マツダCX-8[商品力を左右する”2列目シート”の仕立て方]機能追加を最小限の重量アップで
- 2020/03/22
- Motor Fan illustrated編集部
マツダCX-8は、国内3列席SUVカテゴリーで2019年の年間販売台数1位の座を獲得した。
ミニバンに求められるような、各席乗員の快適性や機能性を重視したコンセプトもこの結果の一因だろう。そしてシートにおいても、マツダならではの細かな改良は連綿と続けられていた。
TEXT:MFi
PHOTO:MAZDA/HONDA/中野幸次(Koji NAKANO)/MFi
FIGURE:MAZDA/VOLVO
3列席を持つSUVはまだ絶対的な販売台数こそミニバンより少ないものの、乗車定員6名以上の多人数乗用車として注目を集めつつある。こうした市場背景から、マツダはCX-8の2列目キャプテンシートに電動スライド&リクライニング、ベンチレーション機構(1列目席にも装備)を加えた特別仕様車を直近の変更で設定。多人数乗用車でとくに重視される、2列目席の利便性をさらに高めている。これらの機能追加について、同社シート・乗員保護開発グループの芦原氏にお話を伺った。
高温下での車内の快適性を大きく高めるシートベンチレーションだが、装着されるのは高価格帯のモデルがまだまだ中心。CX-8開発中にも搭載の検討はした、ということだが、17年の発表時には設定がなかった。しかし販売開始後にリクエストが多く届くようになる。ミニバン代替、さらに直接の競合車がないCX-8の独特のポジショニングから、この機能の存在を知っている層のショッピングリストに名前が挙がるようになったせいもあるだろう。「シートベンチレーションには空気を吹き出す方式と吸い込む方式があり、両者を切り替えるタイプもありますがマツダは吸い込むだけのシステムにしています。身体の蒸れを解消するのが一番の目的でエアコン冷気を乗員とシートの間に流れ込ませられるし、シンプルなぶん、重量も抑えることができるので」と芦原氏。CX-8では座面と背もたれのそれぞれにブロアモーターを備え、広範囲で空気を吸い込むようにしているが、1脚あたり2個のブロア関連の重量は約500g。ベンチレーションシステム全体でも1脚あたり約900gの増加に抑えている。SUVはヒップポイントが高くシート下に空間があるためセダン系よりは余裕があるというが、それでも各部品の陣取り合戦は大変だった。
そもそもシートには座り心地だけでなく強度も求められる。乗員を守るのはボディだけの役目ではない。シートも衝撃試験に合格できる強度がなければ使えない。芦原氏に、コストなどをひとまず置いてシートを50%軽量化せよと言われたら、と質問すると「それはもう骨格、フレームの見直しです」と即答された。「強度確保に現状ではいろいろと重量がかかっています。ここに画期的な新材料が使えたら。剛性も欲しいし、形状を三次元的に見直して強度を高めていくやり方でも骨格自体が小さくなって、より軽くできるようになるかもしれません。パッドやトリムよりも大きく効くのは、フレームの刷新だと私は思います」とのことだった。
上左から、大型アームレスト付きキャプテンシート、3名掛け可能なベンチシート、センターウォークスルー可能なキャプテンシート(これがもっとも軽い)。近年はミニバンでもキャプテンシートの人気が高いが、最大乗車定員数にこだわる層からのベンチシートへのニーズも残っている。中央席用シートベルトを内蔵するため骨格強度が必要なベンチシートは、どうしても重くなる。
〈ベンチレーションシステムの構造〉
シートバックと座面の2ヵ所にブロアモーターを配置し、シート表皮から外気を吸い込む方式。CX-5では1列目席、CX-8では1列目/2列目席に設定される。中央の写真は操作性を考慮してセンターコンソールに用意されたCX-8の2列目席用スイッチ。座面下の空間がセダン等より大きいのは、搭載面で有利だったという。
3点式シートベルトをどう成立させるか
〈車体側マウントのメリット/デメリット〉小型ワゴンのリヤ中央席などでは写真のようにルーフ部分にシートベルトを内蔵するケースが多い。シート自体の重量増は抑えられるが、装着時の手間が増えるほか、後方の視界を遮ってしまう。
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