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クルマが水没してしまった!——そのとき絶対にしてはいけないこととは?

  • 2019/10/13
  • Motor Fan illustrated編集部
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ランドローバー・ディフェンダーチャレンジ。さすがの冠水性能、これでも全然大丈夫らしい。(PHOTO:LANDROVER)

クルマが水没してしまったとき、あわてて動かそうとしてしまいがちだが、ちょっと待ってほしい。

 台風19号が全国で猛威を振るっている。被災された方にはお見舞い申し上げます。
 各地で、水没してしまったクルマの映像がテレビに流れている。不幸にもクルマが冠水してしまった場合、水が引き上げたあとにいつもどおりにエンジンをかけて動かそう——とすると、ひょっとして完全にクルマに引導を渡してしまうかもしれない。

 水没してしまったクルマのエンジンをあわててかけてはいけない。

 もしシリンダー内まで水が侵入してしまっていたとしたら、クランキングするとエンジンに大ダメージを与えてしまう。もう少し具体的に言うと、本来は気体(混合気)を圧縮する構造になっているシリンダー/ピストンに、圧縮できない液体(泥水など)が入っている状態でクランキングさせると、ピストンは上昇できないのにクランクは回ろうとし、結果としてコンロッドが曲がる/折れるなどの重篤な症状に陥る。ウォータハンマーと呼ばれる恐ろしい現象だ。下手をすると折れたコンロッドがエンジンブロックを突き破り、それこそエンジン全壊となってしまう。

 そうならないためには、

1)エンジンオイルをドレインボルトから下抜きする
2)エンジンオイルフィルタも外す
3)ドレインボルトとフィルタを装着し、何のオイルでもいいから規定量を入れる
4)プラグを外して、プラグホールからオイルを数滴入れる
5)プラグを外したままクランキングする
6)必要なら何度かこのプロセスを繰り返す

 エンジンが水没すると、たとえばオイルフィラーやインテーク/マフラーからなど、水が入ってくる可能性が高い。かりにエンジン内部が水で満たされてしまったら先述のウォータハンマーの憂き目にあってしまう。そうならないために、とにかくエンジンの中の水(とオイルが混じったもの)を抜くのだ。
 抜いたあとは清掃と潤滑を試みる。それが(3)と(4)のプロセスだ。シリンダーが無潤滑に陥らないように、オイル類をプラグホールから差しておこう。クランキングくらいの回転数なら、大ダメージを受けることは考えにくい(そもそも水没という大ダメージをすでに食らっているわけだし)。

 変速機やFRのデフまわりはどうかというと、これらは基本的に密閉構造だから水の浸入は考えにくい。シールまわりに難がありもともとにじみが生じていたなどというならまだしも、作動品なら問題ないだろう。

 問題は電装である。汚水にはさまざまな物質が混入してしまっているため、端子類に侵入するとリーク/ショートさせる可能性が非常に高い。可能なら見えるところの端子にパーツクリーナーや潤滑材などを吹いておくのが吉だ。

 残念ながら水没してしまったクルマが完全にもとどおりになるのは非常に難しい。しかし「とにかくその場所から動かさなければならない」といったシチュエーションも考えられる。そのときに、あわててエンジンをかけて大破……ということだけは避けられることを覚えておいてほしい。

Aピラーに、吸気のためのパイプが見える。エンジンは冠水しても大丈夫なように密閉されているのだ。(PHOTO:LANDROVER)

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