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内燃機関超基礎講座 | グループN用エンジンは抑出力超トルクの歪特性:ランサーEVO/WRX

  • 2021/05/21
  • Motor Fan illustrated編集部
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「ほぼ量産車」として競技を戦うグループNの世界。そこで用いられる車両に収まるエンジンは、厳正な取り決めに則って市販車とはまったく異なる出力特性に仕立てられている。
TEXT:今井清和(IMAI Kiyokazu)
*本記事は2008年2月に執筆したものです

上の写真は三菱4B11。新開発のアルミブロック直列4気筒で、従来の4G63(鋳鉄ブロック)より単体で12kg軽量になり、前輪分担荷重が減少。電子制御スロットルの採用により、グループN用としてもより緻密なチューニングが可能になった。

エンジンベイの写真が示しているとおり、グループNでは改造可能な箇所がほとんどない。エンジン主機はもちろん、インジェクターやインテーク/エキゾーストの両マニホールドも変更不可。ターボも量産車のものをそのまま使う。補機類も同様で、ラジエーターやインタークーラー、オルタネーター、ウォーターポンプ等の一切がノーマルである。

さらにグループNエンジンには大きな足かせがある。リストリクターによって、エンジン吸気量に制限を受けているのだ。それ自体は他のラリーカーも同じだが、グループNに適用される口径は32mm。WRカーよりもさらに2mm小さい。たった2mmと思われる向きもあるかもしれないが、2ℓターボエンジンではφ38mmあたりから自乗増的にチョークが効いてくると言われている。

おかげで、グループNエンジンの最高出力はトップレベルのチューニングでも量産エンジンをはるかに下回る250ps程度にしかならない。ところが、トルクに関しては話が逆転し、数年前のWRカー並みの最大600Nm程度を発揮する。400Nmあたりがピークの量産エンジンと同じ部品を使いながら、その1.5倍のトルクを絞り出しているわけで、それだけ過激に進角を行ない、ターボを使い倒すような制御をECUに実行させているわけである。当然そのツケは部品の寿命に回ってくることになり、トップチームは2戦に一度程度の頻度でエンジンの分解整備を行なっている。

スバルEJ20。息の長いアルミブロックの水平対向4気筒。量産エンジンでは最高出力308psを発揮し、グループN仕様でも相応の上乗せが期待される。ただし従来型にあったボールベアリングターボは新型では設定されていない。

リストリクターによって実質6000rpm強で頭打ちになるグループNエンジンは、どのみちトルクの増大とスロットルレスポンスの向上に活路を見出すしかない。そして、その双方においてカギを握っているのがECUの本体と制御ロジック。この領域こそ、各チームのエンジニアがしのぎを削り、最も知恵を絞っているところだ。

スロットルレスポンス向上に関しては、グループNエンジンではその大部分をアンチラグシステムに頼っている。ただ、WRカーのように二次エアのバイパスを追加設定できるわけでないため、基本的には点火遅角と点火間引き、そして燃料噴射タイミングと噴射量のコントロールによって故意に未燃焼ガスを作り出す。それをエキゾーストパイプ内で燃焼させることでターボを回し続ける。

駆動系については、ランサーエボリューションもインプレッサも、ともに独自のアクティブデフを備えており、その制御がやはりポイントとなる。センターデフ本体の機械的な変更は不可。フロントとリヤに関しては、機械式LSDに限って変更が認められている。またギヤボックスは、ケーシングは量産用を使いつつ、中身はそっくり入れ替えてドグクラッチタイプに変更可能。これにより、スタートするとき以外のステージ走行時は完全にクラッチ操作が不要となる。

いずれにせよグループNでは、エンジンも駆動系も部品の大半は量産用そのものなのだ。にもかかわらず、叩き出されるタイムは初期のWRカーを上回ってきている。これは、ランサーエボリューションとインプレッサが量産車段階から備えているポテンシャルの高さを称えるのが自然だろう。

インプレッサのエンジン制御システム、SIドライブはグループN仕様でも役割大。ECU制御とは別に、アンチラグの強/弱に加え、アンチラグを効かせないリエゾンモードに切り替え可能となった。

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