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Cadillac CT6試乗記 from editor's room 「民主主義の高級車」キャデラックCT6は最もリーズナブルなハイエンドサルーン

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正確なハンドリングと、掴みやすい車両感覚

 室内に入ると、そこはまさにアメリカン・ラグジュアリーの世界である。レザーとウッドを多用するのは世の高級サルーンの常かもしれないが、キャデラックのそれは陽気さを伴うというか、乗り手を身構えさせることがない。もちろんロールスロイス、ベントレー、ジャガーなどの、座った瞬間に思わず姿勢を正してしまうような佇まいも素敵だし、ドイツ製サルーンの「さぁ、乗ったるぜ!」と気合いが入る雰囲気も捨てがたい。だが、ドライバー自身がリラックスできることもハイエンドサルーンの大切なファクターであると考えれば、CT6の開放的なイメージは大きなアドバンテージになり得るだろう。

 走り出すと、見た目の実にアメリカ車らしいイメージとはいい意味で裏腹の、スポーティで快活な身のこなしに驚かされる。「巨体を感じさせない走り」とは近ごろ多用されるフレーズだが、CT6のためにとっておくべきだったとひとりで勝手に反省してしまう。ステアリングも重めで手応えがあり、かつての片手でクルクル……なハンドリングとは隔世の感がある。

 試乗会場となった河口湖の周辺はタイトでツイスティなコーナーが続き、ときおりすれ違いにも気を遣う箇所が現れるが、とにかくストレスを感じない。前述の1885mmに抑えられた全幅の恩恵もあるだろうが、それよりも正確なハンドリングと、エッジの効いたボディによって車両感覚が掴みやすいことのほうが大きく影響していると感じた。

 それでいて、直進時にはヘビー級らしくしっかりと落ち着いたマナーを見せる。できれば高速道路を走ってみたかったが、直進安定性はかなりのものだろう。まぁ、そうでなければ北米でプレミアムブランドを名乗ることなどできないはずだ。
 
 乗り心地はかつてのボワンボワンした柔らかさではなく、当たりこそソフトだがしっかりとダンピングの効いたもの。路面のゴツゴツは乗員に伝わってくるものの、しっかりと雑味が濾過されているから不快には感じない。

 途中、同行したライターに運転を代わってもらってリヤシートにも短時間ながら座ってみたが、こちらの乗り心地も良好で、路面の悪い道をけっこうなスピードで楽しんでいたようだったが、リヤシートの筆者は携帯電話で話しながらメモを取るのも楽勝だった。

いまとなっては貴重な大排気量自然吸気エンジンがもたらすリニアでナチュラル、かつ力強いフィールは格別だ。いざとなれば速いのに、急かされないのが高級サルーンに相応しい。

 そうそう、オーディオがやけに充実しているのもキャデラックの隠れた伝統だ。CT6にはBOSE社のいちブランドである「PANARAY」のシステムが搭載されているが、34個(!)ものスピーカーが奏でるサウンドはゴキゲンとしかいいようがなく、ノイズキャンセル機構も手伝って、まさにライブ会場にいるような臨場感を味わうことができる。キャデラックとBOSEのコラボレーションの歴史は古く、昔からファンの間では評判だった。

 フロントシートのみならず、リヤの左右2席にもマッサージ機構がついているのも、安楽さをトコトン追求してきたアメリカ車ならではだ。また、後方視界をデジタル映像でルームミラーに映し出すリヤカメラミラーも標準装備されている。通常のミラーの3倍の視野をカバーするスグレモノだが、直前まで50〜100mくらい先を見ていた目の焦点を瞬時に30〜40cmほどの距離にあるルームミラーに合わせるのが難しく、通常のミラーモードに戻してしまった。これはCT6の問題ではなく、 リヤカメラミラーという商品そのものと筆者の好みとの問題だが。

 そんなこんなでCT6、アメリカを代表する高級ブランドに相応しい上質さ、現代のプレミアムサルーンに求められるスポーティさ、そしてキャデラックならではの人間味をすべて高次元で兼ね備えていたことが今回の試乗でしっかり理解することができた。

 もともと筆者がキャデラック贔屓ということは差し引きしなければならないのかもしれないが、これで1000万円を切る価格というのはやはりリーズナブルと表現するべきだろう(筆者の懐具合はまた別の話……なんてわざわざ説明する必要はありませんね)。価格ももちろんだが、多くの点においてドイツ勢とは違った魅力に溢れたプレミアムサルーンだと感じたのだが、みなさんの判断はいかがだろうか?

キャデラックCT6 プラチナム
全長×全幅×全高:5190×1885×1495mm ホイールベース:3110mm  車両重量:1920kg エンジン形式:V型6気筒DOHC 総排気量:3649cc ボア×ストローク:95.0×85.8mm 最高出力:250kW(340ps)/6900rpm 最大トルク:386Nm/5300rpm トランスミッション:8速AT サスペンション形式:Ⓕダブルウィッシュボーン Ⓡマルチリンク  ブレーキ:ⒻⓇベンチレーテッドディスク タイヤサイズ:ⒻⓇ245/40R20 車両価格:999万円

これが本当の実燃費だ!ステージごとにみっちり計測してみました。

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