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2035年カリフォルニア州「ガソリン車販売禁止」のウラ事情 複雑に絡み合う政治と経済 アメリカ大統領選挙の結果も自動車の未来を左右する

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次の大統領が誰になるかで、大きく変わる

フォードはベストセラーピックアップトラックのF-150のEVモデルを造る。

GMもBEVに注力する。ホンダと組むのもその戦略の一環だ。
では、今回のニューサム知事発言は自動車メーカーにとってどうなのか。表向きは反発しているが、BEV導入については各社で準備が進んでいる。GMはホンダとBEVで組んだ。GMが開発した電動モーターや制御系をベースにホンダ向けBEVが開発され、GMの工場がGM向けとホンダ向けのBEVを製造する。フォードはVWと組み、VWが開発した電動車プラットフォームMEBの供給を受ける。フィアット・クライスラーはPSA(プジョー/シトロエン)と合流した。トヨタとマツダは共同でBEV開発を進めている。ダイムラーとBMWは電動車専用ブランドをすでに仕立てている。ヒュンダイ・起亜もほぼ準備は整っている。

2022年にカ州内販売台数の22%相当分をBEV/PHEV/FCEVにする規制が予定どおり始まったとしても、自動車メーカーは対応できる。面倒なのはカ州独自規制と連邦規制があまりに異なる点だ。両方に対応する販売モデルミックスを自動車メーカーは展開しなければならない。それがカ州規制を採用する13州(カ州を含む)全体なのか、それとも離脱組が出てくるのか、あるいは連邦裁判所がトランプ宣言の勝利という裁定を下してカ州規制の効力が失われるのか。このあたりは大統領選挙が終わって次期政権が確定するまでわからない。

アメリカの自動車市場は、COVID-19のような非常事態がなければコンスタントに年間1700万台をキープできる。カ州は全米50州のなかでは販売台数11%を占める最大市場だ。年間約200万台を期待できる。カ州に同調する12州を加えると年間600万台弱であり、アメリカ市場全体の3分の1に達する。

また、アメリカ市場は基本的には内燃機関エンジンのパワーとトルクが必要な市場であり、排気量3.5ℓのV6エンジン車が売れる国だ。ガソリン価格の動向によって売れ筋は変わり、直近の動向では1ガロン=4ドルを超えるとワンサイズ小さいクルマを買うとか、SUVをやめてセダンにするとか、大型SUVではなく小型SUVにするとかいった行動を消費者は取っている。しかし、1ガロン=3ドル台なら購買動向は変わらない。アメリカでは93〜94%のユーザーがガソリンエンジンに満足しており、電動化車両は求めてないという調査結果もある。

前述の大気浄化法209条をカ州が無視し続けている点については、これまでの下院公聴会ではまったく歩み寄りの気配が見られず、1国2制度とも言える排ガス規制が存続する可能性のほうが高い。ただし、これも次期大統領がだれになるかで変わってくる。

つまり今年の大統領選挙は、2030年代に向けたエンジン開発にも影響を与える重要な選挙なのである。これはそのまま、自動車メーカーのパワートレーン開発は「政治の影響を受ける」ということの証明であり、この点は欧州もまったく同じだ。VWのディーゼルゲート問題以降、欧州では国ごとでもEU議会議員でも環境保護派が台頭した。まっとうな議論より「大企業憎し」が先行し、良識派の議員も「行き過ぎた電動化」を避難しづらくなった。同時に官僚も暴走している。

EU委員会は知恵者の集団であり、EUが求めるだけの数のBEVを揃えるためには中国、韓国、日本の電池メーカーにお金を支払わなければならないということを彼らは認識している。電動モーターに使われる希土類がUE域外に依存していることも知っている。コンゴでの年少者就労コバルト発掘問題に代表されるような、EUが言うところの「フェアトレードに反する」事例がBEVには少なからず付きまとうことも知っている。

しかし現状では、こうした懸念をすべて見て見ぬ振りをしなければならないない状況である。さらに言えば、10年後に直面するだろう廃棄バッテリーの再資源化は、中国企業のバッテリー安売り攻勢が続くかぎり採算化はほぼ絶望的だ。EU委員会が懸念を示してもEU議会は自動車のオール電動化を志向している。

旧知のアメリカ人ジャーナリストからの伝聞を紹介する。
「トランプ大統領はバカではない。科学顧問も抱えている。パリ協定からの離脱は彼なりの判断であり、じつはアメリカにも声に出せないCO2悪玉論慎重派はかなりいる。研究者や科学者の間にもいる。疑わしきを罰し、そこに巨額の資金を注ぎ込むことは、ビジネスマンとしてのトランプ大統領にとって許し難い行為であることは間違いない。同時に、中国の習近平政権との関係を深めていたドイツなどに対しても反感を抱いている。フランスのマクロン政権も好きじゃない。EUの産業界は脱アメリカを志向している。科学的根拠と嫌悪感のブレンドがトランプ大統領のパリ協定離脱だ」

このつづきは、いずれまた。

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