大型商用車、世界的再編か【牧野茂雄の自動車業界鳥瞰図】
- 2018/06/15
- Motor Fan illustrated編集部
去る4月12日、日野自動車とフォルクスワーゲンは東京で記者会見を開き提携交渉に入ることを明らかにした。両社が連合を組むと2017年実績で世界第4位隣、躍進著しい中国勢とインドのタタ・モータースを抑えてトップを行くダイムラーの地位を狙う位置に着くことができる。この両社の提携は世界的再編への引き金となるだろうか。
TEXT◎牧野茂雄(MAKINO Shigeo)
ちょうど20年前、1998年を振り返ると、世界の大中型商用車(トラックなら6~8トン以上、バスはマイクロバス以上)業界はダイムラーがトップ、2位をボルボ/ルノーが追っていた。日本にはいすゞ、日野、三菱ふそう、日産ディーゼルという、いわゆる大型4社が存在したが、そのうち2社が現在は外資系であり、かつての4社体制は崩壊した。
日産ディーゼルは1999年、日産に資本参加したルノーが第2位の株主になったが、その後一時期ルノーが資本撤収したのち2006年にABボルボが筆頭株主となり、翌07年に子会社化された。現在の社名はUDトラックスである。三菱自動車の大型商用車部門だった三菱ふそうは03年にダイムラークライスラー(DCX=当時)が筆頭株主となり、三菱自動車工業が同グループを脱退する際に分社化され、そのまま05年3月にDCXの連結子会社になった。
日野自動車はトヨタが50.1%を出資するグループ子会社である。外資は入っていない。バス部門だった日野車体工業は同じくいすゞ自動車のバス部門だったいすゞバス製造と経営統合し、現在はジェイ・バスという社名である。いすゞはかつてGMグループだったが、06年4月にGMが全いすゞ株を売却し提携は解消された。この穴を埋めて経営の安定化を図るため同じ年の11月にトヨタ資本を受け入れ、現在はトヨタが6.34%の持株比率である。
一方、世界に目を向けると、中大型商用車分野では中国勢の躍進が著しい。英国の調査会社であるLMCオートモーティブのまとめによると、2017年の6トン以上のトラック販売実績ではダイムラーが31.5万台で世界のトップ。シェアは10.6%で、唯一の2桁シェアである。2位は中国の第一汽車で25.7万台、世界シェア8.9%、3位は東風汽車で25.7万台、同8.7%、4位も中国勢の中国重型汽車20.3万台、同6.8%である。そして5位はインドのタタ・モータースで17.6万台、同5.9%。6位は僅差で陜西汽車の17.3万台、同5.8%。6位にやっとABボルボが入る。
VW(フォルクスワーゲン)の中大型トラックは、傘下の独・MANとスウェーデンのスカニアを加えて販売台数13.8万台、シェア4.6%。このVWと提携交渉に入った日野は世界ランキング13位、販売台数9.8万台、シェア3.3%である。VWと日野が協力し合えば販売台数23.6万台、シェア7.9%となり世界第4位になる。
中国の大型商用車は、現在の東風汽車が第二汽車廠と呼ばれていた時代にソ連(当時)製品のコピーである「解放トラック」から生産が始まった。ソ連製そのものが大元をたどればダイムラーおよびMANのドイツ勢かイタリアのイベコ、オランダのDAFなど西側製品の技術が混じっている製品であり、のちに中国が大型トラックで合弁生産を始めたときにもこれら西欧メーカーと手を組む結果になった。
一方、日本の商用車メーカーではGMグループ時代のいすゞが中国への技術協力を開始し、現在の慶鈴汽車の基礎を築いた以外は大きな提携はない。中国の大型車は欧米の影響、とくに欧州勢の影響が大きい。20世紀の日本のトラックは欧州勢とは設計思想がまったく違い、言って見れば過積載対策が中心だった。ラダーフレームの作り方は、欧州勢の「柔」に対し日本は「剛」であり、これが日本の中大型商用車のグローバル展開を阻んだ。
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