内燃機関超基礎講座 | 5気筒で縦置きFWD、とどめのドラシャ貫通:ホンダ[Gシリーズ]
- 2021/05/05
- Motor Fan illustrated編集部
FFミッドシップという造語で新しいクルマを実現したホンダ・アコードインスパイア/ビガー。フロントフードの下に収まるのは直5の縦置きというユニークなエンジンだった。
1989年9月。ホンダは大ヒット車・アコードの4代目フルモデルチェンジに際して大幅なバリエーション拡充を図る。セダンボディに加えて「4ドアハードトップ」なる車型を加えたのだ。セダン系に対して上級モデルの位置付けとするこの4ドアハードトップ系は、非常にユニークなパワートレイン構成を備えていた。ホンダがFFミッドシップと称するこれらのクルマは、直列5気筒エンジン+トランスミッションを縦置きとし、さらにはデファレンシャルギヤはエンジン下側方に置く格好:つまりドライブシャフトがクランクケースを貫通するという、きわめてユニークな機械構成をとっていた。
これにより、FFながらまるでFRのような、ホイールハウスが車両前方にあるプロポーションを得ている。
なぜ5気筒か、なぜ縦置きか。これについてホンダは「FFとしての理想的前後重量配分」「パワートレインレイアウト」「超ロングホイールベース」の3つを目的として発信している。重量物であるパワートレインを全車軸後方に置き、FFとして前後重量配分の適正化をねらう。実際、同時にデビューしたセダン系のアコードの前62:後38に対して、FFミッドシップ車は前60:後40と、わずかながら改善を見せている。
5気筒というフォーマットについては、開発時に多種多様のエンジンを比較検討した結果、直6/V6とともに残った有力候補のひとつだった。そこからさらに「V6は重くなる」「直6はエンジンの剛性確保が難しい」ということになり、最終的に5気筒が選択された。
カムトレインはSOHCで、VTECの搭載が心待ちにされていたが市販車用としては結局最後まで載ることはなかった。バルブはロッカーアーム駆動の4バルブ式で、82mmのボア径内に、吸気側に32mm/排気側に28mmのバルブを収める。
ストローク値は75.6mmと、ボア径に対しては相対的に短く、これはエンジン全高を抑えることが目的のひとつだったからと思われる。先述のようにドライブシャフトがクランクケースを貫通する構造とするとクランクセンターは勢い高くなる。そのためG20A型エンジンは車両搭載のために右側に35度も傾ける格好となった。
吸気管はヘッドまで伸びるプライマリーとシャッターバルブを設けたセカンダリー管があり、このシャッターバルブを「アイドルから2500rpmまで閉」「2500〜3200rpmは開」「3200〜5100rpmは閉」「5100rpm以上は開」の制御とすることでトルクカーブに谷が生じないように慣性吸気効果と共鳴過給効果をねらう。さらに吸気ポートは入口36mm径〜中間部34.5mm径〜シート部36mm径と、中間部を絞る形状として流速を高め、筒内の流動促進についてはバルブ周りに土手を設ける格好のマスクドペントルーフとした。使用燃料はレギュラーガソリンで、圧縮比は9.7。
排気管は各ポートから1番4番/2番3番/5番の3本ブランチとし、さらに1本に集合させる5-3-1管構造としている。材質は軽量化と耐熱性の両立を図ったステンレス。
白眉はバランサーの装備である。先に記したように開発時には直6も検討されていて、最たる美点はスムースネスだった。5気筒でも同等レベルを確保できないかと、特有の1次偶力をキャンセルするためにバランスウェイトをクランクと逆方向に回転させる構造としている。
ドライブシャフトは、右側がクランクケース/オイルパンを2点支持で貫通する構造。デファレンシャルギヤはエンジンの外側にあり、左側ドライブシャフトはそのままハブに接続される。通常、縦置きFFの場合は変速機にデフを収めることとなるが、そうするとフロントオーバーハングにエンジンを置く格好となり、フロント荷重が大きくなる。「ならばエンジンに貫通させてしまえばいい」と考えて実現させたホンダのアイディアには心底驚かされる。
G20A型から遅れること3年後の1992年1月、2.5ℓに排気量を拡大したG25A型が登場。その後1995年2月の2代目インスパイア/セイバーにも継続搭載されたが、その代限りで「FFミッドシップ」は役目を終えることとなった。
■ G20A
気筒配列 直列5気筒
排気量 1996cc
内径×行程 82.0×75.6mm
圧縮比 9.7
最高出力 160ps/6700rpm
最大トルク 19.0kgm/4000rpm
給気方式 自然吸気
カム配置 SOHC
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL ×/×
(アコードインスパイア)
■ G25A
気筒配列 直列5気筒
排気量 2451cc
内径×行程 85.0×86.4mm
圧縮比 10.0/9.3
最高出力 190ps/6500rpm / 180ps/6500rpm
最大トルク 24.2kgm/3800rpm / 23.0kgm/3800rpm
給気方式 自然吸気
カム配置 SOHC
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL ×/×
(インスパイア)
|
|
自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。
日産キックス600km試乗インプレ:80km/h以上の速度域では燃費が劇...
BMW320d ディーゼルの真骨頂! 1000km一気に走破 東京〜山形往復...
日産ノート | カッコイイだけじゃない! 燃費も走りも格段に洗練...
渋滞もなんのその! スイスポの本気度はサンデードライブでこそ光...
PHEVとディーゼルで燃費はどう違う? プジョー3008HYBRID4とリフ...
スズキ・ジムニーとジムニーシエラでダート走行の燃費を計ってみた...
会員必読記事|MotorFan Tech 厳選コンテンツ
フェアレディZ432の真実 名車再考 日産フェアレディZ432 Chapter2...
マツダ ロータリーエンジン 13B-RENESISに至る技術課題と改善手法...
マツダSKYACTIV-X:常識破りのブレークスルー。ガソリンエンジン...
ターボエンジンに過給ラグが生じるわけ——普段は自然吸気状態
林義正先生、「トルクと馬力」って何が違うんですか、教えてくだ...
マツダ×トヨタのSKYACTIV-HYBRIDとはどのようなパワートレインだ...
3分でわかる! クルマとバイクのテクノロジー超簡単解説
3分でわかる! スーパーカブのエンジンが壊れない理由……のひとつ...
3分でわかる! マツダのSKYACTIV-X(スカイアクティブ-X)ってな...
スーパーカブとクロスカブの運転が楽しいのは自動遠心クラッチ付...
ホンダCB1100の並列4気筒にはなぜV8のようなドロドロ感があるのか...
ホンダ・シビック タイプRの謎、4気筒なのになぜマフラーが3本?
3分でわかる!アシスト&スリッパークラッチって何? 250ccからリ...
Motor-Fanオリジナル自動車カタログ
自動車カタログTOPへMotor-Fan厳選中古車物件情報
ホンダ インスパイア
ベースグレード 純ナビ 後カメラ HID クルコン フォグ サイドカーテンエアバッグ ETC スマートキー 自動防眩ミラー 青イルミ付サイドステップガーニッシュ ドアバイザー Wエアコン ウッド調パネル 革巻ステア
中古価格 70.9万円
ホンダ インスパイア
ベースグレード エアコン キーレスエントリーシステム スマートキーシステム パワステ Bカメ レザーシート 盗難防止システム DVD再生 ワンセグTV クルコン 横滑り防止 ETC ナビTV HDDナビ
中古価格 78万円
ホンダ インスパイア
ベースグレード 純正ナビ!純正17インチアルミホイール!バックカメラ!ビルトインETC!ハーフレザーシート!ウッドパネル!
中古価格 85.8万円
ホンダ インスパイア
35TL
中古価格 68.7万円
ホンダ インスパイア
35TL 認定中古車 ナビ Bカメラ ワンオーナー パワーウィンドウ オートクルーズコントロール 電動シート ETC車載器 ワンセグTV ABS サイドエアバック キーレス DVD再生 ESC スマートキー
中古価格 72.5万円
ホンダ インスパイア
35iL 減衰力調整車高調 VLANDヘッドライト&テールレンズ ブラックレザーシート HDDインターナビ 地デジTV レーダークルーズコントロール ETC トランクスポイラー スマートキー 純正17インチAW
中古価格 74万円