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トヨタ、スバル、スズキ、マツダ、資本提携の真意はどこになるのか? トヨタアライアンスに見る「攻め」と「守り」の資本提携【牧野茂雄の自動業界車鳥瞰図】

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思いつくままにフリーハンドで紙に書き、整理し、シンプルにまとめたトヨタアライアンスの姿が上の図だ。GMつながりのスバルとスズキは、これも縁だろうか。フォードが株を手放したことで「後ろ盾がなくなった」とメディアが評したマツダは、日本勢がなし得なかったブランド力確立へと血を流しながら進んでいる。トヨタは知名度こそ高いが、日本を離れればブランド力はけして高くない。このアライアンスが相互に実りあるものになってほしいと切に願うばかりだ。

トヨタがスバルへの出資比率を20%間で増やし持分法適用会社にすると発表した。同時にスバルも800億円をトヨタに出資し、相互に株を持ち合う関係になる。これでトヨタと「緩い資本提携」でつながる国内メーカーはマツダ、スズキ、スバルの3社になる。まさにトヨタアライアンスと呼べる体制だが、資本提携の真意は「攻め」と「守り」の両方にあるように思う。

「この程度のパーセンテージで株を持ち合い、いったいなにをしようというのか」

 米国メディアや米国の金融業界では、スバルがトヨタ株の0.4%程度を握るために800億円を支払うことに対し、こんな声が多い。日本のメディアには「トヨタから分けてもらうもろもろの技術に支払う技術料」「スバル単独では予想されるCASE需要に対応できない」との見方が多い。経済の専門家の間には「株の持ち合いをやめようという風潮があるなかでトヨタは逆行している」「物言う株主を排除する姿勢でありコーポレートガバナンスの点からも後退」との見方が少なくない。

 C=コネクテッド(走行中のクルマが外部の情報ネットワークとつながること)、A=オートノマス(自動運転)、S=シェアリング(カーシェアやライドシェアなど新しいモビリティサービス)、E=エレクトリフィケーション(クルマの電動化)の4つでCASE。日本人が日本のニーズを汲んで考えた造語ではないが、たしかにトヨタとスバルは北米依存度が高く、対応は必要だろう。しかし、スバルはAとSからはもっとも遠い性格のクルマでは?

 トヨタを中心としたアライアンスを紙の上に描いてみると右の図になった。トヨタグループと呼ばれる企業集団に属する自動車メーカーはダイハツ工業と日野自動車の2社。スバルはトヨタからの出資が20%になり持分法適用会社となるが、スバルはトヨタの追加出資額に相当する800億円分のトヨタ株を取得する。スバルからトヨタへの出資比率はおそらく0.4%程度と思われるが、それでも立派な相互持ち合いである。これで国内の自動車メーカー3社がトヨタと株を持ち合う体制になった。

 トヨタは過去、トヨタの株を同業他社に持たせることはしなかった。初めての例がマツダであり、2017年8月に資本提携が実現した。両社の関係は2004年にトヨタの車載情報ネットワークサービス「G-BOOK」にマツダが参加したときに始まり、2015年の業務提携を経て2017年に500億円相当の株を相互に持ち合う資本提携へと発展した。実現までに13年を要した株持ち合いである。

 トヨタ社内からは「豊田章男社長がマツダにぞっこんだから」との声があった。トヨタがマツダに供与したTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)をマツダが独自の発想で使いこなし「乗せられている感」をある程度払拭し「乗り味のいい仕上がり」に仕立てたことが豊田社長の琴線に触れたことは業界内に伝わっている。トヨタとマツダが互いに商品を持ち寄り、それぞれ相手の商品を開発メンバーが試乗するイベントで「トヨタによるマツダ車への評価が高かった」とも聞いた。

 マツダもスバル同様にCASEのAとSからは遠いところにいる企業だ。豊田社長が唱える「もっといいクルマづくり」は自動運転よりはマツダに近い。包括提携の記者会見で語られたように「互いにリスペクトし合う気持ち」が資本提携の理由のひとつであることは間違いないだろう。いま、トヨタとマツダは共同で米・アラバマ州に設立した米国工場の建設を進めており、2021年に稼働する。

 一方、スバルとトヨタの資本提携は双方の意思で始まったものではない。日産が富士重工株(当時)を放出するときは、防衛産業でもある航空機部門を抱える同社を同盟国アメリカの老舗企業が傘下に収めることに抵抗はなかった。しかし、GMがスバル株を放出するときは「信頼できる日本企業」が引き受けなければならないとの判断で政府が動き、トヨタに白羽の矢が立ったという経緯である。

 出資するからにはなにかしてもらわなければならず、富士重工の米国生産拠点SIAでトヨタ車を生産し、FRスポーツカーの開発・生産を委託し、軽自動車はトヨタ傘下のダイハツが富士重工に供給することになった。新しい水平対向エンジンのための工場はトヨタの資金提供で建設された。商品面での連携を見るかぎり、トヨタがスバルを持分法適用会社にしたのは自然な流れに見える。

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