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IHI:世界初、航空機用100kW級高出力パワーエレクトロニクスの空冷化に成功

  • 2020/05/15
  • Motor Fan illustrated編集部
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パワーエレクロニクス空冷技術のイメージ図

IHIは、航空機の環境負荷低減に向けて、エンジンを含む航空機システム全体のエネルギーマネジメントを最適化する「航空機・エンジン電動化システム(MEAAP:ミープ*1)」の実現を目指し、様々な研究開発を推進している。その一環として、このたび、パワーエレクトロニクス(*2)の液冷が困難な分野に適用できる空冷技術を開発し、航空機用としては世界で初めて、100kW級高出力パワーエレクトロニクスの空冷実証に成功した。

 地球規模の気候変動対策として、自動車を中心に電動化技術開発が進められているが、航空機においても、安全性・環境適合性・経済性といった社会のニーズに対応した軽量・低コストかつ安全性の高い新たなシステムが求められている。MEAAPは、単なる機器の電動化に留まらず、従来有効利用されず排出されている客室の空気を電気機器の冷却に利用するなど、航空機システムの最適化による飛躍的な低燃費の実現を目指している。

 電動化により燃費改善が期待できる一方、パワーエレクトロニクスなどの発熱増を伴うため、発熱抑制が重要な問題となっている。従来、航空機用パワーエレクトロニクスの冷却は、冷却水や冷媒の循環装置や熱交換機などを用いる液冷方式だが、今後電動化を推進する上では、主翼周辺やエンジン周辺などへ循環装置の設置が困難であることや、配管などの重量増加による燃費悪化、液冷の整備性の悪さなどの解決が必要となっている。
 

実証試験風景
 航空機に搭載されるパワーエレクトロニクスは、小型軽量化・高出力化され、狭い面積に大きな発熱が集中するため、これに対応した排熱技術が必要。IHIは、従来有効利用されずに大量に機外へ排出されている客室内の空気を冷却に活用する、クリーンで効率のよい空冷システムの実現を目指し、技術開発に取り組んできた。同社が保有する熱・流体・構造解析技術により、パワーエレクトロニクスの高出力密度化に有用な高排熱密度・低損失な新構造ヒートシンク(*3)を開発するとともに、ヒートシンクに大量の空気を送風するブロアには、車両用ターボチャージャ技術を生かし、オイルフリーでセルフ空冷設計の小型高速回転電動ブロアを開発した。これらの組み合わせにより、航空機に搭載できる空冷ユニットを実現し、本年2月に、IHI技術開発本部(神奈川県横浜市)にて100kW級パワーエレクトロニクスを対象とした空冷化の実証試験を実施し、このたび、実用性を確認した。

新設計空冷ヒートシンクの電力用半導体素子温度測定結果

 なお、本開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「航空機用先進システム実用化プロジェクト」の委託業務「次世代エンジン電動化システム研究開発」において実施したもの。

 IHIは、2030年代の実現を目指すMEAAPに向けて、機器の電動化開発を継続して行うとともに、航空機システム全体の電動化・最適化に取り組んでいく。また、この空冷システムは、冷却水やオイルが使えない環境での自動化・分散動力化・高効率化などの幅広いニーズに対して電動化を提供することが可能。IHIのパワーエレクトロニクス技術を生かし、今後、モビリティ分野を含むあらゆる産業へ、今回開発した空冷ユニットをはじめとするクリーンな電動エアマネジメント技術を活かしたシステムの提供を検討していく。

(*1) MEAAP:More Electric Architecture for Aircraft and Propulsionの略。
(*2) パワーエレクトロニクス:電力用半導体素子を使い、モータなど大電力を制御するシステム。
(*3) ヒートシンク:発熱する電気部品に取り付け、フィンと呼ばれる金属板に空気をあてることで排熱する部品。本開発では、一般的にヒートシンクの空気上流から下流にかけて空気温度が上昇するため、排熱性能が不均一になること、および、面積が狭い場合に、フィンの高密度化が必要となる一方で、空気抵抗が増大し、排熱効率が低下することが課題だった。

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