アルミテープ再び——オカルトか実効パーツか。謎が謎を呼ぶ「空力パーツ」の効能を4台で確認
- 2020/01/03
- Motor Fan illustrated編集部
フォルクスワーゲン・パサート、プジョー308、ルノー・カングー、アバルト124スパイダーという、ボディスタイルもパワートレインも様々な4台を高速道路で試乗し終えた時、何より強く感じたのは、実際の運転では空力よりサスペンションに代表されるシャシー性能の影響力と依存度のほうがはるかに大きい、ということだった。それはあくまで感覚的な印象であって、本当は空力が多大な影響をもたらしているのかもしれない。それを確かめるには、アシか、空力か、どちらかの何かを変えてみればわかるのではないか。そう思った編集部は禁断のブツを用意してきた。
巷でも百家争鳴を巻き起こした例の空力デバイス──アルミテープである。
その説明試乗会に参加した筆者は、旧型のトヨタ86がアルミテープ貼付の有無で、明らかに前輪の接地性と安定性が変わったのを幸か不幸か知ってしまった。また、テープをどういう箇所に貼れば効果が大きく出るのかも訊いてある。あの時は開発元であるトヨタの主催イベントだったから、疑って見れば手玉に取られたのかもしれない。それならトヨタのトの字も出てこない車種で試して見ようという興味本位もあり、空力と操縦性のアヤを確かめる絶好の機会だと判断した。
TEXT:三浦祥兒(MIURA Shoji) PHOTO:市 健治(ICHI Kenji)
*本記事は2017年3月に執筆したものです。現在とは異なる場合があります。
帯電防止アルミテープの効能を体感する——トヨタ86に仕込まれた魔法
燃料タンクの水抜き剤からマイナスイオン生成器にいたるまで、妖しいブツが巷にはあふれている。聡明な読者諸兄にとっ...
トヨタの特許公報を見ると、アルミテープのパテントはテープそのものではなく、通電性を持たせた接着剤で取得しているという。だから、本当はトヨタが使っている実物で試したかったのだが、諸事情で入手できず、やむなくホームセンターで売っている一般的なアルミテープを使うことになった。だからもしかしたら全くの徒労に終わる可能性もある。南無三。
アルミテープが効能をもたらす原理を簡潔に説明すれば、ボディ表面がプラス電荷で帯電するため、同じプラス帯電性の空気と反発して、空気の流れが乱れるところを、アルミテープで電荷を放電し、整流するということ。特に帯電しやすいのは樹脂とガラスであり、空気の剥離が起きやすいのはタイヤとフェンダー。突起物も帯電しやすい。そこで、バンパー回り、ドアミラー、フェンダー、サイドウインドウにベタベタとテープを貼りまくる。見た目はドリフトイベント帰りで満身創痍といった様相だが、背に腹は替えられない。筆者はトヨタに洗脳されている可能性なきにしもあらずということで、処方後の4車には副編MZWも試乗する。
アバルト124スパイダー
見事なまでに......何も変わらない。トップを開けても、閉じても、接地感と反応のタイムラグは同じだった。やっぱりフツウのアルミテープではダメだったか......。
しかし、神経を集中して運転してみると、どうもフロントのストローク感が増している、ような気がする。同時に舵感の座りがいい、ような気もする。86の時に感じた印象に近いが、変化の量があまりにも少ない。気のせいと言われて反論する根拠は極めて薄弱である。
ルノー・カングー
乗り出してスピードを50~60km/hくらいまで上げて行くと、ステアリングがハッキリと重くなってきたのがわかった。重箱の隅に異常に拘るMZWもそれを力説しているから、今度は気のせいではないだろう。ステアリングを切るとタイヤの抵抗を明瞭に感じるから、これはダウンフォースが発生しているとしか言いようがない。元の状態に比べるとリヤ優勢一辺倒だったカングーが、むしろフロント偏重に思えてくる。ではこれでバランスが取れているかといえば、そんなことはなくて、変なチューニングカーに乗せられているような奇妙な感覚だ。素直に動いていたアシが突然こわばったようになってしまったからだ。こうなると呑気に乗る気分ではなくなってくるから不思議なもので、効果ははっきり現れているものの、効能に関しては疑問符が付く。
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