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ジープ・グランドチェロキー・トラックホーク試乗記 バドワイザーをガブ飲みするような爽快さをもつSUV 710psの脅威のSUV、ジープ・グランドチェロキー・トラックホークは狙い目の驚速SUVだ!

  • 2020/01/27
  • GENROQ編集部
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SRT8をも凌ぐグランドチェロキー最強のモデルがトラックホークだ。710㎰/868Nmという途方も無いパワーを生む6.2ℓHEMI V8を搭載したことで、並み居るスーパーSUVを蹴散らす超高性能を手に入れているという。

REPORT◉山田弘樹(YAMADA Koki)
PHOTO◉市 健治(ICHI Kenji)

※本記事は『GENROQ』2020年1月号の記事を再編集・再構成したものです。

 久々に“バカになれるクルマ”と出会うことができた。その名はグランドチェロキー トラックホーク。クライスラーは自社の高性能ブランドとして「SRT」を展開しており、その名を冠したグランドチェロキーとしてはまず、6.4ℓV8OHV(468㎰/624Nm)を搭載する「SRT8」を用意する。

 そして今回試乗したトラックホークは、このSRT8のさらに上を行く、フラッグシップモデルなのである。そんなトラックホーク最大の特徴は、何と言っても6.2ℓの排気量を持つV8OHV「HEMI」エンジンだろう。半円球形状(へミスフェリカル)の燃焼室形状こそ名前だけの遺産となったが、なにせその最高出力は710㎰! 最大トルクに至っては、実に868Nmを発揮する化け物エンジンである。

 その排気量がSRT8に対してわずかにドロップしているのは、スーパーチャージャー化を実現するための最適化だろうか。ボア径は103.9㎜と同等ながら、ピストンストロークが94.6㎜から90.9㎜へとショートストローク化されており、高回転・高出力化に対応しているようだ。さらに圧縮比も、デトネーションに対応すべく、10.9から9.5へと引き下げられている。

 こうして鍛え上げられたV8ユニットは、大排気量OHVというスペックがウソのように、軽やかかつ爆発的に吹け上がる。低回転ではズブズブと、まるで「早く踏み込めよ」と文句を言っているかのようにくぐもっていた排気サウンドが、回転が上昇するにつれコーン! と抜けた音色に変わるのがまず最高。これこそ排気に過給機が介在しない、スーパーチャージャーの恩恵である。

 ただ可笑しいのは、さらにアクセルを踏み続けると、レブリミット付近でそのサウンドが“ブブブブッ”と音割れしてしまうことだった。たぶん純正マフラーが根詰まりするほど、その排圧が高いのだろう。

 電子制御式8速ATのギヤ比はシリーズ共通。よってこの出力に対して1速はアッという間に吹け切り、2速、3速とシフトして行くほどに、極めてどう猛な加速力ではあるけれど、伸びやかさが加わってくる。

最高出力710㎰、最大トルク869Nmを発揮する6.2ℓHEMI V8スーパーチャージャー。
足元はビルシュタイン製アダプティブダンピングサスペンション&ブレンボ製ブレーキキャリパーを採用する。

 シフトアップ時には欧州勢のような生ガスの炸裂音を連発しない代わりに、空砲のような一撃をバカン! と轟かせる。痛快でスッキリとしたパワーフィールは、バドワイザーをがぶ飲みするかのようなわかりやすさ。アメリカの古き良き回転上昇感と、現代的な燃調制御による鋭いレスポンスが同居した、とても気持ちの良いV8ユニットである。

 これに対してシャシーは、正直10年選手の古さを感じさせられる。欧州勢のような剛性感の高さはなく、ボディとサスペンションの両方でパワーを受け止めている感じである。

 だからサスペンションも、確かにグランドチェロキーとしてはしっかり固められているのだが、街乗りも意外や普通にこなせる。荒れた路面ではジープであるにも関わらず、ダンパーが底付く場面も見受けられたが、基本的には大排気量エンジンの余裕をもって、穏やかに日常をやり過ごすことが可能な柔軟性がある。20インチとはいえ、ピレリのオールシーズンタイヤを履いていたことも少なからず影響しているだろう。

 そしていざ走行モードを「スポーツ」もしくは「トラック」へと転じれば、ダンパーの伸び側が強く引き締まり、電動パワーステアリングがグランドチェロキーらしからぬ抵抗感を示して、710㎰のパワーをねじ込みにかかる。そこに4WDのトラクションと粘り強いボディが加わって、飛ぶような加速で乗り手を冷や冷や、ワクワクさせてくれる。

 ハンドリングを語る前にその加速力に目を慣らし、シャシーが身もだえしそうな加速力をねじ伏せる必要がある。そうしているうちにわかるのは、縦方向のピッチングこそ激しいが、ロール方向には実にしなやかな接地性が実現されていることだった。荒っぽく見えてもそこには、SRT仕込みのトラックワークが垣間見えた。

 唯一問題があるとすればこのトラックホーク、価格が1356万円もすることである。確かに同価格帯のライバルと比べれば、パワーは圧倒的。BMW X5なら遙かに高価な「M」でさえ太刀打ちできないし、カイエンで言えば「S」より1.6倍もパワフルである。しかしいくら赤張りのレザーを設えてもインテリアは平凡で、黒いダッシュボードに銀色のプラスチックトリムは庶民的。どこまで行ってもこれは“グランドチェロキー”なのである。これをどう受け止めるかが、トラックホークを手に入れる上ではひとつの課題。しかしすべてを納得した先には、最高に幸せなアメリカンライフが待っているとボクは思う。

Apple CarPlay/Android Autoに対応した8.4インチタッチパネルモニターを採用。
レースよりインスパイアを受けたというボルスター付のレザーシートはホールド性に優れている。

SPECIFICATIONS
ジープ・グランドチェロキー トラックホーク
■ボディサイズ:全長4890×全幅1980×全高1800㎜ ホイールベース:2915㎜
■車両重量:2470㎏
■エンジン:V型8気筒OHVスーパーチャージャー 総排気量:6165㏄ 最高出力:522kW(710㎰)/6200rpm 最大トルク:868Nm(88.5㎏m)/4700rpm
■トランスミッション:8速AT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ:Ⓕ&Ⓡ295/45ZR20
■車両本体価格:1356万円

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