【海外技術情報】VW:Aピラーに適用できる3D印刷コンポーネント! 新たな3D印刷技術の導入を計画中
- 2021/07/05
- 川島礼二郎

自動車メーカー各社で導入が進められている3D印刷。なかでもVWは、BMWと並んで、極めて積極的な姿勢を見せている。そんなVWが新たに、3D印刷コンポーネントをAピラーに採用すべく、新たな技術導入を計画しているという。本稿では、2021年5月下旬に発表されたVWのリリースを翻訳・要約して、その3D印刷技術とVWの狙いを紹介しよう。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)
3Dプリントプロセスを推進するため、VWはシーメンスとソフトウェアパートナーシップを締結した。VW取締役会メンバーで生産・物流を担当するクリスチャン・ヴォルマー氏は以下のように述べた。
「当社は生産における革新的な3Dプリンターの使用を推進しています。ヴォルフスブルクにある主要工場において、初めてバインダージェットとして知られる最新プロセスを使用してコンポーネントを製造しています。従来の3D印刷ではレーザーを使用して金属粉末から層ごとにコンポーネントを構築していましたが、バインダー噴射プロセスでは接着剤を使用します。次に、得られた金属部品を加熱して成形します。バインダー噴射コンポーネントを使用することで、コストを削減して生産性を向上させることが可能になります。バインダー噴射コンポーネントの重量は、鋼板製と比較すると半分にすぎません。現在、当社は製造工程でこの3D印刷技術を使用している唯一の自動車メーカーです。当社はパートナー企業と協力して、3D印刷技術をさらに効率的にして、生産ラインでの使用に適したものにすることを目指しています」
そのパートナー企業であるシーメンスAGの取締役会メンバーでデジタルインダストリーズのCEOであるセドリック・ネイケ氏は、以下のように述べた。
「革新的な3D印刷ソリューションでVWをサポートできることを誇りに思います。当社の自動化およびソフトウェアソリューションは、工業生産アプリケーションをリードしています。このテクノロジーを使用することで、VWはコンポーネントをより速く、より柔軟に、より少ないリソースで開発・生産できるようになります」

VWは過去5年間、この革新的な進歩を達成するため、多額の投資を実行してきた。さらに同社はシーメンスとソフトウェアパートナーシップを締結し、プリンターメーカーのHP Inc.との既存のコラボレーションを拡大した。彼等は、バインダージェットの本格的な使用により、重要な経験を積む。将来的に、どのコンポーネントを生産できるか、について知見を得て行く予定である。
HPはハイテクプリンターを提供する。シーメンスは積層造形用の特別なソフトウェアを提供している。シーメンスとVWが共同で取り組んできた重要なプロセスの一つは、ビルドチャンバー内のコンポーネント配置を最適化することである。ネスティングとして知られるこの手法により、印刷セッションごとに2倍のパーツを作成できる。三社は今夏から、2018年末にヴォルフスブルクに開設されたハイテク3D印刷センターに共同専門家チームを設立して、3D印刷を使用した複雑な自動車部品の製造を可能にする予定である。また同センターでは、これらのテクノロジーの使用について社員教育を行う。
VWは2025年までにヴォルフスブルクで毎年最大100,000個のコンポーネントを3Dプリンターで製造することを目指している。バインダー噴射プロセスを使用して製造された最初のコンポーネントは、認証のためオスナブリュック(筆者注;VWの工場)に送られた。『T-Rocコンバーチブル』のAピラーのコンポーネントである。鋼板で作られた従来品より約50%軽量である。この軽量化だけを見ても、新しい3D印刷プロセスが自動車生産にとって興味深いものであることが分かる。既に3D印刷された金属製コンポーネントの衝突試験を実施しており、その結果は良好であった。これまで大量生産においては十分な費用効果が得られていなかったが、新たなテクノロジーとのコラボレーションにより、いよいよ生産ラインでの使用が経済的に実行可能になる。
VWでは、車両開発の加速とコスト削減を目的として、25年前に技術開発を開始して以来、3Dプリンターを使用してきた。現在、ヴォルフスブルク工場には13のユニットがあり、さまざまな印刷プロセスを使用して、プラスチックと金属の両方のコンポーネントを製造している。典型的な例は、センターコンソール、ドアクラッディング、インストゥルメントパネル、バンパーなどのプロトタイプ用のプラスチック製品だ。金属部品の例としては、インテークマニホールド、ラジエーター、ブラケット、サポートエレメントがあげられる。過去25年間で100万を超えるこれらコンポーネントを生産してきた。新たなバインダー噴射プロセスは、自動車製造における3D印刷の生産成熟度を高め、費用対効果を高めるもので、3D印刷技術が大量生産にも適用できる可能性が高まっている。

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