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【海外技術情報】プラスチック製カムシャフトモジュールの開発に成功:独フラウンホーファー研究機構

  • 2020/05/07
  • 川島礼二郎
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ヨーロッパ最大の応用研究機関であるフラウンホーファー研究機構が興味深いリリースを発表した。プラスチック製カムシャフトモジュールの開発に成功したという。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

 現在、パワートレインの主要コンポーネントであるカムシャフトモジュールはアルミニウムで作られている。そんななか、フラウンホーファー研究機構の化学技術ICT研究所のチームは、パートナーと協力して、繊維強化熱硬化性ポリマーからカムシャフトモジュールを製造することに成功した。この軽量の設計要素によりエンジンの重量が減らされ、同時にエンジン組立てコストが削減される。既にデモンストレーション用に利用できる状態にある。

 現在、カムシャフトモジュールの標準的な材料はアルミニウム金属である。また、自動車メーカーとサプライヤーは、パワートレインとそのコンポーネントを軽量に設計し、生産することに多大な努力を払っている。軽量化は、CO2排出量を削減するための最も効果的な方法の一つである。
 そこでフラウンホーファーの研究者は、熱硬化性複合材料で作られた新開発のカムシャフトモジュールで自動車産業の取組みをサポートする。この軽量カムシャフトモジュールの開発は、マーレグループ、ダイムラーAGなどとの協力により実現した。ドイツ・経済エネルギー省がプロジェクトに資金を提供している。

 合成モーターオイルやクーラントによって引き起こされる高温や機械的、または化学的ストレスに耐えることができるよう、高強度の繊維強化熱硬化性ポリマーを選択した。フラウンホーファー研究機構の研究者であるThomas Sorg 氏は、次のように述べている。
「カムシャフトモジュールはシリンダーヘッド内にあるため、通常はパワートレインの上部取り付けスペースにあります。ここの重量を減らすことは、車両の重心を下げることにもなるため、特に重要なのです」

 アルミニウム鋳造物は、鋳造後に大規模な再加工を必要とする。そのため製造コストは高くなる。一方で繊維強化熱硬化性ポリマーは、ほぼ、そのまま使える形での製造が可能である。そのため比較的少ない、手直し程度の加工で済み、生産コストの削減に繋がる。また熱硬化性ポリマー射出成形金型の耐用年数は最大50万ユニットであり、アルミニウム高圧ダイカスト金型の耐用年数と比較して遥かに長い。そのうえ、この軽金属(アルミニウム)の製造には非常に多くのエネルギーを消費する。熱硬化性複合材料で製造すれば、アルミニウムでの製造と比較して、CO2フットプリントが遥かに低くなる。

 別の利点をあげることもできる。自動車メーカーはノイズの発生を最小限に抑えたいと考えている。騒音、振動、ハーシュネス(NVH)の特性は、車両の品質を評価する要素のリストの上位に位置付けられている。そこで注目すべきが、複合材料が有する優れた減衰特性である。

「これによりカムシャフトモジュールの音響性能を非常に簡単に最適化できるのです」とSorg氏は言う。

 カムシャフトモジュールは、ベアリングが組み込まれたモノリシック設計(筆者注:monolith;一枚岩、という意味)を特徴としている。一体で製造されるため、エンジン製造プラントでの組立て時間を短縮できる。自動車メーカーは、組立て済みのモジュールをサプライヤーから受け取り、幾つかの簡単な取付け作業を行うだけで、エンジンに取付けることができる。この革新的なソリューションは、さらなる利点を有している。カムシャフトベアリングに掛かる負荷をアルミ製インサートが吸収できるのだ。

 研究者達は初期テストの段階から、良好な動作性能を観察した。アルミニウムの参考部品と比較しての軽量化も実証された。

「熱硬化性ポリマー素材のカムシャフトモジュールは、軽金属製のカムシャフトモジュールよりも遥かに簡単に製造できます。そのうえ経済的なのです」とエンジニアは強調する。

 シミュレーションは、製造プロセスを開始する前に、プロトタイプを設計・検証するのに役立っている。

「熱硬化性ポリマーの剛性はアルミニウムの4分の1でしかありませんが、設計上の対策により最大許容変形に準拠することができました」

 エンジンテストスタンドで600時間テストした後、このプラスチック製カムシャフトモジュールは最新エンジンに搭載され、完璧な機能が実証された。プロジェクトパートナーは燃料噴射テストを実施して、燃焼プロセスを考慮に入れて、プラスチック製カムシャフトモジュールの機能とNVH特性を証明したいと考えている。

 MAHLEのプロジェクトマネージャーであるKatrin Schindele氏は、コンソーシアム全体と、この極めて建設的な共同研究に携わったすべての人に感謝している。
「私たちは機能的なプロトタイプとテスト結果に非常に満足しています。プロジェクトに取組んでいる全ての人が、このカムシャフトモジュールの開発への完全な献身を示してくれました」

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