FC発電機、リユース蓄電池、給電機能付き充電器も既存の技術を最大限活用 トヨタ・ミライのDNAを持つFC小型トラックが来春より都内のセブンイレブンに商品を配送! そのメカニズムは?
- 2018/06/11
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遠藤正賢
セブン-イレブン・ジャパンは2019年春頃より、トヨタ自動車のFC(燃料電池)小型トラックを、羽田空港周辺とお台場・有明周辺のエリアで各1台を試験導入し、エリア内各店舗への商品配送に使用。そして同年秋より、トヨタグループのFC発電機、リユース蓄電池、給電機能付き充電器、BEMS(店舗エネルギーマネジメントシステム)を導入した次世代型店舗の展開を開始する。果たしてこれらの中身は、既存の技術を徹底的に有効活用した、極めて現実的なものだった。
セブン‐イレブン・ジャパンとトヨタ:CO2大幅排出削減を目指した次世代型コンビニ店舗の共同プロジェクトを2019年秋より開始
まず、クルマ好きなら最も気になるであろうFC小型トラックのメカニズムだが、ベースとなった車両はトヨタ・ダイナカーゴ「2.0tonシリーズ シングルキャブ ワイドキャブ 2WD・ロングデッキ・ディーゼルハイブリッド」の中温冷凍車で、最大積載量は3トン。全長×全幅×全高は6185×2180×2970mmとなっている。
これに、FCV(燃料電池車)トヨタ・ミライのFCスタックやパワーコントロールユニットをキャブの下に、高圧水素タンク3本(ミライは2本)とニッケル水素式駆動用バッテリーを荷台の両サイドに搭載。モーターはフレームの前部中央に縦置きされ、プロペラシャフトを介して後輪を駆動する。
水素の充填可能容量は7kgで、使用可能量は6kg。セブンイレブンが1日の配送業務で走行する約200kmを、真夏に冷凍庫をフル稼働しドライバーがエアコンを使用しても途中で水素を補充せずに問題なく走れる性能を確保した。
トヨタの友山茂樹副社長が6月6日に東京・有明のメガウェブで行われた発表会の席で、「子どもたちに『将来乗ってみたい』と思ってもらえることを目標にこだわった」と強調していたデザインも、このFC小型トラックの大きな見所だろう。
キャブのフロントバンパーとドア下部、専用設計された荷台のサイドカバーとリヤバンパーは、セブンイレブンのコーポレートカラーである緑と環境に優しいイメージの青を合わせた色を採用。キャブ上部とコンテナはメタリック調とし、FC小型トラックが持つ先進性を表現している。なお、これらのカラーや各部のロゴマークは全てラッピングによって車体に施されている。
発表会ではメガウェブ内のテストコース「ライドワン」で、このFC小型トラックのデモ走行が行われたが、モーターの出力はミライとほぼ同じ114kW(155ps)で、車重は1トン以上増えているはずにも関わらず、その加速はトラックとは思えないほどスムーズかつ強力。当然ながら走行音は極めて小さく、CO2を含む環境負荷物質の排出もゼロだ。
これならば、夜間の住宅地を走行しても住民が不快な思いをせず、しかもFCVはEVよりも航続距離が長く充填(充電)時間も短いため、セブンイレブンのドライバーはどこでも気兼ねなく商品を配送できることだろう。
このほか発表会では、トヨタ自動車製のFC発電機、トヨタエナジーソリューションズ製のリユース蓄電池、豊田自動織機製の給電機能付き充電器の実機も公開されたが、FC発電機はミライのセル、リユース蓄電池はプリウスの使用済みバッテリー10台分を使用。給電機能付き充電器は、既存の充電器に店舗への給電機能を追加し急速充電にも対応したものと言える。
セブン-イレブン・ジャパンは、2020年までにトラック約6千台のうちハイブリッドや天然ガス、電気を含む環境配慮型トラックの比率を現状の約15%から20%へ、2030年には1店舗あたりCO2排出量を現状の72トンから約45トンへ、再生可能エネルギー利用比率を現状の約10%から20%へと引き上げる目標を掲げている。
トヨタはこの取り組みを通じて水素への需要を高めることで、FCVや水素インフラの供給を促進し、生産量を増やすことでコストを削減、需要を喚起するという正のスパイラルを構築することを狙っている。
その第一歩となる今回のFC小型トラックやFC発電機、リユース蓄電池、給電機能付き充電器は、すでにある技術を最大限活用してコストを下げ、信頼性も確保したという点で、極めて地に足が付いたものと評価できる。
ただし、現時点でミライの価格が700万円超とまだまだ高く、コスト面のみを見ても一般に広く普及する水準に達していないことは、トヨタ自身が最も強く認識している。
また、今回試作されたFC小型トラックには、セブンイレブンの現場のニーズが全面的に採り入れられているが、セブン-イレブン・ジャパンの古屋一樹社長は「これは競争ではなく協調の領域なので、ある程度拡大できる段階までテストできたら、競合他社に対してもむしろ積極的に薦めていきたい」と、他社への普及拡大に前向きな意向を示している。
このプロジェクトの開始によって、トヨタはFCVの技術開発において、乗用ユースよりも短期間で成果を得やすい物流の分野へと重点を移したことになるが、これがFCV普及拡大の突破口となるか。今後の推移を見守りたい。
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