『福野礼一郎のクルマ論評3』副読本的ウェブサイトMotoFan Road Test ベレット2000GTRの真実 名車再考 いすゞ・ベレットGTR Chapter2 再録MotorFan Road TEST(1970年3月号)
- 2018/08/29
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MotorFan編集部
主 催:社団法人 自動車技術会
モーターファン編集部
とき:昭和44年12月9日/12~13日
ところ:いすゞ自動車藤沢テストコース
運輸省船舶技術研究所
座談会:昭和44年12月13日
番町共済会館
高性能車を狙って
本 誌 最初にベレット1600GTRの開発の狙いを清水さんからお願いいたします。
清 水 この車は秋に発売しましたが、一部ではこんな車はあまり売れるものではないという意見も強かった。ところが出してみますと、意外に若い人たちからご支持をいただいて、出して良かったという気持ちです。高性能の車を狙いましただけに技術的にも、製作の上でも注意が必要であり、安全の面でもよほど勉強しなければならないということです。本日はよい機会を作っていただいたので、この際いろいろ教えていただきたいと思っています。
設計の狙いとしては、私どもベレットを作ってもう6年にもなります。GTが最初にできて、フロアチェンジにしたり、スポーティを狙って出発して、1300、1600とすすんできました。しかしほかの会社で作られるGTの性能も次第に良くなってきましたので、このままでは性能の面でも劣ってくる。たまたま1600ccのDOHCがクーペについで量産の準備もでき、値段も安くなってきました。このエンジンをつけて足りないところを補いながらこの車を作ったわけです。
このごろはオーナーの技術も非常に向上してきて、こういう高性能の車でも充分安全に乗りこなす方が非常に多くなってきているので、これらの方に合わせるようにということです。値段もかなり高くなりますが、ベレットGTを買われた若い方が、それをチューンアップすると100万はかかる。その点この車のようにすでにチューンアップした車は非常に安いという見方をしてくれる方もありますので、その点も狙ったつもりです。
平 尾 これはベレットR6の系統のエンジンで、チューニングがちょっと違うというだけですか。
岡 そういうことです。R6がこれをベースにチューンアップしたということです。
平 尾 GTRは120馬力ですね。ダブルオーバーヘッドにしたため、20馬力くらい出てるわけですか。
岡 そうですね。シングルオーバーヘッドが103馬力ですから、20馬力くらいアップです。
本 誌 ボディ、シャシー関係で普通のGTと異なる点はございませんか。
上 田 では変わったところを簡単に説明しますと、重量はDOHCをのせた関係上駆動系の強化にともなって、若干GTより重く、空車重量940が970kg、最高速度は190km/h、タイヤは165HR-13を使用して、燃料タンク容量も46ℓと大きくなっています。
デザイン関係としては外装は前まわりではボンネットにエアスクープを設けて、前後黒塗りということ。ボディの横にストライプを入れてムードを盛りあげました。バンパーは2分割にして、内側にフォグランプを装備しました。キャップレスディスクホイールは普通のGTも用いていますが、さらにリムのメッキということで格差がついております。内装もシートはヘッドレスト一体式のFRP成型品を用いて、人間工学的にもふさわしい、ホールドのいいものとしました。ステアリングホイールは皮巻きとして、何種類か試作をした上、その中からアンケートをとって選びました。
その他細かい点につきましては、昼夜切替式のバックミラーとか、木製ノブ、チェンジレバー、秒針付時計、リヤウインドウに熱線をプリントしたデフォッガー、高速型ワイパー、そういうきめ細かい改良をしました。いうまでもないことですが、コラプシブルステアリングとか、可撓式フェンダーミラーも採用しております。
シャシー関係はエンジンのトルクアップによって駆動系を強化しました。これはクラッチ、トランスミッションは1速のギヤ比を高め、リヤアクスルシャフトにユニバーサルを採用。それからノンスリップデフ、ラジアルタイヤの採用。ブレーキ系統ではタンデムマスターシリンダー、ハイドロマスターとの組み合わせ、後輪用にプレッシャーコントロールバルブを用いて前後のブレーキ配分の安定に重点をおきました。
0→400mは16.4秒
山 本 この車は前のベレットの後継車としてできたのか。構造、寸法その他では前と比べてどうなっていますか。
上 田 後継車というよりけん引車というつもりで出しました。寸法諸元に関しては、ボディシェルはほとんど変わりません。キャップレスのディスクホイールをつけた関係で、トレッドが若干増えまして前輪で15mm、後輪で25mm増えております。
本 誌 エアスクープは実効があるのですか。それともデザイン的なもの?
上 田 熱風をあそこから吹き出すということで、冷却性に効果がございます。
登 石 エアスクープはデザイン的な面と熱を逃がしてやる点と両方です。右側が熱を出すのに役立つ、左はダミーでついています。それからフロントボンネットを黒くつや消しにしたとか、黒いストライプを入れているというのは、みなデザイン上、精悍な感じを出しています。
星 島 ボンネットのつや消しは実効もありますね。
鈴 木 それは非常にあります。ボンネットが光ると目が疲れますから。
登 石 ワイパーのアームを黒く塗っているのと同様に役立っています。
宮 本 太陽に向って走る場合、非常にいいですね。飛行機の操縦席の前のようにつや消しになっているのはいいと思います。
本 誌 平尾研で計測していただいた動力性能はいかがでしょうか。
古 谷 発進加速は50mに4.4秒、100mに6.7秒、200mに10.4秒、400mに16.4秒という値が出ています。(以下データ参照)これは117のエンジンを積んで、ちょっとローのギヤ比を大きくしたのですが、117の発進加速タイムが400mに16.7秒ですから、車体が180kgほど軽くなったのとローのギヤ比を大きくしたので、0.3秒ほど良くなりました。
本 誌 拝見してますと、ほとんどスリップしていませんね。
古 谷 発進のときもスリップしていません。タイヤが太いのじゃないですか。
登 石 ラジアルタイヤの質が非常に良くて、ブレーキのときもそうですが、すべらないのです。
本 誌 小口研の燃費をお願いします。
佐 野(雅) 定地燃費では30km/hが17.2km/ℓ、60km/hが17.1km/ℓ、80km/hが15.4km/ℓ、100km/hが12.5km/ℓ。40km/h、50km/h、60km/hあたりが非常に近接してほとんど変化なく、全般的にもかなりフラットな曲線といえます。(以下データ参照)117クーペでも定地をやりましたが、定地はわずかにGTRが良くなっています。これは重量が少なく軽くなっているということかもしれません。
静かな高速騒音
本 誌 モーターショーでECGI付(電子頭脳による燃料噴射装置)117クーペが出品されましたが、これが同じエンジンだとすればGTRにも可能なわけですね。近い将来、そうした車が出るとすると、パワー、燃費の点でどのくらい違うのですか。
岡 そういう車が出現することはあり得ることだとは思います。ちょっと何馬力違うとは申しあげられませんが、もちろん出力メリットはございます。それから電子コントロールのガソリン噴射というのがフォルクスワーゲンの対米輸出の排気ガス対策として生まれたいきさつからしましても、燃費が経済的になることは期待できます。それからもうひとつ、操縦の円滑性、非常に低速まで操縦性が良くなって、円滑な運転ができるメリットが期待できます。さらに排気ガスがただいまたいへんやかましくなってきましたので、こういうスポーツ系の車が排気ガスに対して非常につらくなってきているので、その救済策ともなっています。
本 誌 普通のGTとGTRとではサスペンションがだいぶ強化されていますが、具体的にばねレートでいいますと、どのくらいになっていますか。
高 波 狙いとしては私どもGTで、オプションパーツとしてスポーツキットを出していたわけですが、それの中のステージⅡという仕様に近いというのが生産車についたということなので、フロントばね定数がだいたい5割から6割高まっています。リヤについても2、3割程度高くなっています。ショックアブソーバなどもちょっと全体に減衰力は上げた方向にしています。
本 誌 亘理研で測定していただいた振動、騒音など乗り心地はいかがですか。
立 石 振動数はフロントのばね上振動数が1.7Hz、リヤが1.7Hz、ばね下は前輪が1.7Hz、後輪が18Hz。ばね上振動数のほうは、ばねレートもだいたいいまのお話ではうしろのほうが2割アップというお話ですが、だいぶ高い数値が出ているようです。(注:振動数のcpsをHz=ヘルツ=に改めました)車内騒音は40km/hが67ホーン、80km/hが72ホーン、100km/hが76ホーン、160km/hが81ホーン。(以下データ参照)車外は定常走行が70.5ホーン、加速の場合が79ホーン。車外騒音はGTとして非常に静かな音で、高速騒音その他を考えますと、いい値だろうと思います。
亘 理 GTRというのは、乗り心地はコーナリングなどをのぞいて、普通の上下の乗り心地を問題にするものか、車内騒音を問題にするものか、ぼくは疑問だと思うのです。ただ乗った感じでいうと、アイドリングがエンジンの振動と音がやかましい。走りだすとちょっとやかましさはわからないが、もし高速道路で長距離ドライブをするということになると、そういう点も問題になるのじゃないかと思います。
旦那仕様という見方でいうとこの車は振動騒音は低速にピーク、高速にピーク、中速にピークのドンピシャリの車だと思いますが、しかしそのへんひとつの問題です。アイドリングの振動数がイヤだが、あれはやはりエンジンマウンティングをばかにかたくされたのだと思うが、何か理由がありますか。かたくしないと直線運動のようなときトラブルが起きるのかしら。
兼 重 それほど問題にしていません。こういう車はエンジンまわりのスペースがだんだんつらくなるので、走っているときあちこち干渉しないためにしてあります。それをがんじがらめにショックを受けるとストレスがあがるので、結局まあああいう車の性格だろうといっていいかどうかわかりませんが、やはりGTRですから、普通のサルーンよりアイドリングが多少悪くて、当面はそうおっしゃられてもしょうがないと思うのですが。
平 尾 まあバルブタイムの選び方などでしょうがないですよね。7000までもつというのですからね。
兼 重 アイドリング回転をあげてセットすると振動はラクになりますが、ああいう性格の車の振動とか音をやるのはつらいわけです。
樋 口 私の感じではあのエンジンルームからいきますと、クーラーはあきらめなければだめだと思うのです。そうしたら思いきって1600GTでチューニングして、エンジンを積みかえるユーザーが出てくる、という感じがします。そうすると高くなりますから、それでははじめからいいエンジンを積んで走れるならあれのほうがいいと思いますが、二兎を追うとできないので、旦那仕様はあきらめるということでしょうか。
兼 重 完全にあきらめるとすっきりしてきますが、最後になるとどうもね。
耐久レースの場を開発に
平 尾 そういう意味ではオーバードライブがひとつ入るとだいぶ楽です。あれは120km/hで4000回転くらいですね。だから3000ちょっと切るくらいで正常に走ればかなり違いますね。4000と3000ではそういう意味でオーバードライブがひとつあるとだいぶ違いますね。
星 島 ぼくがベレットGTRを最初みたのは43年でした。GTXという名前で鈴鹿の耐久レースに出ていたのが最初でした。それからおもに耐久レースに出てきた車ですが、ぼくは日ごろ117のエンジンをベレットに積んだらおもしろいと思っていたので、非常に興味をもって見ていました。ところがはじめはなかなか完走しませんで、毎回のようにどこか悪くなってリタイア。44年になって次第に航続距離が伸びてきて8月には総合優勝をした。そしてまもなくGTRという名前で、そのままの姿で発売になったわけです。耐久レースの場そのものを開発のテストの場としてこられたのに非常に興味をもったことと、市場にPRするのには非常に良かったと思っています。
売り出された車に乗ってみて、まず感じたのは音が非常に静かだということでした。ただ40km/h以下はアイドリング状態のようなもので、あれがうるさいのはエンジンをかけたあととかわらないので、これはやむを得ない。ただし3000回転あたりの音は非常に静かです。そしてたしかに120km/hくらいで走っているときに、ややうるさいなと思うときがあるが、それ以上あるいはそれ以下になると音は静かです。ことに130km/h、140km/hの静かな音はほかにほとんど類がないと思います。70ホ
ーンとたしかに出ていましたが。
亘 理 120と140にピークがあって、その間が静かなのですよ。
星 島 乗り心地を117と比較してみますと、117のほうが足まわりからくる乗り心地はいいのではないか。それからミッションを先ほど平尾先生がオーバードライブといわれましたが、140km/hくらいで東名神を走りますと、サードに落としていいのか、ブレーキをかけたほうがいいのか、迷うチャンスが非常に多い。結局あの場合、5速で走っていたら4速に当然落としていいだろうと。ブレーキやタイヤを信頼していないわけではないが、やはりああいった車は5速のミッションをつけて売ってもいいのじゃないかと思いました。
平 尾 5速にするか、3速、4速でオーバードライブが使えるようにするか、考えたほうがいいと思いますね。
亘 理 あまりにも静かになったりやかましくなったりする変化があるからいけないので、そういう変化がなくなったらいいのですよ。レベルを高くしてもいいから。
成功したシート
兼 重 公害のほうはいじめられるのでだんだん良くなりましたが、いまおっしゃったエンジンのナマの音というか、それからハイ・フリクエンシーノイズをできるだけ消していきたいということ。それからピークのところは全然それがひっかからないということですから、対策の結果としてはよく皆さんに指摘されているわけですが、やはりこれはノイジイではないかと思っております。
山 本 振動、騒音の点ですが、最初乗ったときはやはりアイドリングノイズのようなものを感じましたが、石畳の道を走ってもらったときはあの車は非常にいいですね。あれはどういうわけかわからないが。
宮 本 あれは後輪の独立懸架が効いているのじゃないか。ベレットができたとき相当悪いことろを走ったが、かなりいいと思いましたからね。
樋 口 私は学校の中で40km/hくらいで、工事でほじくりかえしたところをかまえて走ってみたのですが、まったくその必要はなかったですね。悪い道は逆にいい。
平 尾 ばねが少しかたくなり、ショックアブソーバが大きくなっているからかな。
鈴 木 そうです。
石 川 私はシートが非常に良かったのじゃないかと思うのです。
登 石 減衰性を上げるためにパッド材にウレタンモールドを使用しております。また、シートバックにFRPのパンを使用している点も特長だと思います。
平 尾 背あてとお尻のところのつながりもわりとうまくいっていますね。
登 石 まあ成功したと思っています。
すぐれた応答性
本 誌 では斉藤研の操縦性、安定性のデータをお願いします。
土 居 実用最小回転半径は外回り5.32m、内回りが3.02m、これは同クラスの車と比べるとこの車としてはやや大きめな値に属すると思います。US、OS特性はV2100で比較してR/Roが1.35、車速は50km/hまでやりました。そして最後までUSを持続してR/Roが1.35という値は同クラスと比較してやや小さい値です。そのときの最大保舵力が4kg、横向加速度が0.4Gで、この値も同クラス他車に比べるとやや重い。ロール率は0.5Gで3.5°、いすゞさんの社内データは3.75°ですから、うちの試験結果ではやや小さめのロール車でした。(以下データ参照)
本 誌 平尾先生、横風に対してはいかがでしたか。
平 尾 東名をわりと風の強い日で、行きは追い風ぎみで、厚木の切通しを出たら、右横風になりました。ほとんど追風に近いときは影響は感じませんでしたが、切通しを出て横風をくうときに、両手でハンドルを持っていましたが、ハンドルは3度くらい、ちょっと左にとられましたね。そういう意味からは逆方向からくる効率をもう少し落してもらえば手を動かさないですんだのじゃないかという気がします。
帰りは古谷君が運転したのですが、横のちょっと前ぎみの斜め左で、一番つらいところだったようです。真向いになってからはそうじゃなかったが、厚木を出たへんはだいぶガタガタして、わきに乗っても相当感じましたね。あれはソリッドフリクションを少し入れていいのか、あるいは粘性摩擦がいいのかどうかわからないが。あそこのしめ方で直接できるのじゃないですか。
高 波 ベレットの評判ではラックアンドピニオンでなければダメだという人も相当いるのです。
平 尾 おそらくそれはある一面だけをいっているのだと思うのです。なぜかというと、本来ならターンパイクを100km/h前後であがってやってみるとか、乙女峠を70km/hくらいであがってみれば、あれの良さが見えたのかもしれない。ベレットはあれくらいの道でのハンドルの切れがいいというのがひとつの身上だと思うのです。だからあまり高速道路で走ることばかり考えるとその良さがなくなってしまうかもしれない。
星 島 たしかに最近、バリアブルピッチの車が多くなっていますので、それに比べると高速道路で走るには軽いですね。
岡 崎 曲りくねったところではたしかにいいですね。ぼくもそれと同じようなことをやったのです。ああいう道ではさすがに素晴らしいですね。思ったとおりの軌跡に、あれだけラクに乗るのはちょっと珍しいです。応答性がすごくいいし、あて舵特性も非常にいいし。
視界を阻害するヘッドレスト
本 誌 船研で測定した重量、ブレーキ関係の結果をお願いします。
石 川 重量配分は前輪が538kg、リヤが435kg、54:46です。アライメントはフロントはトーインキャンバーとも非常に小さくなっています。リヤもあまり大きくありません。ブレーキはフロントがディスクブレーキ、リヤがリーディングトレーリングのドラムブレーキで、フロントだけハイドロバック、真空装置がついていてタンデムマスターシリンダ付というブレーキでしたので、ブレーキペダルの踏みごたえのばね定数は1kg/mmということで、パワーをもっている車といない車の中間で、妥当な値だと思います。ブレーキ力の左右のバランスはフロント、リヤともわりあいに良くそろっています。各部の操作力は全般的に大きくて、チェンジレバー関係は3kg~4kg、リバースにいれる横移動は6kg、アクセルは50km/hで定常走行が2.5、加速した状態では4kgで普通のセダンより大きい値です。(以下データ参照)
本 誌 ブレーキの味としては。
石 川 特に感じませんでしたが、ちょっとのびる感じがしました。
岡 崎 でもサーボの感じがあまり強く感じなかったですね。
山 本 フロントはディスクブレーキ、リヤはドラムブレーキになっていて、PCVを使い、さらにノンスリップデフを採用されたということですが。
野 口 とくに前輪だけにハイドロバックをつかっています。ハイドロバック特性が30kg~40kgのところで特性が出てきますので、それに合わせる意味でPCVでねかせてあります。後輪制動力のバランスをとらせるという意味でもあります。
石 川 台上試験の結果では明らかにねてしまっていますから、それではっきりブレーキ力が下がったという感じはわかるのですが、実際乗るとそういう感じは……。
本 誌 では平田研の視野の結果をお願いします。
平 田 視点を含む水平面内の視界は前窓が右に31.5°、左に60.6°、合計91.5°。後窓は、ヘッドレストがシートバックと一体になって、非常に大きいので問題があるのですが、左が27.5°、右側は(ー)19.5°で左についているということです。同じ水平面内にできる見えない角度が、ヘッドレストがだいぶきいていて全体で91.5°です。いままで水平面内で運転視界を測っているのもああいう装置をつけているのはちょっとかんがえなければいけないのだろうと思うわけです。(以下データ参照)
山 本 前にベレット1500が出ましたとき(昭和41年12月)これと同じようなボディ構造ですが測定しています。比較してみますと、今度のほうが視界がいいし、総合的にいいですね。視点を通る水平面内にできる左右のデッドアングルは普通の車に比べて平均くらいの値です。全体から比較すると少しデッドアングルの角度がおおきくなってしまいましたが、安全枕がでっぱっていますので、これが視界を阻害している。
本 誌 続いて樋口研の測定をどうぞ。
音 田 全幅はほとんど変わっていませんが、フロントのトレッドが1255で、いままでのモデルから少し変わっています。それからラジアルタイヤ165×13が数値で大きく変わったところですが、あとはバンパーのセパレートとか、細かい飾りとか、GTRというところで普通のモデルとは変えたアクセントがついているということです。寸法の上でとくに目立つのはヘッドレスト一体ですからシートバックの高さが770という大きな数値が出ています。
ペダル配置もいままでのモデルそのままではほとんど動いていないのですが、ひとついえることはハンドルのシャフトとペダルの関係位置がだいたいクラッチペダルでまたぐのが多いのですが、これは左に寄っています。
山 本 ひとつ欲しいものはトーボードの角度ですね。
平 尾 そうだな。大いに問題になるでしょう。
樋 口 シートの高さとトーボードの相関関係があるので、もっとたてないといけないのじゃないかと思います。一番もとになるのはシート全体の高さを問題にしたいのです。
平 尾 だからトーボードに下の折曲点がもう20mm前に出ないかと。そうすればペダルの問題も解決するような気がする。
本 誌 では樋口先生から安全とメンテナンスについて。
樋 口 安全の結果を申しあげますと、100点満点で1500ccクラスの最近のセダンはだいたい90点前後、それに対してGTカースポーツカーは80点から85点くらいですが、この車は84点でおそらくセダンより下まわっています。フロントバンパーが左右にわかれて真ん中についていない点と、強化ガラスで合わせガラスを使っていないところがいずれも3点ずつとなっていますが、80点以上で問題はないと思います。
本 誌 ではどうもありがとうございました。
ベレット1600GTR 主要諸元
エンジン:水冷直列4気筒、DOHC、ボア82mm×ストローク75mm、排気量1584cc、圧縮比10.3、最高出120ps/6400rpm、最大トルク14.5kgm/5000rpm、気化器ソレックスダブルチョーク式2個
変速機:前進4段フルシンクロ、フロアシフト、ギヤ比1速3.467、2速1.989、3速1.356、4速1.000、後退3.592、ハイポイドギヤ、最終減速比3.727
サスペンション:前輪ダブルウィッシュボーン、コイルスプリングスタビライザー付、後輪ダイアゴナルリンク式スイングアクスル、コイルスプリング・横置リーフスプリング併用
ステアリング:ラック&ピニオン式
ブレーキ:タンデムシリンダー・デュアルサーキット(前)ディスク(ハイドロマスター付)、(後)リーディングトレーリング(PCV付)アルフィンドラム
タイヤ:165HR-13
寸法・重量:全長4005mm、全幅1495mm、全高1325mm、ホイールベース2350mm
トレッド(前)1260mm、(後)1240mm、地上高195mm、重量970kg、定員4名、燃料タンク46ℓ
性能: 最高速190km/h、登坂能力sinθ0.488、最小回転半径5m
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