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マツダ・ロータリーエンジンの系譜と系統 ロータリーエンジンの可能性⑦

  • 2020/04/23
  • Motor Fan illustrated編集部
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1961年7月、東洋工業(現マツダ)はドイツ(当時は西独)のNSU社と技術提携を結び最初にKKM400型(400ccシングル)ロータリーエンジンが送られてきた。同年11月のことである。それが量産化へ向けて研究開発を始める原点となった。当初ライバルは100社を超えると言われたが、自動車用エンジンとして開花させたのは日本のマツダだけである。

TEXT:近田 茂(Shigeru CHIKATA) 
PHOTO:MAZDA

April 1961-40A

April 1961-40A
10A:1967年5月に登場したコスモスポーツに搭載。当初110ps/7000rpmの最高出力と13.3㎏・m/3500rpmの最大トルクを発揮。世界初の量産ロータリーエンジン車は、4MTを介して185㎞/hの最高速度を誇った。翌年128馬力にパワーアップしたL10B型に進化。一方100馬力仕様の10Aがファミリアロータリーに搭載され1968年7月に発売。
12A:10Aのトルク不足を補うべく、ローターハウジング幅を10Aの60mmから70mmにワイド化され、1970年5月に登場したカペラロータリーに搭載された。10Aは491cc×2の982ccだったが、12Aは573cc×2の1146ccに拡大され最高出力は120ps/6000rpm。最大トルクは16㎏・m/3500rpmを発揮。車両重量は950㎏と軽く4MTで最高速度は190㎞/h。翌年ロータリー初のAT車を投入。1972年には5MT車のGSⅡも追加された。
13B:12Aに対してローターハウジングの幅をさらに10mm拡大。幅を80mmにすることで、排気量を654cc×2の1308ccへ 拡大している。1973年12月に昭和51年規制適合車としてルーチェAPグランツーリスモに搭載して新登場。翌年マイクロバスのパークウェイロータリー26に、1975年にはロードペーサーやコスモAPにも搭載された。最高出力は135ps/6000rpm、最大トルクは19㎏・m/4000rpmを発揮。以後マツダロータリーの主力になる。
20B-REW:13Bを3ローター化したもの。654cc×3で総排気量は1962cc。ロータリー史上過去最大のエンジンである。1990年4月に登場したユーノスコスモに搭載。シーケンシャルツインターボを備え、最高出力はなんと280ps/6500rpm、最大トルクは41㎏・m/3000rpmを発揮。優雅なラグジュアリースペシャリティカーとして異彩を放った。ただ、軽量小型なロータリーならではの特質を生かすには2ローターが相応しいことを改めて学んだと言う。
R26B:1991年のル・マンで見事、総合優勝を飾った787B。初の4ローターを搭載した767投入以来4年目の快挙だった。エンジンは当初13J改と呼ばれ、最高出力も550ps程度だったが、1990年に26Bと改称され700psを標榜していた。13B×2の4ローターで総排気量は2616cc。やれること全ての技術的なトライを折り込んだある種至高のロータリーエンジンである。管長の長い吸気系にはトロンボーン方式の可変吸気システムが採用されている。
13A:1969年10月登場したルーチェロータリークーペのみに搭載。ローターハウジングの幅は10Aと共通だが、偏心量を大きく(他は15R。13Aは17.5R)し、排気量を655cc×2の1310ccに拡大した。最高出力は126ps/6000rpm、最大トルクは17.5㎏・m/3500rpmを発揮。ロータリー史上一番低いピーク発生回転数が印象深い。
16X:レネシスの次を担う新世代。ローターハウジングの幅は70~72mm、総排気量は1552~1596ccと予測する。

長年の熟成を重ね、やがてル・マン優勝を経験。そして革新の時代を迎える。

 NSUのKKM400型エンジンは、水冷トロコイドハウジングと油冷ローターを備えていた。熱膨張によるブロック歪みへの対応など苦心の跡が伺えるわけだ。マツダは1963年4月、山本健一部長を筆頭に47名の技術者から成る研究部を設置。試作1号機こそシングルローターであったが、量産へ向けた研究開発は早くからマルチ化が進められ、既に1960年代前半には2~4ローターまでの試作エンジンを完成させていた。市販化を目指す2ローターはまず399cc×2のL8A型エンジンをプロトタイプのL402Aに搭載し走行実験を開始する。1964年12月には491cc×2の3820型へ進化。これが量産試作のL10A型へとつながった。60台のコスモスポーツが試作され、国内で述べ60万kmに及ぶテストランを実施。多くのデータを基に熟成を重ね1967年5月、世界初の量産へこぎ着けたのだ。ちなみにL10Aはそのままコスモスポーツの形式番号となり、エンジンは10Aと呼ばれた。

 その後ローターの偏心量を大きく(ロングストローク化)した655cc×2の13Aを投入。さらに1970年代には10Aに対してローターハウジング幅を拡大(ボアアップ化)した573cc×2の12Aを追加した。そしてハウジング幅をさらに拡幅した654cc×2の13Bを投入している。この4タイプがマツダロータリーの基本となっているのだ。ちなみにユーノスコスモに搭載された20B-REW型エンジンは13Bを3ローター化したものだ。一方モータースポーツの世界では1991年ル・マンの栄光に輝いた787Bが有名。搭載エンジ ンは直列4ローター。2ローターの13Bを二機合わせたレース専用であることからR26Bと呼ばれている。そして40年間培われてきたマツダの技術力は、やがて次世代の16Xへと受け継がれていくのである。

※2008年4月に発行されたMotor Fan illustrated Vol.19「ロータリー・エンジン 基礎知識とその未来」より

次回は、RX-8を2020年春にあらためて試乗した世良耕太さんのレポート「マツダRX-8 マツダの3世代分の進化を感じつつもロータリー・スポーツの楽しさを満喫」をお送りします。お楽しみに。

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