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これでいいのか? 日本学術会議の問題を自動車から考えてみる。「日本最高の学識経験者集団は自動車を相手にしていない!」

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どの分野が重要で、どの分野が不要ということは言えない。すべての分野が重要である。たとえば「政治学」「史学」「地域研究」は、世界のある特定の地域との政治問題、通商問題、文化交流を考えるとき、セットで役に立つ。「哲学」「史学」「言語・文学」もセットで活用できる。政府に対して必要な提言を行なえるエキスパート集団は、国益の面からも必須である。

自然科学分野では、「農学」「食料科学」「基礎生物学」「統合生物学」のセット利用が重要な国益を担う。食糧危機に瀕している地域、つねに食料不足の問題を抱えている地域に対し、ただ「分け与える」のではない、将来につながる支援を行なうときに必要だ。中国の資金力に対抗し日本の国際的プレゼンスを高める効果もある。

筆者は「地球惑星科学」と「環境学」の連携にも注目している。欧州が主張する「CO2悪玉論」を科学的に検証できるのは、いまやニュートラルな立場にいる日本だけだ。福井県の水月湖湖底から採取された7万年分の堆積物である「年縞」の知見をほかの分野と共有できれば、地球という天体がそもそも抱える気候変動メカニズム解明の一助となるはずだ。

こうしたもろもろの研究促進を日本学術会議会員諸氏にはお願いしたいのだが、そもそもが政府からの諮問に対する答申および提言が同会議の趣旨だから、自由に身動きが取れないのかもしれない。だとしたら機構改革を行なえばよいのではないかと外野の筆者は考える。

日本学術会議会員の各分野について、表に平均年齢を記した。単なる興味本位だ。これも筆者の手計算である。筆者は今年9月で62歳になった。まだまだ知力は充実すると思っているから、70歳定年という現在の日本学術会議の「縛り」にも特例が必要だと思う。半面、若い会員が少ない点はそれ以上に問題だ。

45歳以下の「若手の意見も聞く」という意味で、日本学術会議は2011年に「若手アカデミー」を設立した。しかし「そうじゃないだろ」と筆者は思う。若手を会員に抜擢する道を拓くべきだ。30歳代の天才が中国でもアメリカでも頭角を現している。

さらに言えば、日本学術会議は日本全国に多数ある分野ごとの「学会」との連携を図るため2005年に「日本学術会議協力学術団体」という制度を作った。自動車に関係の深い日本機械学会も協力学術団体のひとつだが、筆者はなんとなくここに支配構造の強化という意図を感じてしまう。「頂点に立つのは我われだ」と。

話を戻す。日本学術会議会員の医学の専門家の皆さんが、今般のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)流行に当たって何か政府に対し勧告したかというと、何も行なっていない。政府が諮問(意見を伺うこと)していないから、それに対する答申(訊かれた要件について意見を述べること)はできないというのはそのとおりだが、日本学術会議には政府への「勧告」という権限がある。この権限を行使すれば政府に何らかの意見具申を行なうことができる。しかし、それはやっていない。

調べてみれば、政府は日本学術会議に対し2006年度以降は諮問を行なっていない。日本学術会議が政府に対し勧告を行なったのは2010年が最後だった。東日本大震災や台風被害に対しても、何も意見を述べていない。国民がなんとかしてほしいと考える問題には、ほぼノータッチである。

日本学術会議法のなかに、この会議が政府に勧告することができる内容が書かれている。それは

一 科学の振興及および技術の発達に関する方策
二 科学に関する研究成果の活用に関する方策
三 科学研究者の養成に関する方策
四 科学を行政に反映させる方策
五 科学を産業および国民生活に浸透させる方策
六 その他日本学術会議の目的の遂行に適当な事項

……である。いっぽう日本政府は以下の事項について日本学術会議に諮問することができる。

一 科学に関する研究、試験等の助成、その他科学の振興を図るために政府の支出する交付金、補助金等の予算およびその配分
二 政府所管の研究所、試験所および委託研究費等に関する予算編成の方針
三 とくに専門科学者の検討を要する重要施策
四 その他日本学術会議に諮問することを適当と認める事項

日本学術会議ホームページ

以上はすべて法律に明記されている。しかし、この10年以上、日本学術会議は政府機関であることを忘れたかのように、何もしていない。政府も諮問していない。この無風状態は何が原因なのだろうか。

今般の菅総理による任命拒否問題に対し、日本学術会議は菅総理に要望書を提出した。これもホームページに掲載されているので取り上げる。ふたたび無礼な物言いになるが、もし、この書面を提出したのなら、筆者が新聞社時代に労働組合副委員長をしていたときに会社経営陣に提出した要望書より品がない。筆者はそう思う。大人が、しかも日本の学術界を代表する政府機関が一国の総理大臣宛てに提出する書面ではない。

今回の問題については「任命拒否は法律違反」「法解釈を変えたのか」という問題と、菅総理が理由も述べずに任命拒否したことが問題視されているが、人事についてはいちいち説明などしないのが官公庁でも民間企業でも当たり前だ。筆者が知る方は、日本学術会議連携会員に所属学会から推薦されたが、日本学術会議に却下された。「却下の理由なんて言ってこなかった」と、その方はおっしゃる。これと同じことだ。

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日本は欧米に比べて産学官連携プロジェクトが極めて少ない。自動車に限って言えば、かつて自動車排ガス公害が社会問題になったときに排ガスの健康被害研究に政府予算が投じられた程度であり、2014年度から5カ年で実施された前述のSIP「革新的燃焼技術」プロジェクトは、排ガス公害問題以来ひさびさの国費投入だった。同様の予算の自動車関連プロジェクトは、欧米にも中国にも数多く存在する。

政府と日本学術会議の内紛は、野党とメディアにとっては存在意義を示すチャンスかもしれないが、自動車ユーザーにとっては無関係だ。両者の思惑はいろいろな方面から耳にするが、そんなことよりも日本学術会議と政府は前向きな議論へと方向転換していただきたいと願う。

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