAの指摘に対し、総合機構は「車検を受ける人は多種多様で、不合格とした際にどの保安基準に不適合かを説明できなければ制度が回っていかない。自動運転高度化に伴い警告灯の重要性が増す中で、OBD検査によって故障原因を特定しやすくするのは重要」と述べ、さらに日本自動車整備振興会連合会は「警告灯が点灯すればクルマに不具合があるのはユーザーもわかるが、その後どう整備するかを、整備士がきちんとユーザーに説明できなければ、ユーザーは納得しない」と、整備工場での実情を打ち明けた。
それらを踏まえ、国交省の平井隆志整備課長は、「この検討会は、先進技術に関わる事故があるという認識に基づき発足した。OBD検査の制度を策定するうえで、いろんな方が納得感を得られることが重要となる。となると警告灯だけでは不充分で、整備が確実にでき、検査でも確認できることが必要で、そのために過渡的なものを置くのは、本来の姿にする際に弊害が残るだけ。従って、警告灯を使いながらOBD検査を実施するにはどうすべきかを、ここでは検討すべきだろう。最終的に目指すのは、ユーザーが納得する仕組みをどう作るのかということ」と、OBD検査導入の意義を示している。
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