独自のトルクベクタリングと小型軽量モーターを採用、8月のモントレー・カーウィークに出品 タジマEVが2020HP・600Nm・0-100km/h加速1.95秒の6輪ハイパーEV「MONSTER E-RUNNER Kode6」を年内発売!
- 2019/01/05
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遠藤正賢
「モンスター田嶋」こと田嶋伸博氏が代表を務めるタジマモーターコーポレーションのEV開発・製造事業とSIM-Driveとを統合し2018年4月に誕生した「タジマEV」と、東京大学の堀・藤本研究室は、共同研究したEV関連技術の成果を12月14日に発表。その中には、独自のトルクベクタリングと小型軽量モーターを採用した市販化前提の6輪ハイパーEV「MONSTER E-RUNNER Kode6」が含まれていた!
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、タジマEV、東京大学 堀・藤本研究室、KEN OKUYAMA DESIGN
同日に東京大学本郷キャンパスで行われた成果発表会の冒頭、プレゼンテーションを行った田嶋氏は、「電気自動車だからできる技術、環境だけではなく走りや安全面でも、もっともっと電気自動車の良さを証明しよう。そのために、長年にわたって東京大学 堀・藤本研究室と一緒に研究してきた」と、共同研究の経緯を説明。
その想いを、KEN OKUYAMA DESIGNの奥山清行氏に説明したところ、同氏がデザイン製作を快諾。そうして「大手自動車メーカーが手掛けにくい、最高性能を備えた“ピン”と、低価格低速で誰もが乗れる“キリ”を作ろうということで、その両方を奥山氏にデザインしてもらった」という。
“ピン”に当たる「MONSTER E-RUNNER Kode6」は、6つのモーターを搭載した6輪ハイパーEV。6輪独立制御を可能としながら、最高出力2020HP、0-100km/h加速1.95秒を達成する見込みだ。
なお同車には、東京大学の堀・藤本研究室が中心となり開発した「独立駆動制御」が採用されている。
その核となる駆動力制御モデルは、アクセル操作に応じたフィードフォワード制御と、車輪のスリップ率を直接制御するフィードバック制御で構成。このスリップ率にリミッターを与えることで、各輪の駆動力を常時確保する、というもの。
これにより、各輪の駆動力を独立して制御可能なEVが持つ、モーター特有の約1msという速いトルク応答性とシームレスな加減速特性を活かし、タイヤのグリップを最大限有効活用するとともに、安全かつ意のままに操れる運動特性を実現する。
発表会の席では、インホイールモーターを搭載し四輪独立駆動と前後輪アクティブ操舵を可能にした実験車両「FPEV2-Kanon」による低ミュー路旋回加速とスプリットミュー路直進加速、パイクスピークに参戦した「E-runner2016」をタジマコーポレーションの粟津原豊氏が前輪のみでスリップ制御なしで0km/hからアクセル全開/同アクセルをコントロールし発進加速/制御入りで0km/hからアクセル全開した場合の比較テストを、それぞれ動画で披露。容易に挙動を乱しやすい状況でも安定して加速・旋回できることを示していた。
また、同車が6基搭載するEV用パワートレーンモジュール「モンスターモーター250」は、インバーター・モーター・減速機を一体化し、配線を簡素化しつつ冷却機構も内蔵することで、ユニット体積を30%削減。最高出力250kW(約335HP)、最大トルク600Nm、最大回転数11,000rpmを目標としながら、通信速度の向上と伝達系の剛性アップによるスリップ率制御の高精度化も図っている。
なおバッテリーは、性能重視で設計された「モンスターバッテリー」が採用される予定となっている。
そして、奥山氏がデザインしたエクステリアには、前後ディフューザーとスピン防止フィンを備えることで、ウィングを省略し空気抵抗を低減しつつ300km/h超の速度域で求められる高いダウンフォースを両立。さらにそのボディを開断面のCFRPで構成することで、高いねじり剛性とバッテリーの空冷化を同時に実現したという。
なお、「MONSTER E-RUNNER Kode6」は、「2019年8月のモントレー・カーウィークに出品を予定しており、すでにブースを確保している。事前にアメリカの富裕層のコミュニティと密に連絡を取り、誰のためにこのクルマを作るかを最初に決めてから製造を始める手法を採っているため、リスクはゼロ」(奥山氏)だというから、このハイパーEVを手中にできるのはごく限られたミリオネアたちであるとともに、その顧客リストはすでに出来上がっていると考えてよさそうだ。
その後奥山氏が発表した“キリ”のEVは、「E-Runner MV1」の3ドア2人乗り超小型モビリティ仕様と、5ドア4人乗り軽自動車仕様、原付四輪1人乗りデリバリーEV「E-Runnner DV1」の3台。いずれもバッテリーやモーターなどを床下に搭載することで、動物も視認できる前方視界と拾い室内・荷室空間、三方から扉を開閉できる利便性を両立している。
いずれもモジュラー化されたボディ・シャシー・パワートレインを共用し、モーター・インバーター・DC/DCコンバーター・充電システムにはパナソニック製の共通駆動モジュール1基が、駆動用バッテリーにはフォーアールエナジー社が日産リーフの中古バッテリーから程度の良いセルを組み合わせたリユース品の共通電池パック1基が採用される予定だ。
奥山氏によれば、「まだ開発中で、このデザインが採用されるかはまだ分からないが、こういった電気自動車しかできないイノベーションを入れて、低コストでお客様がお求めやすい価格帯で、優れた品質で作っていくのが目標」とのこと。これらのEVが実際に公道を走る日が、今から待ち遠しい。
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