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内燃機関超基礎講座 | タービンハウジング一体型板金マニフォールドの効果

  • 2020/08/29
  • Motor Fan illustrated編集部
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ターボチャージャーは「高価な部品」である。 過給エンジンの普及を促進する上で最大のネックとなっている部分だ。 ブレイクスルーに向けた最新技術の一端を紹介しよう。
TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)

ターボ過給エンジンは、排気の熱をターボチャージャーが吸収してしまうため、自然給気エンジンに比べて触媒活性化までに時間がかかってしまう。つまり、コールドスタート直後はエミッション性能で不利になる。対策として、エキマニ部全体を覆う構造のシュラウドを設けるなどして空気層を作り、触媒の早期活性化促進に加えて周囲への熱害を低減する例が少なくない。しかし、将来的にさらに強化される規制対応のためには、ハウジングが鋳物であるがゆえの熱マスの大きさが無視できない問題となってくる。これを板金化できれば、熱マスが大きく低減できることで触媒活性化の促進効果が高まり、さらに高価な鋳鋼を使う必要がなくなるため、コストダウン効果も期待できる。

排気系のエキスパートである三五に将来展望を取材したところ、取り組むべき課題のひとつとして「板金化」が提示された。現状のターボハウジングは鋳物であり、過給の効率を高める目的から、日産GT-Rのようにエキマニとハウジングを一体化した構造も普及の兆しを見せている。しかし、ハウジングの素材であるステンレス鋳鋼が非常に高価なことに加え、鋳物が持つ熱マスの大きさが問題となる。将来的に予定されている排ガス規制は、-7°Cからのコールドスタート要件が含まれている。触媒早期活性化を促進する上で、エキマニもハウジングも可能な限り熱マスを低減しておきたい。

日産GT-Rのエキゾーストマニフォールド+ターボチャージャー。(PHOTO:NISSAN)

そこで発想を転換し、エキマニからハウジングまでを板金で製造する構想が生まれたわけだ。思えば排気系の進化の歴史においては「鋳物から板金への転換」が常に促進されてきた。また、過給ダウンサイジングをBセグメント以下の普及価格帯車種にまで広く普及させるためには、コスト面を考慮した構造が必要だ。その点においても、板金化は挑戦する意義が大きい。

フォードのECOBOOSTエンジンは、すでにエキマニからタービンハウジングまでをフルに板金で製造。触媒早期活性、コストダウンに加えて軽量化にも貢献できるなど、非常にメリットの大きい試みである。
三五による調査。さまざまな過給エンジンのエキマニからタービンハウジング部にかけての構造について、普及価格帯車種ではエキマニの鋳物化がトレンドとなっている傾向が見て取れるのが興味深い。
三五が行なった触媒暖機性能の試験。上が板金品、下が鋳鋼によるエキマニ〜タービンハウジングを持つエンジンのサーモグラフだ。板金品の場合、触媒上流部が早期に高温化していることが見て取れる。
触媒暖機性能評価試験の結果をグラフ化したもの。板金品はエンジン始動20秒経過の時点で、鋳鋼品に比べて触媒床温が20°C高められる、との結果が導かれた。ベンチ試験条件は室温25°C、NA_ENG使用、ターボレス(フィンレス:但しフィン部はフィン想定でパイプを挿入)、無負荷アイドル放置(10分)。

実は、すでにフル板金による過給システムの搭載例は存在しているが、構造はシングルスクロール式。三五ではツインスクロール化を視野に入れつつ、研究・開発を進めている。応答遅れ軽減に効果が大で、構造的にも簡素かつ堅牢なツインスクロールターボが、板金によって低コストで作成可能となれば、過給ダウンサイジングのいっそう本格的な普及に弾みがつくことは想像に難くない。

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