畑村耕一博士による年頭所感【2018-2020】
- 2000/01/01
- Motor Fan illustrated編集部
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「2017年パワートレーンの重大ニュース」/EVフィーバー、シリーズHEV、SKYACTIV-X
2018-① 日本のエンジン技術の危機が迫っている>
2018-② もう電気自動車リーフの出番はなくなった、日産ノートe-POWER>
2018-③ SKYACTIV-X(スカイアクティブX) どうしてマツダだけがHCCIを実用化できるようになったか>
2018-④ 電気自動車は本当に地球にやさしいか>
2018-⑤ 2050年を見据えた2030年までのパワートレーンの進むべき道>
「2019年パワートレーン開発への提言」/エンジンはなくならない
2019-① 「エンジンはなくならない」が「エンジンはないほうがいい」>
2019-② エンジンで直接タイヤを駆動するクルマは20世紀の遺物と呼ばれる日が来るかもしれない>
2019-③ 中期的にも長期的にもEVの普及がCO2削減に有効な手段であるとは限らない>
2019-④ カーボンニュートラルを実現する燃料 水素とCO2から合成するe-fuelに注目!>
2019-⑤ ノートe-POWER 走りと環境性能を両立するパワートレーンとは?>
2019-⑥ SKYACTIV-Xか可変圧縮比か。シリーズハイブリッド専用の高効率エンジン実現に向けて>
2019-⑦ 2ストローク対向ピストン・ガソリンエンジンの可能性>
「2020年の年頭に当たって」/自動車用パワートレーンの将来
2020-① 過給リーンバーンの技術競争が始まった、マツダSKYACTIV-Xの評価は?>
2020-② 魅力的な電気自動車が続々登場してきた。EVとHEVの覇権争いが始まる?>
2020-③ エンジンもトランスミッションも新しい変革が始まる>
「2017年パワートレーンの重大ニュース」/EVフィーバー、シリーズHEV、SKYACTIV-X
2018-① 日本のエンジン技術の危機が迫っている
『日本のエンジン技術の危機が迫っている』畑村耕一「2017年パワートレーンの重大ニュース」①
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
VWのディーゼルゲートの結果、90年代から続く日欧のパワートレイン技術戦争に日本は勝利した。欧州メーカと政府は充電走行はCO2を排出しないという非合理的なCO2計算法を持ち出して、ディーゼルに頼らなくても、PHEVとEVで規制対応ができるようにした。欧州発の電動フィーバーをマスコミが大々的に取り上げ、エンジンはなくなるという風潮が生まれ始めている。
2018-② もう電気自動車リーフの出番はなくなった、日産ノートe-POWER
EVの魅力は、走行中のCO2排出量がゼロで地球にやさしいことではなく、走りの素晴らしさにある。そこでガソリンで走ってEVのような電動駆動の良さを味わえるようにしたら、シリーズハイブリッドになる。高速燃費の問題があるのでシリーズは難しいと思っていたがe-POWERが出てきた。環境と走りを両立できるので、EVの出番はなくなった。
2018-③ SKYACTIV-X(スカイアクティブX) どうしてマツダだけがHCCIを実用化できるようになったか
『SKYACTIV-X(スカイアクティブX) どうしてマツダだけがHCCIを実用化できるようになったか』畑村耕一「2017年パワートレーンの重大ニュース」③
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
シリーズハイブリッドの対極にあるのがHCCIだ。エンジンの運転範囲が狭いハイブリッドでは最高熱効率が重視されるが、マイルドハイブリッドでは使用頻度が高い部分負荷の熱効率が重要になる。騒音とNOxの問題で高負荷運転ができないHCCIは部分負荷の熱効率向上手段だ。そこでマツダはSKYACTIV-Xと呼ぶHCCIエンジンを2019年にも実用化する。
2018-④ 電気自動車は本当に地球にやさしいか
『電気自動車は本当に地球にやさしいか』畑村耕一「2017年パワートレーンの重大ニュース」④
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
EVは走行中に排ガスを出さないことから、CO2を増加させないと思われがちだが、実際は充電電力を生み出す火力発電所から大量のCO2を排出している。電力はすべての発電所から均等に供給されるという間違った仮定の下でEVのCO2排出量が算出されていることが問題だ。実際はEVを止めて(その分石炭火力発電を止める)、HEVで走る方がCO2は減少する。
2018-⑤ 2050年を見据えた2030年までのパワートレーンの進むべき道
『2050年を見据えた2030年までのパワートレーンの進むべき道』畑村耕一「2017年パワートレーンの重大ニュース」最終回
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
不安定な再エネ発電が増加すると、条件次第で大量の電力が余って来る。そこで余剰電力は捨てるのではなく水素の製造に使うことができる。その水素を使う車はカーボンニュートラル走行ができる。水素をCO2と反応させてメタン(天然ガス)を製造するプラントも稼働している。将来的に液体燃料も製造可能になれば、EVだけではなくエンジン車もカーボンユートラルだ。
「2019年パワートレーン開発への提言」/エンジンはなくならない
2019-① 「エンジンはなくならない」が「エンジンはないほうがいい」
①「エンジンはなくならない」が「エンジンはないほうがいい」畑村耕一「2019年パワートレーン開発への提言」
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
筆者のグライダーパイロットと電動車両の開発の経験から「エンジンはないほうがいい」という哲学を持ったこと、最近は、EVフィーバーが起こってンジンはなくなるという風潮が生まれていることに対して「エンジンはなくならない」と主張していることを述べた。
2019-② エンジンで直接タイヤを駆動するクルマは20世紀の遺物と呼ばれる日が来るかもしれない
②エンジンで直接タイヤを駆動するクルマは20世紀の遺物と呼ばれる日が来るかもしれない 畑村耕一「2019年パワートレーン開発への提言」
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
車の駆動力特性から考えて、エンジンとトランスミッションの組み合わせでは電動駆動のような車の理想とする走りは実現できない。多くのユーザーがEVの快適な走りを知ってくると、エンジンが直接タイヤと繋がっていないEVに匹敵する快適な走りが要求されるようになる。
2019-③ 中期的にも長期的にもEVの普及がCO2削減に有効な手段であるとは限らない
③中期的にも長期的にもEVの普及がCO2削減に有効な手段であるとは限らない畑村耕一「2019年パワートレーン開発への提言」
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
各種環境対応車のCO2排出量を、実用燃費に近いEPAの燃費ラベルを使ってエネルギーの発生過程を含めて算出した。当面はEVよりHEVの方がCO2排出量が少ない。EVでCO2を削減するには、不安定な再エネ発電から生じる余剰電力を使って充電することが必須である。
2019-④ カーボンニュートラルを実現する燃料 水素とCO2から合成するe-fuelに注目!
④カーボンニュートラルを実現する燃料 水素とCO2から合成するe-fuelに注目!畑村耕一「2019年パワートレーン開発への提言」
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
欧州では、余剰電力を使って天然ガス自動車に使うメタンを生成するe-Gasプラントが稼働している。加えてガソリンや軽油の代わりに使える燃料(e-Fuel)を製造する開発が進められているので、将来的にはEVだけでなくHEV(従来エンジン車)もカーボンニュートラル走行ができるようになる。
2019-⑤ ノートe-POWER 走りと環境性能を両立するパワートレーンとは?
⑤ノートe-POWER 走りと環境性能を両立するパワートレーンとは? 畑村耕一「2019年パワートレーン開発への提言」⑤
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
理想の走りの実現には電動駆動、CO2排出量の削減にはHEV、という条件を満たすパワートレーンはe-POWERで実用化されたシリーズハイブリッド(S-HEV)になる。 その走り感は特筆もので、エンジンが特定運転領域に限られることから、専用エンジンにすれば大幅な燃費向上が可能になる。
2019-⑥ SKYACTIV-Xか可変圧縮比か。シリーズハイブリッド専用の高効率エンジン実現に向けて
⑥SKYACTIV-Xか可変圧縮比か。シリーズハイブリッド専用の高効率エンジン実現に向けて 畑村耕一「2019年パワートレーン開発への提言」⑥
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
S-HEV専用エンジンの採用技術を考えた。SKYACTIV-XのHCCIは、低負荷の熱効率を改善できてもピンポイントの熱効率向上には適さない。日産の可変圧縮比は、ピンポイントの熱効率向上には必要ない。SIPではS/B=1.7の超ロングストロークのスーパーリーンバーンで熱効率50%の実現を目指している。超ロングストロークをどのように実現するかが課題だ。
2019-⑦ 2ストローク対向ピストン・ガソリンエンジンの可能性
⑦2ストローク対向ピストン・ガソリンエンジンの可能性 畑村耕一「2019年パワートレーン開発への提言」最終回
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
S-HEV専用エンジンは低負荷運転が不要なので、超ロングストロークの2ストローク対向ピストンエンジンを復活できる可能性がある。 2ストロークはA/F30でも4ストロークと同等のトルクを発生するのでスーパーリーンバーンと相性がいい。超高効率のこの単気筒エンジンは無振動を実現できる。
「2020年の年頭に当たって」/自動車用パワートレーンの将来
2020-① 過給リーンバーンの技術競争が始まった、マツダSKYACTIV-Xの評価は?
エンジン博士畑村耕一「過給リーンバーンの技術競争が始まった」:自動車用パワートレーンの将来:マツダSKYACTIV-Xの評価は?
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
熱効率50%を目指して過給リーンバーンの技術競争が始まった。SIPのスーパーリーンは超ロングストロークS/B=1.7に加えて実験室段階の技術が多く量産までのハードルは高い。SKYACTIV-Xは、騒音とNOx対策でコストが高い割には燃費向上効果が小さいというHCCIの限界を示した。レース界で主流になってきた副室ジェット燃焼のリーンバーンに期待したい。
2020-② 魅力的な電気自動車が続々登場してきた。EVとHEVの覇権争いが始まる?
エンジン博士畑村耕一「VWは本気か? EVとHEVの覇権争いが始まる?」:自動車用パワートレーンの将来
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
多くの新聞が今にも電気自動車の時代が来るような記事を掲載し、欧州車、国産車も魅力的なEVが続々登場してきている。一方でEVのCO2排出量を正しく評価しようという動きが始まっている。充電に伴う発電所からのCO2排出量の見積もりとバッテリ製造時のCO2排出量を加えるLCAの導入である。日本ではEVに頼ることなくCO2規制対応するためにハイブリッド技術が着実に進化し、一部でハイブリッドの見直しが始まっている
2020-③ エンジンもトランスミッションも新しい変革が始まる
エンジン博士畑村耕一「ダイハツのD-CVTは革新的。対向ピストンエンジンにも注目せよ」:自動車用パワートレーンの将来
マツダでミラーサイクル・エンジン開発を主導したエンジン博士の畑村耕一博士(エンジンコンサルタント、畑村エンジン開発事...
ダイハツから革新的なD-CVTが市場導入された。これはトヨタのハイブリッドと同様に、動力伝達を伝達効率の悪いCVTと効率の良い遊星歯車伝達に分割したもので伝達効率がAT並みに向上する。このCVTは、多段ATを燃費、コストともに凌駕する可能性を秘めている。一方、エンジン技術としては、超ロングストロークの対向ピストンエンジンが開発されており、革新的技術として今後の展開に期待したい。
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