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内燃機関超基礎講座 | スバルEJ20:WRX、インプレッサ、フォレスターに採用された要素技術

  • 2021/02/05
  • Motor Fan illustrated編集部
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EJ20はデビュー以来、数え切れないほどの改良を受けて、第一線のエンジンであり続けた。では、2008年当時の車種においてはどのような技術が投入されていたのか。

TEXT:近田茂(CHIKATA Shigeru)
*本記事は2008年5月に執筆したものです

インプレッサ WRX STI(CBA-GRB)

エンジンブロック:セミクローズドデッキを採用したエンジンブロック。強力なターボパワーはもちろんのこと、競技用へのチューニン グアップをも考慮しているのが特徴である。耐久信頼性に対してまだ余力を残す頑強な設計が施されているわけだ。
吸気ポート:よりスムーズな吸気通路を追求して新設計された吸気ポート。内径と管長を最適化し、吸気効率を向上させている。電子スロットルの採用と相まって、ドライバーの操作に対するレスポンスとリニアリティが高められた。ターボによる過給が行なわれない低回転領域においてもトルクアップが図られ、低速域からの立ち上がり加速に優れ、扱いやすいエンジンに仕上げられた。
排気ポート:左右対称に設置されているエキゾーストポートも、排気がよりスムーズに流れるように新設計されている。気筒あたりふたつの排気ポートから1本に集合するまでに描くポート形状は、旧型のものより角のとれたデザインを採用している。ポート集合部までの距離も長く設定され、排気の流れを邪魔しない配慮が見て取れるものだ。
コンプレッサー断面形状の最適化:排気を整流することで、ターボの過給効率を高めるツインスクロール式タービンを採用。ハウジングの形状を最適化した新デザインとなった。ハウジング内に発生する空気の2次流を抑えることで、過給効率はより高くなったという。デュアルAVCSなどと相まって、低速域から高回転までフィーリングに優れた出力特性を発揮する。
触媒レイアウト:ツインスクロールタービンの直後には、メタル触媒とセラミック触媒を連続して直列配置するタンデムレイアウトを採用。メタル触媒をエンジン近くに設置したのは、熱伝達特性に優れるメタル触媒を使うことで、早期活性化によりその効果を促進し、エンジン始動直後のエミッションを低減する狙いがあるわけだ。
横置きマフラーの採用:プロペラシャフトの下を右から左にクロスしながら後方へ導かれるエキゾーストパイプは、ツインデュアルテールパイプの大容量マフラーにつながっている。マフラーはカーゴフロアの下に横置きレイアウトされ、デュアルパイプは綺麗に磨き上げられたステンレス製75mm径×4本が採用されている。

インプレッサ(3代目)

デュアルAVCS:ターボエンジンにはAVCSがデュアルで装備された。吸気側、排気側共にバルブの開閉タイミングを自動的に連続可変制御するものである。シリンダーヘッドが左右に分かれるボクサーエンジン故、油圧による同制御ユニットは全部で4個を備えている。これにより低回転域からスムーズに高トルクを発生し、レスポンスの良い走りを生む。
電子制御スロットル:電子制御スロットルの採用が新しいポイントである。ドライバーのスロットル操作に対して、エンジンの回転を始め、必要とされるパワーの度合いなど、様々な要件から計算される最適の燃料供給をコントロールし、優れたドライバビリティの発揮に貢献する。新型ポートで吸気効率も向上し、低速域のトルクアップも達成した。
空冷式インタークーラー:空冷式のインタークーラーに変わりは無いが、スクエアに近い新型デザインに変更されている。取り付け位置は基本的に大差ないが、車体への取り付け角度やエアインテークからの流入空気量の最適化を図ることで、冷却効率を向上し、ターボを通過した新気の充填効率をより高いものにしている。
等長等爆エキゾーストシステム:専用新開発された等長等爆エキゾーストシステムは、前側2気筒と後側2気筒を集合させることで、気筒間の排気干渉を軽減する。排気ポートからターボユニットまでの排気効率を高め、幅広い回転域で過給効果を得て、トルクとレスポンスを向上している。触媒はふたつのユニットが縦に並んで設置されている。
横置きマフラー:S-GTグレードに装着されるマフラーは、やはりカーゴフロア下部に横置きレイアウトされる33ℓ大容量マフラーだ。静粛性と排気効率の確保を両立するための必然策である。EL15エンジンのマフラーが17ℓ容量であることを考えると、EJ20のターボエンジンは、いかに高出力を誇っているかがここからも理解できるだろう。

フォレスター(3代目)

新設計DOHCシリンダーヘッド冷却水経路の最適化:高性能の追求において、発熱および冷却との戦いは欠かせない。この図は、新開発されたシリンダーヘッド部分を透視したものである。青い部分がウォータージャケット部分を示す。気筒当たり3分割された冷却水の通路を設けることで、ヒートしやすいスパークプラグ周辺への水流を強化し、冷却性能が高められている。
新設計DOHCシリンダーヘッド吸気ポート:燃焼効率を追求。コンパクトなシリンダーヘッドの採用に合わせて、吸気ポートも新設計されている。インテークマニフォールドも従来型と比較して径が47mm/管長が380mmから径48mm/管長は420mmへ容量が大きく設計変更されている。圧縮比は、従来の10.0:1から10.2:1に高められた。ちなみに使用ガソリンはレギュラーである。
新設計DOHCシリンダーヘッド筒内ガス流動の強化:DOHCのシリンダーヘッドはコンパクトに新設計されている。同じく新設計されたピストンクラウン形状と、上図の吸気ポートと相まって、燃焼効率を向上させているのが新しい特徴である。また前述した冷却水経路の最適化により、ノック限界を高め、低中速域トルクを向上した。扱いやすい出力特性が追求されているわけだ。
ピストン形状:燃焼室形状の新設計に伴い、ピストンクラウンも新型となった。右は裏(底)面から覗いた図だがシリンダー壁面に対して圧力が多く加わるスラスト側と半スラスト側ではピストンスカートの形状を変えてデザインされた。シリンダーへの面圧やピストンの首振り、そしてフリクション等、全てのバランスと効率が考慮されている。
インタークーラー:旧型に採用されていた細長いタイプから、写真のような新型インタークーラーに換装された。この形状変更により、通気圧力損失が5%低減され、冷却性能はなんと25%も向上した。結果的に過給時の新気充填効率がより高くなる。もちろんその効果はパワーアップにつながるものである。

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