どうなる日産、三菱、ルノー! 3社連合提携強化で「マザービークル(リーダー会社の車両)とシスタービークル」ってどうなる?
- 2020/05/28
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MotorFan編集部 鈴木慎一
日産とルノー、三菱自動車の3社連合がコスト削減などを含めた提携強化を発表した。新聞報道からは見えない部分を解説していこう。
発表によれば、3社は地域や技術ごとに「リーダーとフォロワー」を決め、研究開発の重複をなくし、工場を集約するなどしてコスト削減を図る。新車の開発費用は最大で4割減らすという。
ルノーのジャン・ドミニク・スナール会長は、「(コロナ禍で)世界の状況は激変した。今後は台数ではなく、効率性を競争力向上を目指す」とした。ゴーン体制の「規模拡大路線」からの転換を鮮明にした。
まず地域については、もともと得意地域が異なっていたのが3社連合の強みだったから、それを再確認したにすぎないとも言える。
・日産:北米・日本・中国
・ルノー:欧州・ロシア・南米・北アフリカ
・三菱自動車:東南アジア・オセアニア
という担当分けだ。
地域における「リーダーとフォロワー」はわかりやすい。
では、開発はどうなるか?
発表では
• 標準化を従来のプラットフォームからアッパーボディまでの適用に拡大します。
• 商品セグメントごとに、ある会社がリーダーを務め、他のフォロワー会社のサポートを得ながら、マザービークル(リーダー会社の車両)とシスタービークルの車両開発を行います。
• 必要に応じてリーダーとフォロワーの車両生産を少数の工場に集約するなど、最も競争力の高い環境で生産します。
• リーダーとフォロワーのモデルをすでに適用している小型商用車(LCV)においては、今後も商品の共有化します。
となっている。
標準化は、プラットフォームのを超えてアッパーボディまで拡大するという。これまで、ルノー・日産アライアンスでは、プラットフォーム(たとえばCMF=コモンモジューラーファミリー)を共有するといっても、じつはVWグループのMQBのようには共通化できていなかった部分もある。ここを徹底するというのは、開発コスト削減、開発スピードのアップに繋がるだろう。
アッパーボディまで拡大という部分が、気になるところだ。
プラットフォームもボディも共用ということになれば、ルノー・日産・三菱は、単なるバッジ違いのモデルを販売することにならないか?
「マザービークル(リーダー会社の車両)とシスタービークルの車両開発を行なう」ということは、3社連合の各ブランドがフロントフェイス違い、バッヂ違いで売られることを意味するのではないか?
3社連合のブランドは乗用車系では
ルノー:ルノー、ダチア
日産:日産、DATSUN、インフィニティ
三菱:三菱
となっている。地域ごとのリーダーとフォロワーを決めていくなかでは、DATSUN(東南アジア、インドなどで販売)ブランドの見直しも避けられないだろう。実際、生産面では日産がインドネシアで乗用車の生産をやめ、三菱に生産を委託する。フィリピンでも三菱が日産車の生産を受託するという。
続けよう。発表では
• 運転支援技術:日産が開発のリーダーを務めます。
• コネクテッドカー技術:ルノーがアンドロイドベースのプラットフォーム、日産が中国市場向け開発のリーダーを務めます。
• eボディ(電気電子アーキテクチャのコアシステム):ルノーが開発リーダーを務めます。
• eパワートレイン (ePT): CMF-A/B ePT はルノー、 CMF-EV ePTは日産がそれぞれ開発リーダーを務めます。
• C/Dセグメント向けPHEV:三菱自動車が開発リーダーを務めます。
ここでも特段目新しさはない。ただし、自動運転技術に関してもEVの技術に関しても日産(とルノー)が先頭を切っていたはずが、いまや競合他社も同レベル、あるいは先行している部分もある。
• 2025年以降のC-SUV刷新は日産がリードし、欧州市場でのB-SUV刷新はルノーがリードします。
• 南米においては、ルノー向け、日産向けのBプラットフォームが合理化され、現行4プラットフォームから1プラットフォームへ集約されます。本プラットフォームは、2つの工場で生産される予定です。
• 東南アジアと日本においては、メンバー各社は、日産と三菱で協業した軽自動車のように本枠組みをさらに活用する機会を検討していきます。
新聞報道では南米において現行4つもあるプラットフォームが1プラットロームに集約されることが大きく扱われていた。
これは日産のBプラットフォームが現在
・Nissan-Renault B
・Renault/Dacia B0
・Dacia M0
・Nissan V
あるものを、Vプラットフォーム(あるいはCMF-Bに)に集約するという意味だろう。
2025年以降のC-SUV(日産エクストレイル(ローグ)/キャシュカイ/次期三菱アウトランダー/ルノー・コレオス/アルカナなど)は日産がリーダーとなる。と言っても、すでにC-SUVに関しては、日産主導で開発をしてきたはず。2020-21年に登場する次期エクストレイルとアウトランダーは「マザービークル(リーダー会社の車両)とシスタービークル」の関係なはず。
「欧州市場でのB-SUV刷新はルノーがリードします」の一文は、C-SUVと違って「欧州市場での」という言葉が先についている。次期日産ジューク(と言っても現行欧州ジュークはデビューしたばかりだが、その次という意味だろう)は、さらにキャプチャーのシスタービークルになるということだろう。そして、このB-SUV(近々日本導入されるキックスなど)は、欧州とそれ以外で開発リーダーが違うということを暗に示しているのかもしれない。
いずれにせよ、「これらすべてを合わせると、アライアンスモデルの50パーセント近くが2025年までにリーダーとフォロワーの枠組みで開発、生産されます」と発表された、。
今回の発表に特段目新しさはない。「ゴーン後の混乱」を落ち着かせ、悪化した業績を回復させるために約束事を「再確認」したということだろう。
今回の「リーダーとフォロワー」の枠組みで3社のモデルへの投資額は最大40%削減できると見込まれている。「規模は追わない。効率を上げる」という宣言の裏には、「魅力的な新車開発」をゴーン時代に怠ってきた負の遺産がある。3社連合が、この発表とおり効率的で魅力あるニューモデルを送り出してくれるを期待したいが、それが2025年では遅すぎる気がする。
本日(5月28日)開催される日産の「中期計画説明会」に注目したい。
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