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エストリル国際試乗会の様子をリポート 驚異の800ps、800Nm! マクラーレン・セナ試乗会がエストリルサーキットで行われた理由は

  • 2018/06/27
  • GENROQ編集部
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マクラーレン・セナ

矢継ぎ早にニューモデルを導入するマクラーレン。その最新作がセナだ。伝説のF1ドライバーの名を冠するスーパースポーツは、やはり伝説的なモデルだったのか……? ポルトガルのエストリルサーキットからその第一印象をリポートする。
REPORT◎大谷達也(OTANI Tatsuya)
PHOTO◎McLaren Automotive

ついに登場した究極のスーパースポーツ

 マクラーレン・セナの価格はおよそ1億円だが、限定生産分の500台は公式発表よりも前に完売していた。つまり、生まれながらにして歴史的名車となることが運命づけられた“ウルトラ”スーパースポーツカーなのである。
 
 2010年に現体制に生まれ変わったマクラーレン・オートモーティブは、この“ウルトラ”スーパースポーツカーのことをアルティメット・シリーズと呼んでいる。マクラーレンがアルティメット・シリーズを手がけるのは、2012年発表のP1に続いてセナが2モデル目。厳密にいえば、P1のサーキット専用走行モデルであるP1 GT-Rが存在したので3モデル目ともいえるが、公道を走れるロードカーのアルティメット・シリーズはセナが2モデル目で間違いない。

 この「公道も走れる」というところに、セナの重要なコンセプトは存在する。実は、セナはサーキットでのパフォーマンスを最優先して開発されている。けれども、そこに「公道も走れる」という枠組みをマクラーレン自らが設定した。公道を走行するからには法律で義務づけられた安全規定に合致しなければいけないし、排ガス規制や騒音規制もクリアしなければいけない。それらは、ある意味でパフォーマンスを制限する要素となるが、もしもこれがなかったらセナは限りなくレーシングカーに近い成り立ちになっていただろう。
 
 おかげで、セナはトランスポーターを仕立てることなく、オーナーが自らステアリングを握ってサーキットに出向き、そこで限界的な走行を味わった後で、またセナで自宅まで自走で戻ることができる。そんな楽しみ方のできる“ウルトラ”スーパースポーツカーを、マクラーレンはこのセナで実現したかったのだ。
 
 これとは別に、セナをベースにしたサーキット走行専用車“セナGT-R”も開発されるが、経験豊富なレーシングドライバーによれば、セナのパフォーマンスでさえすでに、世界中のレースを戦うGT3マシンに極めて近いというから驚きだ。

サーキットでの速さと公道走行可能を両立

 では、マクラーレンはどのようにして公道走行可能なスポーツカー(ロードカー)でレーシングカー並みのパフォーマンスを実現したのか?
 
 ロードカーとレーシングカーの決定的な違いはエンジンのパフォーマンスではなくシャシー性能とエアロダイナミクスにあるといっても過言ではない。反対に、GT3のエンジン性能は500ps程度に制限されることが多い。これに対してセナの最高出力は800ps。つまり、エンジン性能に関していえばロードカーとレーシングカーの間ですでに逆転現象が起きているのだ。
 
 これとは対照的に、シャシー性能とエアロダイナミクスはレーシングカーのほうが圧倒的に優れている。いずれも日常的な快適性や実用性を犠牲することで手に入れたものだが、「公道も走れる」セナがこれらの要件を無視するわけにはいかない。そこで採用されたのが数々の可変制御技術である。
 

リアのアクティブウイングは近年流行のスワンネック型。状況に応じて角度が25度変化する。
リアウイング下にレイアウトされたエキゾーストパイプ。テスト車はEU仕様のトリプル・エグジット・システムが採用されていた。

 たとえば、セナのサスペンションに金属製のコイルスプリングはない。その代わりに、特殊なガスと油圧システムを組み合わせたレースアクティブ・シャシーコントロールⅡと呼ばれる、セナのために開発された専用のサスペンション・システムが採用されている。これは、走行条件にあわせて車高やスプリングの硬さを4輪別々に設定できる、まさに“魔法のサスペンション”である。
 
 その原型であるレースアクティブ・シャシーコントロールはP1で世に出たものだが、セナはこのサスペンションに720Sで登場した高度なダンパー制御システムを組み合わせることでレースアクティブ・シャシーコントロールⅡへと進化させた。こうしてセナは、レーシングカー並みの“硬さ”と公道走行を可能にする“しなやかさ”の両方を手に入れたのだ。
 
 セナのエアロダイナミクスは250km/h以上で800kgものダウンフォースを発生させるほど高度なものだが、大きなダウンフォースは空気抵抗を生み出し、燃費性能と動力性能を悪化させる。また、加速、コーナリング、減速などによっても必要となる空力性能は異なる。そこでセナでは運転状況に応じて前後のダウンフォースを最適化するアクティブ・エアロダイナミクスを搭載。たとえば、減速時にはリアウィングを25度まで立てて巨大なダウンフォースを発生。ノーズダイブによって浮き上がろうとする後輪を確実に路面に押しつけ、4本のタイヤのグリップをフルに引き出してブレーキ性能を高める。言い換えれば、セナのエアロダイナミクスは単にパフォーマンスを高めるだけでなく、クルマのスタビリティを高めることで安心して限界性能を発揮できるようにするためにデザインされたものでもあるのだ。

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