極太タイヤが地球とドライバーを救う:ミシュランX One
- 2019/03/12
- Motor Fan illustrated編集部
日本ミシュランタイヤが「2019NEW環境展メディアセミナー」を開催した。NEW環境展にはトラック/バス用のタイヤを展示、本セミナーでもトラック/バス分野における現状の課題と同社における解決策が示された。
運送業界における喫緊の課題は人手不足と長時間労働。前者についてはさらに従事者の高齢化と男性偏在というおまけがつく。人手不足に陥る理由のひとつに長時間労働が挙げられるのはご想像のとおりで、対価としての収入も他業種に比べておよそ3割低いという。
この課題をタイヤで解決すると、B2B事業部の尾根山純一氏は言う。いったいどういうカラクリだろうか。
解決策となるのはX Oneと称するタイヤ。大型トラックで一般的なダブルタイヤをこのX Oneでシングル化するというコンセプトだ。タイヤ単体では著しくワイド化することになるが、2本同サイズのタイヤ/ホイールを1本にまとめることで、軽量化と燃費の良化をもたらす。ミシュランの調査によれば、X Oneに換装したことで以下のようなユーザーからのレポートが得られているという。
・燃費が5%向上(最大積載量15100kgのフルトレーラー)
・最大積載量が30%向上(工場出荷状態で7900kgのダンプ)
・200kgの車両軽量化(工場出荷状態で9000kgのダンプ)
・最大積載量が26%向上(工場出荷状態で8400kgのダンプ)
5%の燃費向上という数字はいまや尋常ではない。クルマが軽くなることで最大積載量における積荷量を増やすことができ、そのおかげでダンプの場合は1日の往復数を著しく減らすことができたという。ばね下200kgの軽量化がドライバビリティに大きな影響があるのも容易に想像できる。こうした効果の数々がドライバーへの負担を軽減させ、業界全体の高効率化に結びつくとミシュランは説明する。
デメリットはないのか
いいことづくめに思えるX Oneへの換装だが、デメリットはないのだろうか。ひとつ挙げられるのが初期コストの高さである。具体的な数字は得られなかったが、タイヤに加えてホイールも交換しなければならず、その費用と得られるメリットを天秤にかけるときに事業者が不安を覚えれば導入は見送られる。後述するが、X Oneを効果的かつ安全に運用するために、ミシュランは「TPMSクラウドサービス」との組み合わせを推奨していて、そちらの費用もかさんでしまうからだ。
その不安を払拭するためのユニークな取り組みが「X One レンタルプログラム」である。無料でX Oneを履いたホイール(アルミホイール:22.5×14.00)を無料で2週間装着し、実際の効果を確かめる。2018年の開催時には30のユーザーが体験、8割がポジティブな感想、さらにそのうちの1割は即時の導入を決めたという。
ネガティブな反応だったユーザーの声は「燃費の結果が期待通りではない」「導入価格が高価」「装着期間が短い」というのが主。そこでミシュランは2019年5月よりプログラムの内容を刷新し、さらに長期間でX Oneを試せるようにしていくという。
TPMSクラウドサービスとは
導入に二の足を踏む事業者の言い分のひとつに、「新しいものだから」という意見がある。仕事で用いるツールだけに当然だろう。上述のように「導入価格が高価」というのもご覧いただいたとおりだ。
それらに対するミシュランの回答が「TPMSクラウドサービス」である。タイヤ内に温度/圧力センサを仕込み、リアルタイムでタイヤの状態を把握できるサービスで、オレンジジャパンおよびソフトバンクとの協業で実現した。
なぜTPMSがこれらの不安を払拭できるのか。2018年のデータによれば、大型トラックのパンク/バースト事例でもっとも高価だったのが191,654円。そこから17万、15万、12万……と続く。これらのトラブルから解放されるのなら、X One+TPMSの導入にもメリットはあるのではないかというのがミシュランからの提案だ。
大型トラックのパンク/バーストの原因はスローパンクによる「気が付かないうちに空気圧が下がっていた」というトラブルと、ブレーキ引きずり傾向にあるドラムブレーキから与えられるタイヤの高温化〜破裂という事例。いずれもタイヤの状態をTPMSで把握しておけば防げる事故である。実はX Oneを採用することでスペアタイヤを用いることができないため、TPMSが必要になったという。しかしそれを補って余りあるメリットが認められるなら、システム一式を導入する理由にはなるだろう。
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